都営地下鉄大江戸線
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大江戸線(おおえどせん)は、東京都交通局が運営する鉄輪式リニアモーターの鉄道路線(地下鉄)。正式名称は12号線大江戸線である。東京都練馬区の光が丘駅~新宿駅間の放射部と、新宿駅から反時計回りに都庁前駅に至る環状部から構成される。環状運転を行っているが、O文字運転ではなく、6文字運転である(運行形態については後述。他の環状運転の例は環状運転参照)。
路線名の由来は東京の古称である大江戸から。車体及び路線図や乗り換え案内で使用されるラインカラーは「マゼンタ」(牡丹)○E
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[編集] 路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):全長40.7km
- 軌間:1435mm
- 駅数:38駅(起・終点駅含む。但し都庁前駅は1駅として数える)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:車内信号閉塞式
- 車両基地:木場車庫、光が丘車庫(高松庁舎)
[編集] 概要
大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線に次いで日本で2番目に採用された鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄である。千代田線を除く東京の全地下鉄路線と接続している。また、都営地下鉄では初めて当初よりワンマン運転を実施している。
1991年の開業当初(光が丘~練馬間)は(西武と営団有楽町線との直通運転区間である西武有楽町線は別として)他の都営地下鉄並びに営団地下鉄(現・東京メトロ)の路線とは接続していなかったが、1997年の第1期延長区間(練馬~新宿間)が開業してようやくこれらの線との接続が可能となった。
開業当初は工事線名(都市計画線名)の「12号線」のままで営業を行っていたが、2000年(平成12年)の環状部新宿駅~国立競技場駅間開業に先立ち、1999年(平成11年)8月に路線名の公募が行われて、その結果11月末に「東京環状線」が採用され、併せて「ゆめもぐら」という愛称が付けられることになった。この選考は高原須美子(当時プロ野球セントラル・リーグ会長でもあった)によるものである。しかし石原慎太郎東京都知事が「環状運転しない(後述)のに『東京環状線』では紛らわしくて山手線とか大阪環状線を使っている人に迷惑だよ。俺は『大江戸線』でいいと思うけどね。」などとしてこれを却下するとともに、当初の愛称であった「ゆめもぐら」も採用を見合わせた。改めて審議を行った結果、翌12月15日に「大江戸線」を採用した。そのため、正式名称は「12号線大江戸線」となる。実際に、大江戸線の環状部はかつて江戸と呼ばれた範囲(明治期になり旧東京市15区)の淵を囲むように走っている。
後発で建設された地下鉄路線のため、既存の路線より深部を走り、全般的に駅ホームがかなり深く、乗り換えやホームから地上までの移動に時間がかかることが多い。特に六本木駅は都内で一番深い(下部の内回り1番線ホームが地下42m)地下鉄駅である。
また、(都庁前駅と新宿駅を除く)環状部の26駅では公募プロボーザル方式により駅デザイン(主に内装)を土木業者とは別の建築などの設計事務所に委託した。従来は地上部だけをデザイナーと設計事務所が関わり、ホームやコンコースは土木業者が設計デザイン施工をするため画一的なデザインとなることが多かった。その点、大江戸線はコストとの兼ね合いで駅全体の設計そのものにはデザイナーが関わっていないものの、地下部のデザインに全面的に関わる事になった試みとして評価されている。これらにより、2001年には一部の駅がグッドデザイン賞建築・環境デザイン部門の金賞、インター・イントラ スペースデザイン セレクションの大賞及び土木学会技術賞を受賞している。
