ホワイトホール
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ホワイトホールはブラックホールを時間反転させた空間。
ブラックホールはすべてを飲み込むが、ホワイトホールはあらゆる物体を吐き出すと考えられている。アインシュタイン方程式は時間反転に対して対称なので、数学的には在り得るが、物理的に、実際に存在するとは考えられていない(詳細は後述)。ブラックホールが蒸発する際、その最終段階は粒子を放出しているように見え、その状態ではブラックホールとホワイトホールの区別がつけられないとされている。
[編集] ホワイトホールは実在するか
ホワイトホールは現在では物理的にも論理的にもその実在性は否定されている。
ホワイトホールはあらゆる物質を放出する天体と定義される。が、この定義では、ホワイトホールはやがては物質を放出しつくし消滅してしまう。このため、かつては「ホワイトホールが発見されていないのは、既に全部消滅したから」と説明されてきた。だが、この説明どおりにホワイトホールを解釈すると、ビッグバン以前にホワイトホールは既に存在していなければならない、という矛盾が発生する。また、ブラックホールとホワイトホールが、一方通行のワームホールを通じて繋がっているため、ブラックホールに吸い込まれた物質が、ホワイトホールから放出される、という仮説も存在していた。が、この仮説にはブラックホールに吸い込まれた物質がその後どうなるのかについて説明できない、という矛盾が当初から存在していた。現在では、その重力ゆえに素粒子にまで分解され、反粒子との反応により対消滅する、と考えられるようになっている。ゆえに、ブラックホールとホワイトホールは繋がっていない、という説に取って代わられる事となった。これらの点から、ホワイトホールは数学的解釈により想像された架空の天体に過ぎず現実には存在しない、と考えられている。
[編集] フィクションにおけるホワイトホール
SFの中では、「ワープ航法」(光速以上での移動)の原理として、ブラックホールとホワイトホールが、一方通行のワームホールを通じて繋がっており、ブラックホールから入って、ホワイトホールから出る事によりワープが可能であるとの説明が行われることがある。もちろん、現実にはブラックホールとホワイトホールは繋がっておらず、ホワイトホール自体も存在しない、という説が一般的になっているため、SFにおける一種のこじ付けとみなされている。