ニース (ロードス島戦記)
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ニースは、水野良の小説『ロードス島戦記』『ロードス島伝説』『新ロードス島戦記』登場人物で、架空の人物。作中に「ニース」は二人登場し、区別のために年上の方を「大ニース」や「偉大なるニース」、年下の方を「小ニース」や「小さなニース」と呼ぶ。
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[編集] 大ニース
ニースは大地母神マーファの司祭。「マーファの愛娘」の異名をもつ。「偉大なるニース」と謳われた六英雄の一人。後にターバ神殿の最高司祭となる。
[編集] 経歴
弱冠17歳で高司祭となったほどの強い信仰心と神聖魔法の実力の持ち主。地震で崩壊した神殿の修理と被災者を救済するために白竜山脈の氷竜ブラムドの呪いを解き、「竜を手懐ける者(ドラゴンテイマー)」と称される。
魔神戦争では、魔神に滅ぼされた「石の王国」の仇討ちのためにモス公国へ進撃しようとした「鉄の王国」のドワーフ戦士団を抑え、ドワーフ族に代わって実態を調査することを約束し単身モスに向かう(数千のドワーフ戦士を黙って通す国は無く、そのままでは戦争になっていた)。
モスでは諸国間の対立や戦いを調停し、魔神に対するモス連合軍の樹立に尽力する。その後はナシェルの離宮にて他の六英雄やフラウス達と行動を共にした。
魔神王との一度目の戦いで、自身の体にマーファ神を降臨させる「降臨(コール・ゴッド)」を使い、魔神王を退ける。魔神との最終決戦となった「もっとも深き迷宮」では仲間達と共に最深部に辿り着き、再び魔神王と戦いこれを討ち果たす。無事に生還したことで六英雄と呼ばれるようになる。
魔神戦争終結後はターバのマーファ神殿で最高司祭となり、赤子であったレイリアを引き取って娘として育てた。レイリアが遥かな昔「亡者の女王」呼ばれた破壊神カーディスの教団の最高司祭・ナニールの転生体であることを知りながら、魂の浄化や封印ではなく、ただ慈愛をもってレイリアの魂を導き、ついにナニールの魂が発現することを防いだ(後にその魂はレイリアの娘として「生まれ変わる」ことになる)。
英雄戦争時、「鉄の王国」のドワーフ、ギムの治療のため留守にしていたところを狙われてレイリアが失踪することになるが、最高司祭として神殿を離れることが出来ない彼女は、ギムに捜索を託すこととなる。後、レイリアはスレインに連れられて帰還し、さらに後にスレインと結婚。生まれた娘に母である彼女の名「ニース」がつけられる。
レイリア失踪の十四年後、邪神戦争の一年前に「邪悪な女神の復活の兆しを告げる神託」を受けるが、すべてを娘婿のスレインに託し、神託の十日後に逝去した。その際、ウォートやフレーベ、仮面の魔法戦士として共に戦ったカーラが友人として彼女の元を訪れている。
[編集] 人物
敬虔なマーファの信者で、深い信仰心と慈愛、それを体言する強い意志を持つ。物言いは穏やかながらも、言うことははっきり言う。自身の肉体に神そのものを宿す「降臨」の奇跡を使用し、その上で生き伸びたた数少ない人物(「降臨」できるだけでも相当の技量と信仰心が必要とされる上、力量が足りなければ、神の「降臨」と引き換えにその肉体と魂は砕け散る)。
その人柄ゆえに多くの者を惹きつけ、氷竜ブラムドとも友として接する。ブラムドがアシュラムに殺されたと知ったとき、彼に対して強い怒りを示した。その後、ブラムドを蘇生させたと言われている。おそらくカーラの素性も知っていたと思われるが、そのうえでカーラとも友として接していた。ウォートと惹かれあっていた描写もあったが、結局最後まで結ばれることはなく二人とも生涯独身である。
天寿を全うした人間としては短命で、前述の「降臨」がその原因だと考えられている。
[編集] 小ニース
ニース(新王国暦513-)は大地母神マーファの司祭。祖母ニースとの区別のため「小ニース」、「小さなニース」と呼ばれる。後にマーモ公国およびマーモ王国の王妃となった。
[編集] 経歴
スレインとレイリアの娘として生まれ、祖母(但し、レイリアと大ニースは血は繋がっていないため、小ニースと大ニースにも血は繋がりはない)と同じ名を与えられる。区別のために小ニース、また親しいものは「小さなニース」と呼ぶ。幼少の頃はザクソンで両親とともに暮らす。わずか6歳にして治癒の奇跡を使い、アルド・ノーバや人々からは聖女と称えられるようになった。
12歳のとき、邪神戦争が勃発。自分が邪神降臨の「扉」であることを知ったニースは、単身旅に出る。途中でスパークらと出会い、旅を共にするも、抵抗むなしく邪神降臨を望むバグナードに捕らわれてしまう。彼によって破壊神カーディスを降臨させられ、それに対抗するために大地母神マーファをもその身に降臨させる。2柱の神を降臨させてなお生きていたのは、後にも先にも小ニースただ一人であると思われる。マーファを降臨させた奇跡で死亡した仲間ギャラックを生き返らせ、邪神の完全な復活を妨げる。
しかし、カーディスを降臨させたことで彼女は自分の魂の真実、自分がカーディス教団の最高司祭ナニールの「生まれ変わり」である(正確には、レイリアがナニールの転生した魂を宿していて、大ニースによって押さえられたそれが娘のニースに受け継がれた)ことを知ることになる。
邪神戦争が終結した後は、マーモ公国におけるマーファ神殿の司祭となり、時には聖女として、時には一人の少女としてマーモ公王スパークに寄り添う。後に彼女の運命を知り、その上で受け入れたスパークと結婚し、マーモ公妃となる。
新生マーモ帝国との戦い、続くカーディス教団との戦いにおいて、かつてナニールであったころに「永遠の愛」を誓い合った高司祭にして転生者フィオニスと再開する。ナニールの記憶を持つ彼女は苦悩の末、転生を繰り返す亡者の女王ナニールではなく、「ニース」としてスパークの傍らでただ一度の生を全うする事を選び、自ら破壊神を「降臨」することで「終末の門」を破壊した。そのとき、自分の元に駆けつけたスパークと共に異空間に飛ばされ行方不明となるが、一年の時を経てスレインの魔法によって送還され、以降は「マーモ王国」王妃として国王スパークを支えた。
[編集] 人物
幼いころから高位の奇跡を願うことができ、小ニースこそが大地母神の生まれ変わりだと信じる者もいるほど。聖女として称える者も多い。彼女自身、そんな周囲の期待に応えるため「聖女」であることを自らに課していた。芯の強い性格だが辛い事などを己に内に溜め込む癖があり、両親共に多忙な中、彼女が神殿内で最も心を許せたのはアルド・ノーバだった。
両親の友人であり、生まれたときから彼女のことを知っているパーンやディードリッドにとってはいつまでも「小さなニース」であり、2人は自分の子供のように可愛がっている。
慈愛の神マーファの敬虔な信者であるが、街で自分に攻撃的な態度を見せた若者たちを神聖魔法で撃退したり、スパークを侮辱した騎士を「斬り捨ててしまえばいい」と言うなど、残忍な一面もある。これらの性格は「亡者の女王」ナニールの魂(生まれ)とマーファへの信仰(育ち)が合わさった結果、形成されたものと思われる。どちらが本質というものではなく、両方があってのニースという人間である。
スパークにとっては尊敬すべき聖女であると同時に、守るべき一人の少女であり、生涯の伴侶である。