パンドラの箱
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パンドラの箱(パンドラのはこ)とは、ギリシア神話に登場する、神々によって作られ人類の災いとして地上に送り込まれた女性パンドラが開けた箱である。壺とする説もある。この神話から、「開けてはいけないもの」、「禍いをもたらすために触れてはいけないもの」を意味する慣用句が生まれた。
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[編集] パンドラの箱の神話
プロメテウスが天界から火を盗んで人類に与えた事に怒ったゼウスは、人類に災いをもたらすために「女性」というものを作るよう神々に命令したという。
ヘパイストスは泥から彼女の形をつくり、パンドラは神々から様々な贈り物(=パンドラ)を与えられた。アフロディテからは美を、アポロンからは音楽の才能と治療の才能を、と言った具合にである。そして、神々は最後に彼女に決して開けてはいけないと言い含めて箱(壺とも言われる)を持たせ、さらに好奇心を与えてプロメテウスの元へ送り込んだ。
パンドラを見たエピメテウスは、兄であるプロメテウスの「ゼウスからの贈り物は受け取るな」という忠告にもかかわらず、彼女と結婚してしまう。そして、ある日パンドラはついに好奇心に負けて箱を開いてしまう。すると、そこから様々な災い(疫病、悲嘆、欠乏、犯罪などなど)が飛び出し、パンドラは慌ててその箱を閉めるが、既に一つを除いて全て飛び去った後であった。
最後に残ったものは未来を全て分かってしまう災いであり、人類は希望だけは失わずにすんだと言われる。こうして、以後人類は様々な災厄に見舞われながらも希望だけは失わず(あるいは絶望することなく)生きていくことになった。
[編集] 箱か壷か
- ヘシオドスの著書『仕事と日』の文中では、「壷(甕)」という表記がされている。これがパンドラの箱について触れられている最古の書物だと言われる。
- 最初に「箱」という表記が用いられたのは、ルネサンス時代、ロッテルダムのエラスムスによる記述だとする説がある。
[編集] その他
- パンドラの箱にちなむ題名の作品として、ヴェーデキントの戯曲『パンドラの箱』(『ルル』第2部)、太宰治の小説『パンドラの匣』、はやみねかおる著「オリエント急行とパンドラの匣(ケース)」がある。
- はやみねかおる著「オリエント急行とパンドラの匣」ではパンドラの匣には未知のウイルスが入っているとされている。