全線がトンネル(地下区間)であり、連続した地下鉄トンネルとしては日本最長である。「鉄道のトンネルとして青函トンネルに次いで日本で2番目に長い」、という言い方もできなくはない。
[編集] 東京の他の地下鉄との接続状況
大江戸線は、東京地下鉄千代田線以外の10路線と接続駅がある。だが、上野御徒町駅は湯島駅と、六本木駅は乃木坂駅とそれぞれ至近である。また、本郷三丁目駅、両国駅、蔵前駅では他線との連絡が地上連絡になる上に距離も離れており、不便さは否めない。また、建設中の副都心線とは、東新宿駅で接続できる予定。
[編集] 経営状況
収支状況は2004年度決算で純損益 約239億7,564万1,000円の赤字([1]の5ページ目)で、日本全国の公営地下鉄路線で最も赤字額が大きい路線であるが、減価償却費を除いた減価償却前損益では約18億8,779万円の「償却前黒字」を既に達成している。また、翌2005年度の決算では約200億6,676万7,000円の赤字([2]の7ページ目)となっており、着実に収支は改善されてきている(2005年度の減価償却前損益は約38億4,405万円の黒字)。
建設費償却のための赤字額が大きい路線であるがゆえに、増収施策として汐留駅開業時から、各駅到着直前に「~~の○○へお越しの方はこちらでお降りください。」というように車内放送で路線バスのような停車駅の最寄りの施設・企業案内による広告放送が行われている。車内放送はワンマン運転のため自動放送で行われ、発車直後とスポンサーのある駅では到着直前にも流れる。都営地下鉄のその他の路線や東京メトロ線では大手新聞社や有名デパートの最寄り駅で「○○前です。」というようなアナウンスはあるが、大江戸線のような大規模な広告放送は行われていない。
[編集] 利用状況
2005年度の1日平均利用者数は681,623人で、都営地下鉄4線の中では最も多い[1]。2007年度も75.2万人と予想されており、利用者数は年々増加している。都心回帰の追い風もあり、沿線、特に汐留・六本木地区の大型プロジェクトや大規模マンションの着工が相次いでおり、今後も同様の状況が予想される[2]。
[編集] 沿革
- 1972年(昭和47年)3月 - 都市交通審議会の答申第15号で答申される。
- 1974年(昭和49年)8月 - 西新宿~高松町間の鉄道事業免許を取得。
- 1985年(昭和60年)7月 - 運輸政策審議会の答申第7号で整備計画路線に。
- 1986年(昭和61年)6月 - 光が丘駅~練馬駅間の工事着工。
- 1988年(昭和63年)12月 - 鉄輪支持式リニアモーター方式の採用を決定。
- 1991年(平成3年)12月10日:都営12号線として光が丘駅~練馬駅間が開業。
- 1991年(平成3年)12月31日 - 大晦日~元日の終夜運転を開始。
- 1997年(平成9年)12月19日 - 練馬駅~新宿駅間が開通。
- 1999年(平成11年)12月15日 - 路線愛称名を「大江戸線」にすることを決定する。
- 2000年(平成12年)4月20日 - 新宿駅~国立競技場駅間が開通。大江戸線と改称。
- 2000年(平成12年)12月12日 - 国立競技場駅~六本木駅~大門駅~両国駅~飯田橋駅~都庁前駅間が開通し全線が開通。但し汐留駅は駅周辺が再開発中でアクセス道路が未開通だったため開業を見送り(信号所として使用)、全列車が通過していた。
- 2002年(平成14年)11月2日 - 汐留駅開業(汐留信号所(2代)を駅に格上げ)。
[編集] 運転
都庁前駅~飯田橋駅~両国駅~大門駅~六本木駅~都庁前駅~光が丘駅を往復運転(6の字型運転)する。運転方向の呼び方はJR山手線と同様に内回り・外回りという。朝夕は途中駅での折り返し運転も設定されている。
車両のLED表示は、環状部では「○○経由」と「○○行」が交互に表示される。「○○経由」の表示は飯田橋駅・両国駅・大門駅・六本木駅のうち一番近い駅の名前が表示される。なお、都庁前行の飯田橋~都庁前間と光が丘行の麻布十番~都庁前間は「○○方面」の表示はなく、「光が丘」「都庁前」とだけ表示されている。一方、放射部では光が丘行は「光が丘」のみ、都庁前行は「六本木方面」と「大門方面」が交互に表示される。駅においては飯田橋(または春日)・両国・大門・六本木・都庁前のうち近い2つの駅の名前が「○○・○○方面」として表示される。
