マネタリスト
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マネタリスト(monetarist)とは、貨幣供給量(マネーサプライ)は物価水準を変化させるだけで実物経済には影響を与えないとする現代版貨幣数量説を唱える経済学の一派およびその主張をする経済学者である。マネタリストの理論および主張の全体をマネタリズム(monetarism)と呼ぶ。裁量的な経済政策の有効性を疑い、固定的な貨幣供給ルールの採用を主張する。
[編集] 概要
貨幣数量説とはアーヴィング・フィッシャーの貨幣数量方程式の変形版
Mv=PY
M:貨幣供給量 v:貨幣の所得流通速度 P:価格水準 Y:産出物の数量
に基づき、貨幣の所得流通速度(v)が一定であるとき、産出物の数量(Y)が一定ならば、貨幣の供給量(M)によって価格水準(p)の名目価値が決定されること、すなわち、物価は発行される貨幣の量で決まると主張した。貨幣数量方程式は状態方程式なので、本来はそのような因果関係を表したものではないが、マネタリストは因果関係を表す式として解釈する。ケインジアン(ケインズ経済学者)は、価格水準(p)が一定であれば、変化するのは産出物の数量(Y)であり、またMとYがそれぞれ独自に変化することがあるので、そのような因果関係を見ることは出来ないと主張していた。また現実には貨幣の所得流通速度(v)が一定でないこともあり、貨幣供給量とPY(名目GDP)の関係は安定的とは限らない。
マネタリストの主張の骨子は、以下のようにまとめられる。
短期的には貨幣錯覚などにより実物経済にも影響を与えるが、その典型が1930年代の誤った金融引き締めによる大恐慌だという。ミルトン・フリードマンは実証研究によりノーベル賞を受賞しマネタリストの指導的な立場に立ち、激しいケインジアン攻撃を続けた。 彼の主張は、1970年代米国のインフレと不況の並存により、フィリップス曲線の崩壊の予言の的中をもって頂点に達した。 サッチャー、レーガン政権等に始まるケインジアン排除の流れは世界を席巻し、殆どの先進諸国においてスタグフレーションは過去のものとして忘れられるまでになった。