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ロンドン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Disambiguationこの項目ではイングランドの首都について説明しています。"ロンドン" のその他の用法についてはロンドン (曖昧さ回避)をご覧ください。
テムズ河畔のウェストミンスター宮殿およびビッグ・ベン英国議会の議事堂として利用されている。
テムズ河畔のウェストミンスター宮殿およびビッグ・ベン
英国議会議事堂として利用されている。

ロンドン (en:London) はイギリスおよびイングランド首都である。

目次

[編集] 概要

ロンドン中心部のランドサット画像
ロンドン中心部のランドサット画像

北緯51度30分、西経0度8分に位置する。都市圏は比較的平坦な土地に広がっており、その中心部をテムズ川が西から東に流れている。ヨーロッパにおいても有数の歴史ある都市であり、中世および近世に建設された建造物が数多く残っている。2005年時点での大ロンドンの人口は742万人、ロンドン都市圏では1200万人と、欧州連合において最も人口が多い都市であり、経済、政治、文化いずれについても大きな影響力を有している。シティの金融市場は世界3大市場の1つとされ、外国人も多い国際都市である。他国の多くの首都と同様に、ロンドンの首都としての地位を明示した文書は存在しない。

[編集] 歴史

[編集] ローマ時代

ロンドンの歴史はローマ人によるブリタニア支配にさかのぼる。ローマ人は紀元43年にテムズ川北岸にロンディニウムを建設し、これをブリタニアの首都とした。それ以前この地域周辺にはケルト人が居住しており、初期の植民の跡が残されている。61年には女王ブーディカに率いられたケルト族がロンディニウムを襲撃し、ローマ人から都市を奪還した。現在のシティ・オブ・ロンドンにある遺跡からはこの争いによるものと見られる焼け焦げた木材などが出土している。その後紀元2世紀頃には町の防衛のため市街壁が建設された。およそ4万人の人口を擁していたシティ・オブ・ロンドンを中心としてその後も都市は順調に発展を遂げていった。また現在のウェストミンスター地区にも独立した集落が形成されており、現在のフリート・ストリートおよびストランド・ストリートによって結ばれていた。

[編集] ウィリアム1世時代

ローマが撤退した410年以降、イギリス史上の空白期間が続くが、シティは自治都市として独立を保持した。ウィリアム1世の時代に、市壁東部にホワイト・タワー(ロンドン塔)が建てられた。一方、政治と宗教の中心地はウェストミンスター宮殿を中心とするシティ・オブ・ウェストミンスターにあった。

[編集] 急成長期

セント・ジェームズ・パーク背後の建物は英国財務省
セント・ジェームズ・パーク
背後の建物は英国財務省

16世紀にヘンリ8世のもと宗教改革が進展する中で、修道院解散に伴いシティ内外で没収地の開発が進んだ。これにより多くの人口を許容できるようになったロンドンは当時の経済発展とあわせ急激に成長しはじめた。シティとウェストミンスター間には市街地が成長して両者は一体化し、17世紀中期には人口50万以上、さらに半世紀後には70万人以上が居住している。1666年に発生したロンドン大火はロンドンの町並みに大きな影響を与えた。市街中心部は石造に作り替えられ、民間投資によって標準化された住居建築群が建設されて道路も拡幅された。さらに18世紀にはセント・ジェームズ・パークからリージェンツ・パークに至る大通りが造られ、街路沿いにピクチャレスクな建物が整然と並ぶ景観が形成された。

[編集] 産業革命時代

19世紀から20世紀にかけて産業革命を経験したロンドンはさらに発展を遂げ、東部や南部には大きな工業地帯が形成され、東部のロンドン港(ドックランズ)は世界有数の港湾となった。20世紀初頭には人口が440万人を超えたが、それと同時に大気汚染も深刻化し、スモッグの発生により霧の都と揶揄される、貧困地域の拡大など現代的な社会問題を抱えた。この問題は20世紀以降に労働者階級の地位向上によって大きく改善されたが、今なおロンドン南部のテムズ川南岸や東部のイーストエンドなどには貧困者の多い地区が存在し、旧植民地諸国からの移民流入もあいまって問題は継続されている。20世紀になるとエベネザー・ハワードの提唱した「明日の田園都市」が世界的な反響を呼び起こし、その理論に基づいてロンドン郊外に世界初のニュータウンであるレッチワース(人口32000人)が建設された。