朝ラッシュ時は最短3分間隔で運転されており、
- 都庁前駅~飯田橋駅~両国駅~清澄白河駅
- 清澄白河駅~大門駅~六本木駅~都庁前駅~光が丘駅
という区間運転列車が多数存在する。これは、清澄白河駅の門前仲町駅寄りから分岐する木場車庫の関係、および清澄白河駅に中線が設置されている関係である。また、清澄白河駅以外にも汐留・新御徒町の両駅に留置線があり、練馬・国立競技場・赤羽橋・牛込神楽坂などの駅に非常用の渡り線が設けられている。この関係で早朝・夜間には、
- 都庁前駅→六本木駅→大門駅→両国駅→飯田橋駅→都庁前駅(朝のみ)
- 汐留駅~大門駅~六本木駅~都庁前駅~光が丘駅
- 都庁前駅~飯田橋駅~新御徒町駅
- 光が丘駅→都庁前駅(夜のみ)
といった区間運転列車が少数ながら存在する。
データイムは全線往復運転が基本であり、62分に10本が運転されている。
また、終日を通して都庁前駅では六本木駅・大門駅方面の列車から飯田橋駅方面の列車へ、および飯田橋駅方面発都庁前駅行の列車から光が丘行列車への乗り継ぎ時間が少なくなるように設定されている。
沿線の花火大会などで臨時列車が設定される事もあるが、こちらは区間運転のみの設定である。毎年8月に開催される東京湾大華火祭では、東武東上線・西武線・小田急線・埼玉高速鉄道線から東京メトロ有楽町線への臨時列車は雨天順延の場合は運転されないが、当線では運転されることになっている。
[編集] 車両
大江戸線開業以前にリニアモーターカー試作車が1986年に試作され、浅草線の馬込車両検修場で試験が行われたが、現在は廃車されて、豊島区の千早フラワー公園内で静態保存されている。
[編集] 駅一覧
全駅東京都に所在。
駅番号 | 駅名 | 接続路線 | 所在地 |
---|---|---|---|
E-28 | 都庁前駅 | 都営地下鉄:○大江戸線(光が丘方面・六本木方面) | 新宿区 |
E-01 | 新宿西口駅 | 東京地下鉄:○丸ノ内線(新宿駅:M-08) 東日本旅客鉄道:中央線(快速)、中央・総武線(各駅停車)、山手線、埼京線、湘南新宿ライン(全て新宿駅) 小田急電鉄:小田原線(新宿駅) 京王電鉄:京王線(新宿駅) 西武鉄道:新宿線(西武新宿駅) |
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E-02 | 東新宿駅 | 東京地下鉄:○副都心線(2008年6月開業予定) | |
E-03 | 若松河田駅 | ||
E-04 | 牛込柳町駅 | ||
E-05 | 牛込神楽坂駅 | ||
E-06 | 飯田橋駅 | 東京地下鉄:○東西線(T-06)、○有楽町線(Y-13)、○南北線(N-10) 東日本旅客鉄道:中央・総武線(各駅停車) |
文京区 |
E-07 | 春日駅 | 都営地下鉄:○三田線(I-12) 東京地下鉄:○丸ノ内線(後楽園駅:M-22)、○南北線(後楽園駅:N-11) |
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E-08 | 本郷三丁目駅 | 東京地下鉄:○丸ノ内線(M-21)(※一旦地上に出る必要がある) | |
E-09 | 上野御徒町駅 | 東京地下鉄:○銀座線(上野広小路駅:G-15)、○日比谷線(仲御徒町駅:H-16)、○千代田線(湯島駅:C-4)※湯島駅とは至近距離だが正式な連絡駅とはされていない。 東日本旅客鉄道:山手線(御徒町駅)、京浜東北線(御徒町駅) |
台東区 |
E-10 | 新御徒町駅 | 首都圏新都市鉄道:つくばエクスプレス線(02) | |
E-11 | 蔵前駅 | 都営地下鉄:○浅草線(A-17)(※乗り換えには地上の道路を歩く必要がある) | |
E-12 | 両国駅 | 東日本旅客鉄道:中央・総武線(各駅停車)(※一旦地上に出る必要がある) | 墨田区 |
