ミクロソリウム
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ミクロソリウムとはウラボシ科ミクロソリウム属に属するシダの呼称である。学名からとったものであるが、主に園芸やアクアリウムの世界で使われる。この仲間は主にアジア・オセアニア・アフリカの亜熱帯~熱帯地域に広く生息し、園芸用やアクアリウム用としても栽培・品種改良されている。以下では、主な目的別にミクロソリウムの仲間を分類し、特徴や生態、自然下での状況を説明する。
[編集] ミクロソリウムの仲間(アクアリウム用)
ミクロソリウム・プテロプス Microsorium pteropus アクアリウムの世界でミクロソリウムといえば、通常は本種か本種を基にした改良種を指す。「ミクロソリム」「ミクロソラム」とも呼ばれる。東南アジア原産で、日本にも石垣島、西表島など限られた地域に生息している。和名はミツデヘラシダ。日本では「自生地が極めて限定的」「分布域の北限であり学術的な価値が高い」といった理由から、レッドリストに指定され、保護されている。そのため、アクアリウム用に流通しているものは東南アジア産の栽培個体がほとんどである。熱帯や亜熱帯の川沿いにある岩壁などに着生し生活する半水生の着生植物である。熱帯・亜熱帯に自生するといっても、河川の上流域を主な生息域とするため、暑すぎる気温・水温(28~30℃以上)を苦手とし、葉が黒くなって枯れていく。接触し合うことで伝染もする。
ナローリーフ・ミクロソリウム Microsorium sp.
ミクロソリウムの近縁種で、特別な学名はついていない。東南アジア(タイ王国)原産。プテロプスより葉が細く、透明感が有る。
栽培
主に石や流木に輪ゴムや木綿糸を使用してくくり付け、活着させて栽培する。一般に丈夫な初心者向けの水草として紹介されるが、夏場の高水温には弱く、水温が高い状態が続くと黒ずんで溶けてしまうことがある。また、根腐れや水生シダ病にかかりやすいなど神経質な面をもつ。本来が水辺の着生植物であるため、砂や土に直接植え込むと上手く育たないことも多い、また、沈水性(完全に水中生活をしている)の水草ではないので、陸上での栽培も可能である。陸上で栽培する際は根が常に湿っている、水に浸かっているという状態でないと上手く育たない、また、乾燥にも弱いため、気中の湿度も高めに保つ必要がある。特に水中葉から水上葉に移行する際の湿度管理には注意が必要である。
改良種
プテロプスの獅子葉(葉の先端が細かく枝分かれする突然変異)を固定した「ミクロソリウム・ウィンデローブ」や欧州の水草メーカーが作出した、葉の側面から突起が出てギザギザした感じの葉になる「ミクロソリウム・トロピカ」などの品種が流通している。
[編集] ミクロソリウム(園芸用)
陸上性の種は園芸用に栽培されるものがある。
- オキナワウラボシ M. scolopendria (Brum.) Copel.
- 明るい森林の木陰や日向の岩の上にも着生する。葉は羽状複葉に近い形に裂けた単葉。日本では沖縄と小笠原に産するが、アジア・アフリカの熱帯域に広く分布する種である。
- アヤメシダ
- シシバタニワタリ
[編集] 日本産の種について
ミクロソリウム属の日本名はヌカボシクリハラン属である。日本本土においてもっとも普通な種はヌカボシクリハランである。それに上記の2種を含め、あわせて七種が日本からは知られている。特に目立つのは次のような種である。
- ヌカボシクリハラン M. buergerianum (Miq.) Ching
- 本州南岸の一部から南に分布。森林内の地上、岩の上、樹皮上などを這う。葉は長さ30cmほど。クリハランに似るがやや小型で、葉脈が浮かない。
- タカウラボシ M. rubidium (Kunze) Copel.
- 森林内の渓流沿いの湿地にはえ、葉は高さ70cmに達する。葉は羽状に深裂し、細長い。奄美以南の琉球列島から、アジア・オセアニアの熱帯域に広く分布する。
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