[編集] 第二次世界大戦後

第二次世界大戦の初頭にはドイツ空軍の爆撃を受けて数千人が死亡した。また爆撃機による空襲がバトル・オブ・ブリテン以後に下火になった後にもV2ロケットによる攻撃を受け大きな被害を受けた。戦後の復興は大ロンドン計画にもとづいて推進され、都心部に郊外区域を加えたロンドンを統括する行政府としてグレーター・ロンドン・カウンシルが設置された。

1960年代以降イギリス経済は低迷し、それに伴いロンドンも移民層や労働者階級を中心に失業者が増加して街は荒廃し犯罪が増加した。1980年代に保守党のサッチャー政権は大幅な犠牲を払って規制緩和や産業構造の改革、国有事業の民営化、ドックランズ再開発など施策を遂行した。経済は少しずつではあるが息を吹き返してゆき、国内金融機関の退場を引き換えにしてロンドンは世界有数の金融市場としての地位を確立した。

[編集] 現在

1990年代以降には金融に加え観光や情報産業、デザイン産業なども活気を呈しており、荒廃したロンドンは完全に過去のものとなった。近年では地価の高騰に悩むなど往年の繁栄を取り戻している。1980年代以降に連続して発生したIRA暫定派によるテロは収束したが、2005年7月7日にはイスラム過激派によるロンドン同時爆破事件が発生している。近年増加しているイスラム系移民と従来の住民間との対立も発生するなど、国際都市特有の問題の解決に注目が集まっている。

2005年には2012年に開催される第30回夏季オリンピック誘致に成功した。1908年および1948年に次ぐ3度目のオリンピック開催であり、同一都市としては史上最多となる。

[編集] 行政

シティ・ホールノーマン・フォスターの設計により2002年に完成した。
シティ・ホール
ノーマン・フォスターの設計により2002年に完成した。

大ロンドン (Greater London) はシティ・オブ・ロンドンとシティ・オブ・ウェストミンスターを含む32の特別区 (borough) により構成されている。英国では伝統的に大聖堂(大寺院)がある町 (Town) を都市 (City) と呼称するが、シティ・オブ・ロンドンにはセント・ポール大聖堂、シティ・オブ・ウェストミンスターにはウェストミンスター寺院が存在する。他の大聖堂を有するサザークは16世紀からシティを名乗らずBoroughを用いている。

1986年にサッチャー政権によってグレーター・ロンドン・カウンシルが廃止されて以来各区は「ユニタリー」と呼ばれる状態にあり、カウンティレベルの行政組織として機能していた。ブレア政権下の住民投票によって大ロンドンはグレーター・ロンドン・オーソリティー( Greater London Authority/大ロンドン庁) として復活しグレーター・ロンドンの市長は直接選挙で選出されるようになった。現在の市長ケン・リヴィングストンはロンドンの主要な政策課題である公共の安全性の確保と交通問題を扱っている。

[編集] 経済

シティ(シティ・オブ・ロンドン)には証券取引所や金融関係の会社が数多く存在し、世界三大金融市場の一つとしてイギリス国内のみならずヨーロッパの金融市場の重要な拠点として機能している。シティ東部の港湾地帯であるドックランズでは荒廃からの再開発が進み、多くの銀行やマスコミなどがキャナリーワーフといわれる地域に移転している。

[編集] 交通

ロンドン・シティ空港ドックランド跡地に建設された。
ロンドン・シティ空港
ドックランド跡地に建設された。

[編集] 道路

ロンドンを縦横にはしる道路の交点においては交差点とラウンドアバウトの両者が存在する。郊外とは高速道路などで結ばれている。市内中心部では交通渋滞が頻繁に発生しており、コンジェスチョン・チャージが実施された現在でも完全には改善されていない。

