フォッケウルフ Ta152
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Ta 152は、第二次世界大戦末期にドイツの航空機メーカー フォッケウルフによって製造された高高度戦闘機。同社の戦闘機 Fw 190D-9 を発展させたものである。フォッケウルフ製の航空機でありながら機種コードが Fw でないのは、1944年にドイツ航空省 (RLM) が「新たな戦闘機には主任設計者の名称を含める」と定めたため。主任設計者クルト・タンクの名字 (Tank) から Ta となった。レシプロ戦闘機の最高傑作と呼ばれることもあるが、登場が遅かったため、主力戦闘機とはならなかった。
目次 |
[編集] 開発経緯
Fw 190 の D-9 タイプ(ドーラ9)は戦闘機として一応の成功を収めたものの、搭載するエンジンは本来高高度用ではなく、真の意味での高高度戦闘機と呼べるものではなかった。そこで、フォッケウルフの設計者クルト・タンクは高高度での戦闘能力向上をはじめとした能力全般の向上を図った機体の開発に取り組んだ。その結果誕生したのがTa 152である。この機は高度 12,500 m で 760 km/h の最高速度を目標とし、「究極のレシプロ戦闘機」として、大きな期待がかけられた。
エンジンにはユンカース・ユモ 213(en)シリーズが採用された。タンクはより高高度・高回転型のダイムラーベンツ・DB 603(en)を希望したが、この期に及んでもメッサーシュミット優先を覆さなかったナチ政権はメッサーシュミット以外の戦闘機には生産工数の少ないユンカース製を指定した(一説ではタンク技師のイニシャル(Ta)の使用を交換条件としたのではないか、との見解もある)。また、ユモ 213でも本来であれば性能向上形が用いられる予定であったが、こちらは戦局の悪化に伴い開発・生産が滞った為に、試作初期の機体はFw190Dシリーズと同じユモ 213Aを搭載したH-0として完成した。
中・低高度用のTa152Cシリーズには、DB603が指定されたが、こちらの量産機はついに1機も完成することはなかった。
もっとも後の評価では、タンク博士の「戦闘機とは競走馬ではなく、軍馬でなくてはならない」という持論からすると、繊細なDB603よりも、ユモ 213で完成されたことは結果的に正しかったともされる。また、コントロールは、従来の電動から油圧に変更されている。
本機にまつわる逸話として次のようなものがある。タンク自らが操縦桿を握って飛行していた時、2 機の P-51 による追撃を受けたが、悠々と逃げ去ったというものである。
戦後、アメリカがイギリス経由で入手した一機(H-0)がスミソニアン博物館のポール・ガーバー施設倉庫に解体状態で保管されている。唯一の現存機だが、未だ復元される様子は無い。
[編集] 実戦
Ta 152 の量産型は 1945年1月から配備され始めたが、最終的な生産数はわずか 67 機だった。同時期には既にジェット推進戦闘機のMe 262 の配備も開始されており、Ta 152 は離着陸時が弱点の Me 262 の護衛を任務とした。過給器の不調で、本来目指した高空での高速性能は実現できず、実際はD-9程度の性能に留まっていたと言われる。
[編集] タイプ
- H-0
- Hシリーズはアスペクト比の高い主翼を持つ、高々度向け機体。本来は量産先行型に与えられるナンバーだが、実際に完成したTa152の量産機のほとんどはこのH-0型である。本来、Ta152Hには過給器改良型のユモ 213Eあるいはユモ 213Fが予定されていたが、試作の域を出ていなかった為、初期のH-0型ではFw190D-9から引き続きJumo213Aが搭載されていた。 H-0は試作機であるものの、その後ユモ 213Eに換装して実戦部隊に配備された機体もあった。
- 高々度向け機体といわれながら、その実低高度でも極めて良好な運動性と操縦特性であったと言われている。ただし、スパンの長い主翼のため、FW190シリーズやTa152Cよりもロール特性は悪化している。
- H-1
- Hシリーズの本格量産機として計画されていた機体。前述の通り、過給器改良型のユモ 213Eを搭載して完成している。しかし、実戦で過給器の脈動が発生することが判明し、生産途中から改良型のユモ 213E-1を搭載している。僅かに完成した実機は、JG301/Stab/Ⅱ等で使用された。 H-1の総生産機数は67機といわれている。
- C-1
- 主翼を切り詰めた中・低高度向けのBシリーズから、エンジンをDB603LまたはDB603LAへと変更することを最大の変更点として試作されていた。しかし、量産機は1機も完成しなかったとされている。
[編集] データ
Ta 152H-1
- 用途: 高高度戦闘機
- 乗員: 1 名
- 全長: 10.7 m
- 全幅: 14.4 m
- 翼面積: 23.50 m²
- 最大速度: 760 km/h(計画値)
- 巡航速度: 530 km/h
- 航続距離: 1,200 km
- 武装:
- 生産数: 67 機
[編集] 登場作品
- ザ・コクピット(OVA)