見るなのタブー
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見るなのタブー(みるなのタブー)は、世界各地の神話や民話に見られるモチーフの一つである。何かをしている所を「見るな」とタブーが課せられたにもかかわらず、それを見てしまったために悲劇(多くは離別)が訪れるという話である。民話の類型としては禁室型(きんしつがた)とも言う。
異類の者と結婚をした男が、見るなのタブーを犯して異類の者の本当の姿を見てしまい、それが元で離別するという話は、この類型のフランスの伝説に登場するメリュジーヌからメルシナ型(メリュジーヌ・モチーフ)と呼ばれる。メルシナ型の多くは、二人の間の子孫が王などの始祖となったという建国神話となっている。
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[編集] 旧約聖書
創世記第19章において、ソドムとゴモラが滅ぼされるとき、神の使いがロトの家族に振り返るなと言ったが、ロトの妻は振り返ってしまったので塩の柱となってしまった。
[編集] ギリシア神話
竪琴の名手オルペウス(オルフェウス)は亡妻エウリュディケを冥界から連れ帰ろうとするが、後ろを振り向いて妻の姿を見てしまった結果、目的を遂げることができなかった。
[編集] 日本神話
- 神産みの段で、亡くなったイザナミを追って黄泉の国を訪れたイザナギは、中を見るなとイザナミに言われたにもかかわらず扉を開けて中に入ってしまう。自身の朽ち果てた姿を見られたイザナミは、逃げるイザナギを追いかけ、黄泉の国の入り口で二神は離婚する。
- 高天原を追放されたスサノオは、途中でオオゲツヒメの饗応を受けるが、オオゲツヒメが料理を用意している所を覗き見、オオゲツヒメが口や尻から食物を取り出していることを知り、怒ってオオゲツヒメを斬り殺してしまう。(見ることを禁止はされていないが、見るなのタブーの変形と考えられる)
- 天孫降臨の段で、トヨタマビメに子を産む所を見るなと言われたにもかかわらず、ホオリ(山幸彦)は産屋を覗き見てしまう。そこには八尋の和邇(サメと考えられる)に姿を変えたトヨタマビメがいた。これが元で、トヨタマビメは子を産んだ後、海の中へ帰って行ってしまう。そのときに産まれた子がウガヤフキアエズで、その子が神武天皇であり、メルシナ型の典型である。
- 日本書紀の崇神天皇条において、倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめ)は大物主と結婚するが、大物主が夜にしか現れないので、倭迹迹日百襲姫命は姿を見たいという。大物主は姿を見ても驚かないようにと言うが、翌朝、蛇に姿を変えて櫛箱に入っていた大物主を見て倭迹迹日百襲姫命が驚いてしまったので、大物主は恥をかかせたなと怒って山に帰ってしまった(離別したという点で、見るなのタブーの変形と考えられる)。倭迹迹日百襲姫命は自らの行いを恥じて女性器を箸で刺して自害したともいわれ、ここから倭迹迹日百襲姫命の墓は箸墓と呼ばれるようになった。これが箸墓古墳の由来である。
[編集] 日本の民話
[編集] 中国の古典
- 白水素女