市内の渋滞は酷いため、渋滞車列を横切って渡ったり、横断歩道の赤信号を無視して横断したりする歩行者が多い(ニューヨークよりは少ない)。これが自在に出来ればロンドンっ子とされるが、車の陰からバイクが突進してくることがあり大変危険である。横断歩道に人が立つと車は停止して横断者を通さなければならないルールがあり、厳格に守られている(日本とは大違いである)ので、横断歩道を通るのが安全である。

世界的にも有名な黒い車体のロンドンタクシーが市民の足として親しまれている。運転手となるには難関の試験を突破しなければならず、その質と運賃は非常に高い。黒い車体のタクシーは一般的にブラックキャブ(black cab)と呼ばれている。

また無免許で合法の個人タクシーもあり、それらはミニキャブ(mini cab)と呼ばれている。市民の間ではブラックキャブよりずっと賃金が安いという理由でより一般的である。

[編集] バス

ロンドン市内を縦横に走る赤い二階建てバスダブルデッカー)が世界的に有名であり、安価な市民の足として親しまれている。

旧型の赤い二階建てバス(愛称・ルートマスター)は2005年12月をもって廃止された。車掌が同乗する旧型よりもワンマンバスのほうが効率がよいのに加えて、開けっ放しの乗降口は危険であり身体障害者にとっても不便であったためである。旧型はロンドン中心部の観光名所を巡る観光ルートとしてのみ利用される予定である。

[編集] 鉄道

かつての国鉄は解体されパブリック・プライベート・パートナーシップ (PPP) のもとで委託経営がおこなわれている。線路や駅の管理は2001年まではレイル・トラック、同社の破産以降はネットワーク・レイルが行い、各路線は複数の私鉄会社が運営する上下分離方式が採用されている。駅名表示の看板には国鉄マークがいまだに掲示されており、運営会社の名前が見られるのは駅に張り出されている時刻表の隅くらいである。

1999年にはパディントン駅付近で列車衝突事故が発生し、さらにその直後にも再び事故が起きるなど、イギリス、特にロンドンの鉄道は大きな政治課題になっている。事故が続発した大きな要因としては株主への利益還元を重視しすぎたレイル・トラックが列車運行に責任を持たず、整備をおろそかにしたためとされている。

[編集] 地下鉄

世界で最初に開通した地下鉄であるロンドン地下鉄は「チューブ」と呼ばれて親しまれており、世界有数規模である12の路線網を有している。ホームへの出入りには大型リフト(日本ではエレベータ)を設置していることが多いが、一部施設はエスカレーターが木製であるなど老朽化が見られ、1987年11月にキングズクロス駅で発生した火災では31人の犠牲者を出した。2005年7月にはロンドン同時爆破事件が発生し地下鉄乗客に被害が出た。地下鉄に類似した輸送機関としては新交通システムであるドックランズ・ライト・レイルウェイや、旧国鉄の近郊電車をロンドン都心の地下で結ぶシルバーリンクがが存在するが、クロスレールはまだ存在しない。

[編集] 空港

ロンドン付近には6つの空港が存在する。そのうちガトウィック空港、スタンステッド空港、ルートン空港は大ロンドン地域の外に設けられている。ロンドンにおける主要空港はロンドン・ヒースロー空港でありヨーロッパ有数のハブ空港として機能している。ガトウィック空港とスタンステッド空港とロンドン・ルートン空港とロンドンシティ空港も国際空港であり年間3000万人から2000万人の利用者がある。1つは旅客機は運航していない。

日本との間にはブリティッシュ・エアウェイズヴァージン・アトランティック航空日本航空全日空がヒースロー空港と成田空港関西国際空港の間に直行便を運航している他、経由便で行くことが出来る。

[編集] 観光

[編集] 美術館・博物館

[編集] 文化

アビー・ロードビートルズのアルバム・カバーにより有名となった。
アビー・ロード
ビートルズのアルバム・カバーにより有名となった。

[編集] 音楽

クラシック音楽のみならず、ロックやテクノに至まで、20世紀以降の音楽史における貢献度、多様性、革新性、人気のいずれも高い水準にある。クラシックにおいては世界的に有名なオーケストラが複数存在している。

