ネガフィルム
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ネガフィルムとは、被写体の明暗や色が反転した画像がつくられる写真フィルムである。カラーフィルムの場合、色は被写体の色の補色が現れる。プリント時に再反転されることで普通に見られる画像となる。
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[編集] 写真用
写真専用のフィルムとしては、カラー、モノクロ共に最も多く使用されており、感度や色調など多様な種類が販売されている。日本では、富士フイルム、コダックなどによって製造または販売されている。
[編集] 概要
プリントすることを前提とした写真フィルムであるので、一般にラチチュードは広く、プリント時に色の補正がしやすい特性となっている。カラーフィルムでは色補正をしやすいようにフィルムベースはオレンジ色に着色されている。これらのことから扱いやすく、またリバーサルフィルムよりも階調のなめらかさに優れることから、プロ、アマチュアを問わず広く使われている。
プリント時に補正が出来ることは利点ではあるが、逆に自分の意向が反映されにくいという側面もある。写真店での補正一つで全く印象の異なる写真に仕上がる場合も多く、思い通りの色を再現するには写真屋に指示を出して、補正してもらわなければならない(最近ではフィルムスキャナを経由してパソコンに取り込むことで、自分好みの表現に仕上げる人もいる)。
又、使用される感光剤の関係で、ネガフィルムの方が現像や焼き付けの処理が簡素であることも広く普及した理由の一つである。高感度と高画質を両立する開発競争が進み、現在ではISO800、1600といった高感度フィルムでもざらつきの少ない高画質なものになってきている。
35mmフィルムやAPSフィルムであれば、一般の写真店で現像やプリントの処理ができ、1時間程度で処理してもらうことができる。
[編集] 現像
カラーネガフィルム用の現像液を使い現像する。各メーカー独自の名称があるが完全互換である為、フィルムメーカーと現像液メーカーが異なっていても規格が同じなので現像可能である。現像液名称はコダック C-41 フジフィルム CN-16。
また、スピード現像機、シネ現像機、吊り現像機など現像機の種類により現像液の温度、発砲具合が異なる点からその仕上がり具合が異なり、後のプリントへ影響することもある。
[編集] 主な種類
[編集] 富士フイルム
- フジカラー SUPERIA 100(ISO 100)
- 一般向けのISO100フィルム。鮮やかな色彩と高い解像力を発揮する。
- フジカラー SUPERIA Venus 400/800(ISO 400 / 800)
- 一般向けのフィルムで、発色は若干鮮やか。微粒子化技術によってISO100に匹敵する解像力を得られる。
- フジカラー NATURA(ISO 1600)
- もともとSUPERIA Venus 1600として売られていたが、ナチュラルフォトシステム「NATURA」向けのフィルムとしてDXコードが若干変更されている。NATURA対応のカメラに装填することで、フラッシュを使わない自然な仕上がりに撮れる。
- フジカラー リアラエース(ISO 100)
- リアルな色再現と豊かな諧調表現をするフィルム。
- フジカラー PRO 400
- 発色はおとなしめで階調表現に優れており、ポートレートや商品撮影に向いている。プロの名があるもののフィルムの温度管理はそれほど要求されない。
- フジカラー PRO 160 NC / NS / NH / NL(ISO 160)
- ブローニーフィルムのみ。NSは諧調表現が高く、NCは高いコントラスト、NHはそれらの中間的な表現を行う。
- NLはタングステン光用フィルム。
- フジカラー PRO 800(ISO 800)
- ブローニーフィルムのみ。中判カメラでのスナップ撮影などに適した高感度フィルム。
[編集] コニカミノルタ
かつて軟調に仕上がるDD200プロ、やはり軟調で低感度高解像度のインプレッサ50、ISO3200の超高感度ネガといった個性的な製品を送り出した同社も合併で多くの製品が生産を終了し、2007年3月をもって、フィルム、カメラを含む写真事業から撤退した。以下は、最後のラインナップ。
- CENTURIA SUPER
- 35mmフィルムで感度ISO100~1600がラインアップされている(ISO800はCENTURIA ズームスーパー 800)。自然な発色が特徴のフィルムである。
- ベビーフィルム ほっぺにチュッ(ISO 400)
- 赤ちゃんの柔らかい肌を再現するために、非常に豊かな諧調表現を行う。
- CENTURIA PORTRAIT 400(ISO 400)
- ポートレートに適した、諧調豊かなフィルム。ブローニーフィルムではCENTURIA PRO 400として販売。
- プロフェッショナル 160PS(ISO 160)
- ブローニーフィルムのみ。忠実な色再現と豊かな諧調表現が可能。
[編集] コダック
- GOLD
- 快活な発色をする。ISO100と200がラインナップされている。
- GOLD Maxbeauty
- 従来のGOLDと比較して少しおとなしめの発色をする。光吸収率を30%上昇させて、ストロボ使用時にも背景が写りやすくなっている。ISO400と800がラインナップされている。
- SUPER GOLD(ISO 400)
- 忠実な色再現を行うフィルム。
- ULTRA COLOR 100UC / 400UC(ISO 100 / 400)
- 彩度の高い発色を行うフィルム。
- PORTRA 160NC / 400NC(ISO 160 / 400)
- 忠実な色表現を行うプロ向けネガフィルム。
- PORTRA 160VC / 400VC(ISO 160 / 400)
- 豊かな諧調と高い彩度を実現するプロ用ネガフィルム。
- PORTRA 800(ISO 800)
- 豊かな諧調と高い彩度を持つ高感度フィルム。
- PORTRA 100T(ISO 100)
- ブローニーフィルムのみ。タングステン光用フィルム。
[編集] アグフア・ゲバルト
2005年5月に、写真部門から独立したアグフアフォト社が破産申請を行ったことで、事実上の生産及び販売が終了された。以下は最終ラインナップ。
- ULTRA
- 油絵のようなこってりした発色をする。
- Vista
- 赤みの強い発色をする。
[編集] 印刷専用
印刷原版の作成用として用いられる。この時の大きさは幅1mを超える物もある。
一般には専用の大型のレーザープリンターを使用し、レーザーにより描画、感光させる。感光、現像した後、原版素材にライトを当て感光、感光しなかったところを腐食させ、凸版又は凹版を作成する。
現在の新聞原版、半導体の製造などで用いられている。
[編集] デジタルカメラの影響
デジタルカメラの普及が進み始めた2000年頃より、レンズつきフィルムを中心にネガフィルムの売り上げが減少している。
コニカミノルタは、デジタルカメラでの業績不振も重なり、フィルムおよびカメラを含めたイメージング事業からの撤退を決め、2007年3月をもってフィルムの販売を終了する。
富士フイルムは、人員削減を含めたリストラ策を行ったうえで、フィルムの事業を継続することを発表している。
しかしながら、一般ユーザにおける写真撮影はデジタルカメラに移行しつつあるため、ネガフィルムの利用者も写真愛好家や一部のプロ写真家に限定されることは必至と言え、フィルムや現像価格の上昇、ラインナップの削減が行われる可能性は高いといえる。