ナイン・インチ・ネイルズ
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ナイン・インチ・ネイルズ | ||
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基本情報 | ||
出身地 | アメリカ オハイオ州 クリーブランド | |
ジャンル | インダストリアル・ロック/オルタナティブ・ロック | |
活動期間 | 1988年から現在まで | |
レーベル | インタースコープ ナッシング・レコード TVTレコーズ アトランティック |
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公式サイト | nin.com | |
メンバー | ||
トレント・レズナー |
ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)は、アメリカのオハイオ州、クリーブランドで結成されたインダストリアルバンド。一般的な略称として「NIN」と表記される事が多い。トレント・レズナーを中心として活動、1989年にシングル「Down in it」でデビューを果たした。2006年までに5枚のアルバムと3枚のリミックス・アルバムをリリースしている。
その斬新かつ精密なサウンド・プロダクションやビジュアル・ワーク、過激なステージングは後進のアーティストに大きな影響を与えた。それまでアンダーグラウンドなサウンドであったインダストリアル・ロックをオーバーグラウンドに持ち上げたバンドの一つでもある。1993年と1996年にはグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマーに選出された。
メイン・コンポーザーのトレント・レズナーは、活動の拠点としているアメリカでは絶大な人気と影響力を誇り、1997年のタイム誌が特集を組んだ「最も影響のある25人のアメリカ人」の一人に選出された事もある。
目次 |
[編集] 略歴
[編集] 1988年 - 1991年
ナイン・インチ・ネイルズは1988年に活動を開始している。レズナーは出身地であるアメリカ、オハイオ州のクリーブランドにあるインディペンデント・レーベル「ライト・トラック・スタジオ」にてデモレコーディングを行った。それは1994年にPurest Feelingと言うタイトルが付いた海賊盤となってリリースされた。そのデモを複数のレーベルに送り、その後TVTレコーズとの契約を結ぶ。
Purest Feelingに収録された楽曲にいくつかの新曲を加え、1989年にプリティ・ヘイト・マシーン Pretty Hate Machineがリリースされた。このアルバムはイギリス・ロンドンでレコーディング作業が進められた。この作業にてレズナーはエイドリアン・シャーウッドとの最初の共同作業を行った(この後、シャーウッドは2000年までしばしばNINの作品にクレジットされる事になる)。このアルバムは親しみやすいメロディーと内省的な歌詞、暗く美しいサウンドに彩られたアルバムとなった。ダウン・イン・イットとヘッド・ライク・ア・ホール、シンがシングルカットされ、シンを除いた2曲のビデオ・クリップがMTVで頻繁に放送された。シンについてはその内容が過激すぎるために1997年のビデオ作品クロージュア Closureまでその映像が公にされる事はなかった。
プリティ・ヘイト・マシーンは爆発的なセールスを記録する事はなかったものの、リリースから2年に渡ってビルボードにチャートインする息の長い作品となり、結果的に100万枚のセールスを挙げる事になった。
NINは最初の北米ツアーをスキニー・パピー、ピーター・マーフィー、ジーザズ・アンド・メリーチェインとともに行った。NINの破壊的なステージングはこれまでのシンセサイザーを使ったバンドとはあまりにも異なるスタンスであったために、すぐに大きな噂となった。1991年にプリティ・ヘイト・マシーンのツアーの一環として最初のロラパルーザに出演した。その後アメリカでガンズ・アンド・ローゼズのツアーに帯同するなど、その活動規模は徐々に大きなものになって行ったが、所属していたTVTレコーズによる作品への干渉が強くなり、NINはTVTレコーズからの移籍を決意する。この移籍問題は裁判沙汰になり、裁判中のレコーディングが禁止された。しかしNINは別名を用いてプリティ・ヘイト・マシーンに続く作品のレコーディングを開始した。
[編集] 1992年
1992年、6曲の新曲に2曲のボーナストラックを加えたEP、ブロークン BrokenがTVTレコーズとの裁判が終了した後にリリースされた。この作品のインナー・スリーブに記されたライナー・ノーツによると、本作の激しいライブ感が溢れるサウンドは1991年当時のライブ・メンバーからの影響が大きいと言う。
