リニアモーター
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リニアモーター(linear motor) とは、一般的なモーター(電動機)が回転運動をするのに対して、平面上を連続的に動くモーターのことをいう。
既存の回転モーターのような軸受け部分がないので、駆動系をコンパクトにすることができ、回転モータを置くだけのスペースが確保できない場合などに使われる。 工作機械など、応用範囲は幅広く、とくに大規模なものがリニアモーターカーに使われている。 動作原理により、リニア誘導モータ、リニア同期モータ、リニア直流モータがある。
基本的な原理は回転型のモーターと同一で、誘導型では磁界中に置かれた導体に電流を流したときに生じるローレンツ力を利用しており、同期型では磁極同士の吸引・反発力を利用している。 もっとも原始的な構造は、回転型のモーターを直線に切り開いた形を想像すると理解しやすい。回転磁界を起こす代わりに直進させる磁界変化を起こしている。
なお、「リニア」とは「連続した」という意味であり 、必ずしも直線状に並べる必要はない。 例えば、扇形に並べて、普通のモーターより圧倒的な薄さで円弧運動を行わせることも出来る(ハードディスクのヘッドなどはこの形で使用している)。 ただし、円筒形に配置したりすると、これは単なる既存の回転式モーターの変種と言う事になってしまうので、閉じてない平面状に配置した構造が基本である。
同期型のリニアモーターの原理を簡略的に表すと、以下のようなものである。
- 静止状態では、直線的に配置された固定電磁石と可動する電磁石は逆の極(たとえばNとS)。
- 動かしたい方向の、直線的に配置された固定電磁石をSにする。すると、可動電磁石は、その方向に動き出す。(動かしたい方向と反対側の固定電磁石をNにすると、より強い力で駆動される。)
- 固定電磁石の磁極変化を繰り返していくと、可動電磁石は、前方に引き寄せられつづける。
リニアモーターカーでの応用例では、以下のようなイメージになる。
車体本体(図例では個々の中段の S N S)の磁極は変わらず、推進コイル(ガイドレール側)の磁極を次々と変えていく。この変化させる時間間隔によって速度も調節できる。
(上から見たイメージ) S N S N S N S N S N S N ← S N S S N S N S N S N S N S N
レールのみ:S⇔N
N S N S N S N S N S N S ← S N S N S N S N S N S N S N S
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[編集] 応用例
[編集] 鉄道
日本では以下の鉄道路線でこの方式を採用している。
- 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線(1990年3月20日開業)
- 都営地下鉄大江戸線(1991年12月10日開業)
- 神戸市営地下鉄海岸線(2001年7月7日開業)
- 福岡市地下鉄七隈線(2005年2月3日開業)
- 愛知高速交通東部丘陵線(2005年3月6日開業)(浮上式)
- 大阪市営地下鉄今里筋線(2006年12月24日開業)
- 横浜市営地下鉄グリーンライン(建設中、2007年度末開業予定)
- 仙台市営地下鉄東西線(計画中、2015年度開業予定)