バザール方式
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バザール方式とは、複数の参加者により創造活動が行われる場合の手法の一つであり、参加者を限定せずに参加者の独自性を尊重し階層的な組織ではなく個人が中心となったルールや命令系統の少ない方法で進める手法であり、伽藍方式に対比される方法である。
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[編集] 由来
名称はエリック・レイモンドによるフリーソフトウェアのGNU/Linuxの成功を分析する論文 伽藍とバザール で作られたLinuxの開発に特有な開発手法の呼び名である。
[編集] 説明
特に、インターネット上での創造活動に有効な手法で、参加者を限定しないこと、参加者の独自性を尊重すること、階層的な組織ではなく個人が中心となったルールや命令系統の少ない方法で進められるのが特徴である。Linuxの場合は、最終的な取りまとめをするリーナス・トーバルズが交通整理をする協調的なコーディネータの役目をしている。
また、特徴として、開発の初段階からすべてを公開し、開発の途中経過もほとんど公開する。「早めのリリース。しょっちゅうリリース」が基本になっている。そのことで、開発の過程に多くの目が入ることが出来て、それが開発の速度を加速するし、早い段階で多くのテストを受けるので完成度が高くなる。
[編集] 伽藍方式
コピーレフトライセンスであるGPLライセンスで公開/開発されているソフトウェアに、バザール方式を取るものが多い。しかし、コピーレフトの概念を生み出したGNUプロジェクトはLinux以前は、伽藍方式により開発されていた。
伽藍方式は創造活動への参加者は、不特定とはしない。選ばれた参加者のみが創造を行い、創造の過程は非公開である場合が多い。優秀な創造は伽藍方式でないと出来ないと思われていたので、特に伽藍方式と呼ばれることもなく、当然の事として行われていた。Linuxの開発は、それまでの開発の手法の常識を全く無視したやり方であり、開発の当初は多くの識者が、Linuxは失敗すると思っていた。
プロジェクトの全体を計画に基づいて指揮統制する体制がGNU/Linuxの開発にはなかったからである。
[編集] Linuxの成功
また、それまでの手法では公開するのは完成度が高くなってからで、途中経過は外部に見せないのが基本とされていた。Linuxの開発はここでもそれまでの伽藍方式と、手法を逆にして、古いタイプの開発者からは混沌のスープに見えたに違いない。
それが大成功したため、識者は常識を見直さざるを得なかった。コーディネータはバザール方式では、重要な意志決定をするわけではないが、プロジェクトの成功に重要な役割を果たす。参加者を良い気持にさせ、褒めて、結果を受け取り採用する。
[編集] コーディネータ
リーナスはそのことを、「ボクは人の仕事を自分の仕事のように見せるのが得意なだけだよ」と語っているが、実際そのような役割ができるコーディネータの能力、性格を持った人材は数多くない。
リーナスが取ったのは、「参加者は大事な財産」という態度である。参加者には、単なる利用者であったり、問題点を指摘してくれる人であったり、開発に参加してくれる人まで含む。それぞれが色々なレベルで色々な形で、プロジェクトを推進してくれる。単なる利用者も、利用者が増えると言うこと自体がプロジェクトをサポートすることになっている。
また、ウィキペディアは、ウィキを使ったコピーレフトな開発であり、その結果バザール方式の開発になって行くものと思われる。少なくとも、振舞い方は参加者のバザールによって決まって行き、記事は個人の判断で書かれでいるので、伽藍方式ではない。