このEPに収録されたウィッシュはコイルのペーター・クリストファーソンによってビデオ・クリップが制作された。このEPからはシングルカットは行われなかったが、ウィッシュの他にハピネス・イン・スレイヴァリー、ピニオンのビデオが制作された。中でもハピネス・イン・スレイヴァリーのビデオ・クリップの過激さは群を抜いており、作中でボブ・フランガンと言うパフォーマンス・アーティストが、彼自身が横たわった機械に身体をえぐり取られて殺されてしまうと言う内容であった。当然ながらMTVなどでは放送される事がなかった。これらのビデオクリップはブロークン・ムービー Broken Movieと呼ばれる、CDのプロモーションを目的とした短編映画の為に撮影された。内容が非常に過激であり、また本人たちがマスコミに騒がれる事を嫌って正式に公開される事はなかったが、海賊盤ビデオが出回っている。なお、ビデオ作品クロージュアにおいてブロークン・ムービーで使用された楽曲のビデオ・クリップを見る事ができる。
ウィッシュのビデオ・クリップは1995年にライブ映像を使用したビデオ・クリップが再度製作され、MTVで放送されるのはこのバージョンになる。またゲイヴ・アップについても後にザ・ダウンワード・スパイラル The Downward Spiralがレコーディングされるラ・ピッグ・スタジオにてビデオクリップが製作された。
ブロークンがリリースされた2ヶ月後に、唯一のフォローアップ作品となるフィックスド Fixedがリリースされた。ダニー・ハイド、J.G.サーウェル、ヴッチ・ヴィグらをリミキサーとして起用し、ブロークンに収録されたいくつかの曲をリミックスした。
[編集] 音楽的特徴
NINの音楽を一言で表すのは難しい。NINの音楽的な特徴として「Wish」で聴く事の出来る、インダストリアルの重たく、騒々しいサウンドが一般的なイメージとして捉えられているが、その捉え方はあまりにも表面的すぎると言える。例えば「Down in it」は1980年代のエレ・ポップからの影響が見て取れるし、「Closer」「Reptile」などはプログレッシブ・ロックからの影響も感じられる。その一方で「Hurt」に代表される、切なく美しいメロディを特徴とする繊細な曲も多い。
レズナー本人が口の重たい人物であるためにその音楽までもが難解であると捉えられがちだが、多くの曲に口ずさめるような判りやすいメロディーがあり、それぞれの楽曲の構成は非常に判りやすい。影響を受けたバンドとしてクイーンやキッス、そしてピンク・フロイドがあると公言している。その影響から楽曲に大衆性が反映され、商業的にも成功を収めたと言えよう。それと同時にパンテラ、デペッシュ・モード、ジョイ・ディヴィジョン、ミニストリー、スキニー・パピー、ジェーンズ・アディクション、プリンス、パブリック・エナミー、エイフェックス・ツイン等のかつて時代の先鋭となっていたアーティストからも非常に強い影響を受けており、そうした体験によって大衆性と併せて先鋭性も表現する事が出来たと考えられる。
楽曲のテーマとなっているのは一貫して「怒り」「渇望」であり、自らの内側からのインスピレーションにこだわり続けた憂鬱なサウンドは、暗く、圧倒的な存在感を放っていた。近年はレズナー本人のメンタル面の安定や成長もあり、以前の様な陰鬱さは抑えられている。また制作活動におけるインスピレーションが内側から外側の出来事に変わって来た事もあって表現方法に変化が現れている。それは2005年にリリースされたアルバム『ウィズ・ティース』で聞く事ができる。
[編集] メンバー
その名称からバンドと考える人も多いであろうが、トレント・レズナーによるプロジェクトである。よってスタジオでの制作活動とライブでの活動形態は異なってくる。前者はレズナーとその他のスタッフにより行われ、レズナーがその作業をコントロールしている。アルバムごとに形態は異なるために、詳細は作品ごとのクレジットにて確認してほしい。後者はアルバム制作後、ツアーに出るためにメンバーのオーディションなどが行われる事がある。そのため、ツアーのメンバーは大幅に入れ替わる事がある。
1989年 - 1991年
- Richard Patrick - ギター
- Jeff Ward - ドラム
- James Woolley - シンセサイザー
- Lee Mars - シンセサイザー
- Chris Vrenna - ドラム/プログラミング
1994年 - 1995年
- Robin Finck - ギター
- Danny lohner - ギター/ベース
- Chris Vrenna - ドラム/プログラミング
- Charlie Clouser - キーボード/シンセサイザー
1999年 - 2000年
- Robin Finck - ギター
- Danny lohner - ギター/ベース
- Jerome dillon - ドラム
- Charlie Clouser - キーボード/シンセサイザー
2005年 - 2006年
