山形浩生
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山形 浩生(やまがた ひろお、1964年3月13日 - )は評論家・翻訳家、シンクタンク研究員。プロジェクト杉田玄白の主宰者。
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[編集] 人物
多分野にわたる翻訳等を通じた論者。議論の的確・平易かつ迅速な紹介について定評があり、ローレンス・レッシグの翻訳など、オープンソース・コピーレフトの活動に精力的に参加する面もある[1]。東大の学生時代は、同窓の特殊翻訳家の柳下毅一郎氏と共に、ウィリアム・S・バロウズ氏の著作の翻訳を多数手がけ、バロウズの日本への紹介者として知られていた。
山形浩生の物言いの特徴としては、容赦ない罵倒と軽妙な毒舌が挙げられ、もったいぶっているだけで中身がろくにないと判断したものへの批判を行うことが多く、たとえばポストモダン哲学や現代思想などニューアカ的・文化左翼的なものを批判することが多い。[2]。 日本におけるポストモダニストの浅田彰による『構造と力』で使われているメタファーとしてのクラインの壺モデルを間違いだとして批判・嘲笑していた[3]。 また、小谷真理の著作をパートナーの巽孝之が代筆している(ほどそっくりである)と揶揄し、小谷から訴訟を起こされて敗訴している[4]。さらに、『さおだけ屋はなぜつぶれないか』を批判した際には抗議を受けてサイト上にお詫びを出す[5]など、罵倒したことを謝罪するケースもある。
思想的にはリバタリアニズムの傾向があるという意見もある。そのためか、環境政策への疑いが強く[6]、地球温暖化に対してはブッシュ政権の政策(京都議定書離脱)を支持している。ただし、山形は政府による経済政策を否定しているわけではないので、リバタリアニズムであると言い切ることはできない。また、積極的なアメリカ支持というより、反米派・反グローバリズム派への嫌悪から逆にアメリカの政策やネオコン的主張を支持しているとも考えられる。
イラク日本人人質事件に関しては、「社会のプールは有限だから、真に有用な活動のために温存しよう。自己努力をさぼってプールを浪費したがる個人は拒絶するか、プールの目減り分の一部負担を要求するのが正しい社会運営だ。国や政府は大きな社会とその管理人なんだよ。」(自由には必ず責任伴う 山形浩生(評論家))と主張。自己責任論を支持し、被害者の擁護は「自己責任否定論者」であると主張した。さらに、『サイゾー』2004年8月号では「(橋田信介はそれなりの業績があったが)あの人質5人は、少なくともこれまでは何もしてないし、これからも何ら役にたつことはしないだろう、というのが多くの人の目には明らかだった。」と主張した。
「地獄への道は善意で敷き詰められている」というウラジーミル・レーニンの言をしばしば引き、人々の善意に拠りかかった(効果を挙げていない)各種の活動や見解に強く反論する[7]。
[編集] 略歴
- 1964年 東京に生まれる
- 麻布中学校・高等学校卒業
- 東京大学工学系研究科都市工学専攻
- マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了
- 野村総研研究員
- プロジェクト杉田玄白を立ち上げる
[編集] 主な著書
- 『新教養主義宣言』 晶文社 ISBN 4794964153 1999年
- 『山形道場―社会ケイザイの迷妄に喝!』 イーストプレス ISBN 4872572483 2001年
- 『新教養としてのパソコン入門 コンピュータのきもち』アスキー ISBN 4756141587 2002年
- 『たかがバロウズ本。』大村書店 ISBN 4756330169 2003年
[編集] 訳書
- ローレンス・レッシグ 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 2001年 ISBN 4881359932
- ローレンス・レッシグ 『コモンズ The Future of Ideas』 2002年 ISBN 4798102040
- ローレンス・レッシグ 『フリー・カルチャー Free Culture』 2004年 ISBN 4798106801
- エリック・レイモンド 『伽藍とバザール』ISBN 4895421686
- (同書は原文も翻訳もコピーレフトで提供されている)
- ケン・スミス 『誰も教えてくれない聖書の読み方』 ISBN 4794964730
- ポール・クルーグマン 『クルーグマン教授の経済入門』 ISBN 4073000152 ISBN 4840200017 ISBN 4532192021
- ブルース・シュナイアー 『暗号技術大全』 (監訳) ISBN 4797319119
- ブルース・シュナイアー 『暗号の秘密とウソ』 ISBN 4881359967
- ビョルン・ロンボルグ 『環境危機をあおってはいけない―地球環境のホントの実態』 ISBN 4163650806
- ウィリアム・シュワード・バロウズ 『おかま クィーア』 ISBN 4893420771
- ウィリアム・シュワード・バロウズ 『内なるネコ』 ISBN 4309202349
- 他多数
[編集] 関連項目
[編集] 註
- ^ このため、オープンソースやLinuxに関する著書・訳書も多数手がけている他、自分の翻訳や著作の多くについてもフリーで公開している
- ^ そのためポストモダン哲学に批判を行ったアラン・ソーカルを評価している
- ^ しかし、山形の批判に対しては大阪大学数学教室のトポロジスト菊池和徳から有力な批判(*浅田彰『構造と力』の《クラインの壺》モデルは間違っていない)を受け、「確かにそういう解釈はなりたちそうです」と主張を後退させている(正式に誤りは認めていない)
- ^ 自分のWebページに件の詳細を載せて、自らの判断について詳細を載せている
- ^ ソース上に「Seems I never learn...」と書いていた
- ^ リバタリアニズム自体、環境保護に必須とも言える政府の規制や所謂「環境権」について否定的な立場を取っている。また現状の環境政策がコストを考えると効果を挙げていないことも翻訳を通して指摘している。
- ^ 一方で、自分では年に百万円を超える災害援助や非営利団体支援を行っており、単純な右左の枠組みでは分類しきれない面を持つ