ホンダ・VTR1000F
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VTR1000Fは、本田技研工業が1997年より生産・販売している、996ccのVツインエンジンを搭載したオートバイ。国内での名称はFIRESTORM(ファイアーストーム)。1997年から2003年まで国内市販が行われたが、現在では輸出専用車となっている。
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[編集] モデル概略
[編集] 1997年
4ストローク・90度V型2気筒・996ccエンジンをトラス風のセクションを持つアルミピボットレスフレームに搭載してデビュー。クランクケース後端にスイングアームをマウント、ピボット部を持たない車体構成や、ラジエターを車体側面に配置した「サイドラジエター」など、さまざまな技術的トライもなされていた。98mmというエンジンのボアは当時のホンダ車最大で、用いられたキャブも48φという、CVキャブとしては最大径のものだった。
デザインは、日本・アメリカ・ヨーロッパのホンダによるデザインコンペが行われ、日本案を中心にまとめられたもの。1月から欧州・北米に輸出が始まっていたが、4月からは「ファイアーストーム」として国内市販も開始された。 ちなみに、北米仕様の呼び名は「SUPER HAWK996」。
パワーは輸出仕様が110PS/9000rpm、国内仕様が93PS/8500rpm。両者の差はイグナイター、カムプロフィール、インシュレーター、マフラー口径、チェーンサイズ、ファイナルなどだが、国内仕様もトルクが充実しており、実際に乗った際の体感差も少なかったのと、パーツ換装によるパワーアップ(フルパワー化と一般に呼ばれるが、厳密にはフルパワーではない)が容易だったこともあり、国内仕様も高い人気を博した。
- ボディカラー
- イタリアンレッド、ブーンシルバーメタリック(国内)
- イタリアンレッド、パールフラッシュイエロー、ブラック(欧州)
[編集] 1998年
カラーリング変更。国内は輸出専用色に近いパールシャイニングイエローが登場。レッドは廃止され、シルバーも明るいフォースシルバーメタリックに変更された。同時に、フレーム側面にバフ仕上げを施し、フロントフォークのトップキャップをブルーのアルマイト仕上げとし、チェーンもゴールドチェーンを標準装備するなど、各部の質感が高められている。欧州仕様は車体色に国内と同じシルバーが追加され、計4色となっている。
- ボディカラー
- パールシャイニングイエロー、フォースシルバーメタリック(国内)
- イタリアンレッド、パールフラッシュイエロー、フォースシルバーメタリック、ブラック(欧州)
[編集] 1999年
欧州仕様のカラーリングを変更。イタリアンレッドとフォースシルバーメタリックの代わりに、新たにパールライブリーオレンジとミディブルーメタリックが登場。計4色のラインアップとなる。国内仕様は継続販売で、変更はない。
- カラーリング
- パールシャイニングイエロー、フォースシルバーメタリック(国内)
- パールライブリーオレンジ、ミディブルーメタリック、パールフラッシュイエロー、ブラック(欧州)
[編集] 2000年
欧州仕様に若干の変更。スクリーン前端部の、防眩用のブラック仕上げの部分がグラデーションとなったほか、前後ホイールの塗色をシルバーに変更、若干のイメージチェンジを図っている。カラーリングは、前年登場したオレンジとブルーが早くも姿を消し、新たにブルーとグリーンの中間のようなヘレスブルーメタリックが登場したほか、前年に廃止されたイタリアンレッドが復活。継続色はパールフラッシュイエローのみで、全3色のカラーとなった。国内仕様は継続販売で、変更はない。
- カラーリング
- パールシャイニングイエロー、フォースシルバーメタリック(国内)
- ヘレスブルーメタリック、イタリアンレッド、パールフラッシュイエロー(欧州)
[編集] 2001年
登場以来初めてとなる、大幅なマイナーチェンジを敢行。燃料タンクを大型化し、2ℓアップの18ℓ(輸出仕様では19ℓ表記)としたほか、フロントフォークのダンパーのセッティング変更(ややソフトな味付けとなった)が施され、ハンドルが垂れ角で7度、グリップ位置計測で16mm(正確には15.6mm)アップした。メーターデザインも一新し、デジタルトリップメーターや時計、燃料計、ハザードランプなどの機能を追加。盗難抑止効果の高いイモビライザーシステム「H・I・S・S」も標準装備(国内では初)するなど、全体的にツーリングスポーツとしての機能を充実させる形での進化となった。これはツーリングで手首が痛くなる、燃料タンクが小さい、といった、従来型に対するユーザーの不満の声に応えたものである。スタイリングは基本的に同一だが、タンク上にあった「FireStorm」のデカールはホンダのウイングマークに改められ、フロントカウルサイドの「VTR」のロゴが「FireStorm」となっている。また、この型から、前後のウインカーが小型化されている。
エンジンはユーロ2などの排ガス規制に対応するため、エアインジェクションシステム(二次空気導入装置)を採用。新たにシリンダーヘッド部にエア導入のためのチャンバーが設けられた。パワー、トルクのスペックは同じ。(オーナーの間では、乗り比べると、前期型の方が若干中域のトルクが厚いと言われている)
輸出仕様と国内仕様の差はスペックのほか、装備が若干異なり、国内仕様には、新採用のものも含め、いくつかの専用装備がおごられている。具体的には、ハザードスイッチ、別体リザーバータンク付きリアショック、メッキハンドルバーエンド(ここまで新採用)、フォークトップキャップのブルーアルマイト仕上げなどである。輸出仕様はホイールのカラーがブラックとなっている。ボディカラーは国内仕様がイタリアンレッド1色のみ、輸出仕様はイタリアンレッドに加え、パールフラッシュイエロー、深みのあるラピスブルーメタリックの3色となった。
- カラーリング
- イタリアンレッド(国内)
- イタリアンレッド、ラピスブルーメタリック、パールフラッシュイエロー(欧州)
[編集] 2002年
欧州仕様がカラー変更。紺色に近かったラピスブルーメタリックが、明るい色調のキャンディタヒチアンブルーに変更された。国内仕様は継続販売で、特に変更点はない。
- カラーリング
- イタリアンレッド(国内)
- イタリアンレッド、キャンディタヒチアンブルー、パールフラッシュイエロー(欧州)