フィリピノ語
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フィリピノ語(ピリピノ語、フィリピン語、Filipino)は、フィリピンの国語であり、1987年のフィリピン憲法で定められた公用語の一つである(もう一つの公用語は英語)。オーストロネシア語族に属し、マニラ地域で話されているタガログ語の一方言を標準化した言語である。またフィリピンで話されている言語の総称として用いられることもある。
1937年11月13日、第1回フィリピン議会は国立言語研究所を設置し、同研究所がタガログ語を新たな国語の基礎となる言語に選定した。1961年、この新国語はピリピノ語と名付けられ、1972年憲法でフィリピノ語に改称された。
現在ではフィリピノ語は国語としてフィリピン全土で教育されているほか、メディアなどで用いられている。
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[編集] 歴史
1930年代にタガログ語に基づいた新たな国語が開発された際、ロープ・サントスは20字からなるタガログ語アルファベット(アバカダ)を導入した。この後新言語の発展は国立言語研究所に引き継がれ、31字からなるアルファベットが提案され、最終的に1987年に現在の28字からなるアルファベットに改訂された。これは英語のアルファベット26文字とタガログ語のñおよびngからなる。
[編集] フィリピノ語とタガログ語
フィリピノ語が何を意味するかは、フィリピン人の間でも見解が分かれている。フィリピン人の大多数は、フィリピン語は単にタガログ語の別名であり、メトロ・マニラで話されているタガログ語のことを指していると考えている。
一方、フィリピノ語はフィリピンの各言語が融合した言語であると主張する立場もあるが、フィリピンにある諸言語は一つの言葉の方言ではなく、タガログ語やセブアノ語など相互に意思疎通のできない別々の言葉であるため、仮に全ての言語の語彙や文法を混ぜてしまえば、違う言語を母語とする国民同士が意思疎通するという共通語の目的がかえって阻害される恐れがある。
また、タガログ語では英語の語彙をタガログ語に置き換える傾向があるのに対し、フィリピノ語では英語の語彙が直接用いられていることも指摘されている。
言語学的には、タガログ語とフィリピノ語は共通の言語における表記上の差を有する方言として位置づけられる。両者の違いは、表記法、外国語からの語彙の導入および国家による標準化の有無にあるものと考えられる。
現実的には、フィリピノ語はメトロ・マニラで話されている言語である。フィリピン各地から多くの人口がマニラに流入するにともない、フィリピノ語にはフィリピン各地の言語からの語彙が含まれるようになってきた。フィリピノ語は現在でも発展を続けており、「正しい」用法や語彙を特定するのは困難である。ほとんどのフィリピン人は複数の言語を用い、また英語も広く用いられているため、フィリピノ語を定義することはさらに難しくなっている。今ではタガログ語に英語が混ざった「タグリッシュ」(Taglish)と呼ばれる言語を話す人も多い。