[編集] 関連書籍

ミロスラフ・サセック『ジス・イズ・ロンドン』

[編集] 美術・デザイン・ファッション

発電所を改装し建設されたテート・モダンエントランス・ホールには発電機がおかれていた。
発電所を改装し建設されたテート・モダン
エントランス・ホールには発電機がおかれていた。

長年イギリス美術は、イタリア美術やフランス美術など欧州の美術の周縁にありその後塵を拝してきた。しかしターナーらやラファエル前派など優れた画家や独自の美術運動も登場し、デザイン分野では美術と工芸の間の壁を取り払おうとするアーツ・アンド・クラフツ運動が各国のモダンデザインの運動に大きな影響を与えた。優れた工業デザインも生み出している。

戦後はアメリカの影響を受け、ファッション・デザインなどの分野では1960年代以降、ポップミュージックの隆盛と同時にカウンターカルチャーに影響を受けた斬新な作品が多数生まれ、「スウィンギング・ロンドン」は世界中の若者の心を掴んだ。以来ロンドンは継続して若者文化の世界的中心地となっている。

数人の優れた作家がいるほかはあまり冴えなかった美術や映画の分野でも、1990年代以降若い世代の美術家・映画監督が多数生まれ「クール・ブリタニア」と呼ばれる活況を呈している。

[編集] 演劇

プリンス・エドワード・シアター
プリンス・エドワード・シアター

シェイクスピアからミュージカル、前衛演劇まで各種演劇が盛んに行われており、それらのための劇場が数多く存在する。

[編集] ミュージカル

  • ウェスト・エンド地区に劇場街がある。近年では往年の映画やポップ・ミュージック、ロックの名作・名曲を素材にした作品に人気が集まっている。

[編集] スポーツ

[編集] サッカー

アーセナル・スタジアム
アーセナル・スタジアム

ロンドン市内および郊外には多数のサッカー・チームが本拠地を置いている。

世界的にも著名なウェンブレー・スタジアムにおいてはFAカップ決勝戦や代表チームの試合が行われる。

[編集] モータースポーツ

モータースポーツ発祥の地であることから、ロンドン郊外にはフォーミュラ1も開催されるシルバーストンドニントンパークなどのサーキットが点在している。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク



Crest of Greater London 大ロンドン | ロンドン | シティ・オブ・ロンドン Flag of the City of London

boroughs: シティ・オブ・ウェストミンスター | ケンジントン・アンド・チェルシー | ハマースミス・アンド・フラム | ウォンズワース | ランベス | サザク | タワーハムレッツ | ハクニー | イズリントン | カムデン | ブレント | イーリング | ハウンズロー | リッチモンド | キングストン・アポン・テムズ | マートン | サットン | クロイドン | ブロムリー | ルイシャム | グリニッチ | ベクスレー | ハヴァリング | バーキング&ダゲナム | レッドブリッジ | ニューハム | ウォルサム・フォレスト | ハーリンゲイ | インフィールド | ブレント | ハローウ | ヒリングドン
Sui generis: シティ・オブ・ロンドン
包領: インナー・テンプル | ミドル・テンプル

参照: 大ロンドン庁 ロンドン市議会 大ロンドン市長 ロンドン市長 ロンドンの地名
夏季オリンピック開催都市

アテネ (1896) | パリ (1900) | セントルイス (1904) | ロンドン (1908) | ストックホルム (1912) | アントウェルペン (1920) | パリ (1924) | アムステルダム (1928) | ロサンゼルス (1932) | ベルリン (1936) | ロンドン (1948) | ヘルシンキ (1952) | メルボルン (1956) | ローマ (1960) | 東京 (1964) | メキシコシティ (1968) | ミュンヘン (1972) | モントリオール (1976) | モスクワ (1980) | ロサンゼルス (1984) | ソウル (1988) | バルセロナ (1992) | アトランタ (1996) | シドニー (2000) | アテネ (2004)
今後の開催地: 北京 (2008) | ロンドン (2012)

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