E-13 | 森下駅 | 都営地下鉄:○新宿線(S-11) | 江東区 |
E-14 | 清澄白河駅 | 東京地下鉄:○半蔵門線(Z-11) | |
E-15 | 門前仲町駅 | 東京地下鉄:○東西線(T-12) | |
E-16 | 月島駅 | 東京地下鉄:○有楽町線(Y-21) | 中央区 |
E-17 | 勝どき駅 | ||
E-18 | 築地市場駅 | ||
E-19 | 汐留駅 | ゆりかもめ:東京臨海新交通臨海線(U-02) | 港区 |
E-20 | 大門駅 | 都営地下鉄:○浅草線(A-09) 東日本旅客鉄道:山手線(浜松町駅)、京浜東北線(浜松町駅) 東京モノレール:東京モノレール羽田線(モノレール浜松町駅) |
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E-21 | 赤羽橋駅 | ||
E-22 | 麻布十番駅 | 東京地下鉄:○南北線(N-04) | |
E-23 | 六本木駅 | 東京地下鉄:○日比谷線(H-04) | |
E-24 | 青山一丁目駅 | 東京地下鉄:○銀座線(G-04)、○半蔵門線(Z-03) | |
E-25 | 国立競技場駅 | 東日本旅客鉄道:中央線(各駅停車)(千駄ケ谷駅) | 新宿区 |
E-26 | 代々木駅 | 東日本旅客鉄道:中央・総武線(各駅停車)、山手線 | 渋谷区 |
E-27 | 新宿駅 | 都営地下鉄:○新宿線(S-01) 東日本旅客鉄道:中央線(快速)、中央・総武線(各駅停車)、山手線、埼京線、湘南新宿ライン 小田急電鉄:小田原線 京王電鉄:京王線、京王新線 (丸ノ内線の新宿駅とは連絡業務を行っていない。) |
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E-28 | 都庁前駅 | 都営地下鉄:○大江戸線(飯田橋方面) | 新宿区 |
E-29 | 西新宿五丁目駅 | ||
E-30 | 中野坂上駅 | 東京地下鉄:○丸ノ内線(M-06) | 中野区 |
E-31 | 東中野駅 | 東日本旅客鉄道:中央・総武線(各駅停車) | |
E-32 | 中井駅 | 西武鉄道:新宿線 | 新宿区 |
E-33 | 落合南長崎駅 | ||
E-34 | 新江古田駅 | 中野区 | |
E-35 | 練馬駅 | 西武鉄道:池袋線、西武有楽町線、豊島線 | 練馬区 |
E-36 | 豊島園駅 | 西武鉄道:豊島線 | |
E-37 | 練馬春日町駅 | ||
E-38 | 光が丘駅 |
[編集] 連絡線
汐留駅構内から浅草線の新橋駅と大門駅の間辺りまで連絡線がある。これは大江戸線の車両を馬込車両検修場まで移送するためである。そのため大江戸線の車両にはワイパーが付いている。但し、これは地上線を通るためだけではなく、地下線内の漏水対策上や車体洗浄機を通過するのに必要な装備でもある。
しかし、リニアモータ式ではない浅草線内を自走することができないという理由から、2005年春に川崎重工から出場した地下鉄史上初の電気機関車であるE5000形によって牽引されることになっている。この回送は大江戸線と浅草線内の営業時間帯にも行われる。現在のところ、回送ダイヤは深夜の終電前などを計画している。
[編集] 将来の計画
- 2007年2月15日の都議会一般質問において、松澤俊夫交通局長が車両の増強や信号システムの改良による列車の増発を検討していることを明らかにした。
- 光が丘駅から先には、大泉学園町を経由してJR武蔵野線東所沢駅までの延伸構想がある。このうち光が丘駅~大泉学園町間については2000年の運輸政策審議会答申第18号にて「2015年までに整備着手する事が適当である路線」、大泉学園町~東所沢駅間については同じく「今後整備について検討すべき路線」として位置付けられている。また、このまま延長して新座付近から武蔵境、久我山方面を通って都庁前駅に戻る8の字形の路線にして、山手線と同じ環状運用にするとの構想がある。
[編集] 出典
- ^ 各駅乗降人員一覧(東京都交通局)
- ^ 大江戸線環状部及び三田線延伸部の事後評価の結果について(東京都交通局)