バイメタル
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バイメタル(Bi-metallic strip)とは、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせたものである。温度の変化によって曲がり方が変化する性質を利用して、温度計や温度調節装置などに利用されている。
[編集] 材質
鉄とニッケルの合金に、マンガン、クロム、銅などを添加して2種類の熱膨張率の異なる金属板を作り、冷間圧延で貼り合わせたものである。長期間の使用では熱により性質が変化することがあるため、高度の製造技術が必要とされる。
熱膨張率が小さい側の合金として、インバーが使われている。これはC.E.ギョームが1896年に発見したニッケル36%・鉄64%の合金で、室温付近では熱膨張率がほとんどゼロとなる。この業績に関連して、1920年にノーベル物理学賞が授与されている。
[編集] 用途
- 温度計
- 室内用の壁掛け型、パネル型の形状や、指針により温度を示す円形の文字板の裏側に、温度の感知部分が突き出している形状の製品が多い。気温、水温、土壌温度、調理用の測定に用いられる。
- サーモスタット
- 温度によってスイッチのオン・オフを自動的に切り換える装置。温度を一定に保つためのこたつ、アイロンなどの電化製品に用いられている。炊飯器などは、最近ではサーミスタ等で電気的に温度を測定する方式に切り換えられつつある。
- 点灯管
- 蛍光灯を点灯させる際に、安定器に高電圧の誘導起電力を発生させ、蛍光管の内部で放電を起こさせるもの。温度が上がると曲率が小さくなるタイプのバイメタルが使われている。その動作原理は、まずスイッチを入れると、バイメタルの周辺でグロー放電が発生し、それによる加熱でバイメタルが変形する。変形により、バイメタルが接点と接触し放電が終了する。放電終了により、バイメタルが加熱されなくなり放熱が進む。それとともにバイメタルの変形が元に戻ろうとする。そのことによりバイメタルが接点から離れ、その瞬間安定器に高電圧が発生する。
- 自動点滅電球
- フィラメントの近くにバイメタルを設け、温度が上がるとフィラメントの電流が切れるようになった構造の電球である。点灯直後はバイメタルが加熱されるまで時間が掛かるため、しばらくは点灯の状態になる。クリスマスツリーの電飾に多用される。