クロム
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一般特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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名称, 記号, 番号 | クロム, Cr, 24 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | 遷移金属 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 6 (IVA), 4 , d | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
密度, 硬度 | 7150 kg·m−3, 8.5 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
単体の色 | 銀白色![]() |
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原子特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
原子量 | 51.9961 amu | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
原子半径 (計測値) | 140 (166) pm | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 127 pm | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
VDW半径 | no data | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電子配置 | [Ar]3d5 4s1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 13, 1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
酸化数(酸化物) | 2, 3, 4, 6 (両性酸化物) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 体心立方構造 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
相 | 固体 (反強磁性) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
融点 | 2180 K (1907 ℃, 3465 °F) |
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沸点 | 2944 K (2671 ℃, 4840 °F) |
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モル体積 | 7.23 × 10−3 m3·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
気化熱 | 339.5 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
融解熱 | 21.0 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
蒸気圧 | 990 Pa (2180 K) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ | 5940 m/s (293.15 K) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
クラーク数 | 0.02% | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 1.66 (ポーリング) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
比熱容量 | 450 J·kg−1·K−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
導電率 | 7.74 × 106 m·Ω | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | 93.9 W·m−1·K−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 652.9kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第2: 1590.6 kJ·mol−1 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第3: 2987 kJ·mol−1 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第4: 4743 kJ·mol−1 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第5: 6702 kJ·mol−1 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第6: 8744.9 kJ·mol-1 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(比較的)安定同位体 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。 |
クロム(Chromium)は原子番号 24 の元素。元素記号は Cr。クロム族元素の一つ。銀白色の金属で、硬く、融点は摂氏1903℃、沸点は摂氏2200℃(他に融点に関しては1857℃、沸点に関しては2670℃、2690℃という値がある)。常温、常圧で安定な結晶構造は、体心立方構造 (BCC)。表面はすぐさま酸化皮膜に覆われ不動態を形成するのでさびにくく、鉄のめっきによく用いられる(クロムめっき)。希塩酸、希硫酸には溶けるが、濃硝酸、王水など酸化力の強い酸には不動態をつくり反応しにくい。クロムに1%程度のマンガンを混ぜると反強磁性金属となる。
目次 |
[編集] 歴史
1797年にフランスのルイ=ニコラ・ヴォークランによってシベリア産の紅鉛鉱(クロム酸鉛、PbCrO4)から発見され、酸化状態によってさまざまな色を呈することからギリシャ語のχρωμα(chrōma, 色)にちなんで命名された。ヴォークランはこの翌年(1798年)ルビーが赤いこと、エメラルドが緑色であることについて、クロムが不純物として入っているためであることを発見した。
[編集] 用途
金属としての利用は、光沢があること、固いこと、耐食性があることを利用するクロムめっきとしての用途が大きい。また、鉄とニッケルと10.5%以上のクロムを含む合金(フェロクロム)はステンレス鋼と呼ぶ。ステンレス鋼ではクロムが不動態皮膜を形成するため、ほとんど錆を生じないので車両や機械といった重工業製品から流し台、包丁などの台所用品まで幅広い用途がある。
この金属は、日本国内において産業上重要性が高いものの地殻存在度が低く供給構造が脆弱である。日本では国内で消費する鉱物資源の多くを他国からの輸入で支えている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として国内消費量の最低60日分を国家備蓄すると定められている。
[編集] 必須元素としてのクロム
インスリンが体内でレセプターと結合するのを助ける働きをしている耐糖因子を構成する材料となる3価のクロムが体内で不足すると、糖代謝の異常が起こり糖尿病の発症に至る可能性があることが明らかにされている。この方面の研究によって、人間にとって必須の栄養素であることがわかってきた。
一日の必要量は、50マイクログラム~200マイクログラム。クロムを多く含む食品は、ビール酵母、レバー、エビ、未精製の穀類、豆類、キノコ類、黒胡椒などである。
もともと、クロムは体内に吸収されにくいミネラルであるが、穀物を精製するとクロムが大幅に失われてしまう問題が存在する。小麦粉の場合、精白すると98%のクロムが失われ、米を精米すると92%のクロムが失われるとされている。
[編集] クロムの毒性
クロム単体および3価のクロムには毒性がない。ステンレスなどの工業製品として出回っている物の中に含まれているクロムは毒性を持たない。
かつては6価クロムをめっき用途として使うことが多かったが、6価のクロム化合物は極めて毒性が高いため、土壌汚染を起こすなどでしばしば問題視され、使われなくなってきている。また、4価のクロム化合物はWHOの下部機関IARCより発癌性があると(Type1)勧告されている。
[編集] クロムの化合物
- 酸化クロム…5種類が存在する。
- クロム酸カリウム (K2CrO4)…6価の化合物で、強力な酸化剤。
- 二クロム酸カリウム K2Cr2O7…同じく、強力な酸化剤。
- 三酸化クロム (CrO3)
- クロム酸鉛 (PbCrO4)…紅鉛鉱として天然に産するほか、黄色顔料・黄鉛(クロムイエロー)として使われる。
- クロム酸亜鉛 (ZnCrO4)…黄色顔料・ジンククロメート(亜鉛黄、ジンクイエロー)として使われる。
- クロム酸ストロンチウム (SrCrO4)…黄色顔料・ストロンチウムクロメート(ストロンシャンイエロー、ストロンチウムイエロー)として使われる。