- Aaron North - ギター
- Jeordie White - ベース/ギター
- Alessandro Cortini - シンセサイザー/ギター/ベース
- Josh Freese - ドラム
- Alex Carapetis - ドラム
- Jerome dillon - ドラム
レコーディングに参加したメンバー 膨大な人数になるために全てを列挙する事は不可能だが、比較的著名な参加者を表記する。
- Adrian Sherwood(エイドリアン・シャーウッド)
- Adrian Belew(エイドリアン・ブリュー)
- Alan Moulder(アラン・モウルダー、エンジニア)
- Keith Hillebrandt
- Dave Navarro(デイヴ・ナヴァロ)
- Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)
- David Bowie(デヴィッド・ボウイ)
- Dr. Dre(ドクター・ドレー)
- Dave Grohl(デイヴ・グロール)
[編集] ディスコグラフィー
NINの公式作品はそれぞれ「halo」を冠したシリアル・ナンバーが付けられている。
NINは作品のフォーマットによって同じタイトルでも内容が微妙に変わる事がある。例えば『The fragile』の場合、CDでは合計で23曲が収録されているが、アナログでは25曲が収録されている上にいくつかの曲では別バージョンが収録されている。また、同じ作品でもアメリカとヨーロッパ、日本で収録曲が変わっている事がある。
アルバムをリリースした後にリミックス・アルバムをリリースするのが通例となっており、アルバムリリースの度にリミックス・アルバムのリリースが期待されている。
2004年にNINがナッシング・レコードを離れた関係からか、それ以降の先行シングルを含めたシングル曲のリリース形態がアメリカとヨーロッパで大きく異なっている。アメリカでリリースされている12インチ・シングルはリミックス曲が多数収録されており、それらはヨーロッパや日本でリリースされているシングルでは聴く事が出来ない物が多い。
[編集] アルバム
発売日 | タイトル | 米チャート | 英チャート |
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1989年 | プリティ・ヘイト・マシーン | #67 | 75 |
1992年 | ブロークン | #7 | #18 |
1992年 | フィックスド (リミックス・アルバム) | - | - |
1994年 | ザ・ダウンワード・スパイラル | #2 | #9 |
1995年 | ファーザー・ダウン・ザ・スパイラル (リミックス・アルバム) | #23 | - |
1999年 | ザ・フラジャイル | #1 | #9 |
2000年 | シングス・フォーリング・アパート (リミックス・アルバム) | #67 | #133 |
2005年 | ウィズ・ティース | #1 | #3 |
2007年 | イヤー・ゼロ | - | - |
[編集] シングル
発売年 | タイトル | アルバム |
---|---|---|
1989年 | Down in it | プリティ・ヘイト・マシーン |
1990年 | Head Like A Hole | プリティ・ヘイト・マシーン |
1990年 | Sin | プリティ・ヘイト・マシーン |
1997年 | Dead Souls | ザ・クロウのサウンドトラックに提供 |
1994年 | March Of The Pigs | ザ・ダウンワード・スパイラル |
1994年 | Closer | ザ・ダウンワード・スパイラル |
1994年 | Burn | ナチュラル・ボーン・キラーズのサウンドトラックに提供 |
1997年 | The Perfect Drug | ロスト・ハイウェイのサウンドトラックに提供 |
1999年 | The Day The World Went Away | ザ・フラジャイル |
1999年 | We're In This Together | ザ・フラジャイル |
2000年 | Deep | トゥーム・レイダーのサウンドトラックに提供 |
2005年 | The Hand That Feeds | ウィズ・ティース |
2005年 | Only | ウィズ・ティース |
2006年 | Every Day Is Exacity The Same | ウィズ・ティース |
[編集] 映像作品
発売年 | タイトル |
---|---|
1997年 | クロージュア |
2002年 | アンド・オール・ザット・クッド・ハヴ・ビーン |
2007年 | ビサイド・ユー・イン・タイム |
[編集] 外部リンク
- NINE INCH NAILS - ユニバーサルによる公式サイト
- NIN - NINのマイスペース(英語)