大阪市営地下鉄今里筋線
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今里筋線(いまざとすじせん)は、大阪府大阪市東淀川区の井高野駅から東成区の今里駅までを結ぶ大阪市営地下鉄の路線。正式名称は高速電気軌道第8号線、大阪市交通局では大阪市高速鉄道第8号線と称している。2006年(平成18年)12月24日に開業した。
ラインカラーは暖さをイメージした柑子色(ゴールデンオレンジ、マンセル記号5YR6.5/14)である。
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[編集] 路線データ
- 路線距離(実キロ):11.9km
- 軌間:1435mm
- 駅数:11駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500V・架空電車線方式)
- 閉塞方式:車内信号式 (CS-ATC, TASC)
- 最高速度:70km/h
- 編成両数:4両(2006年~)
- ホーム最大編成両数:6両
[編集] 概要
長堀鶴見緑地線と同じく鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄を採用し、ワンマン運転を実施する。駅ホームには大阪市営地下鉄で初となる可動式ホーム柵(車両扉と連動)が設置されている。
淀川を地下トンネルで潜る鉄道路線としてはJR東西線に次ぐ路線である(大阪市営地下鉄としては初)。JR大阪環状線の内側を通らない初の地下鉄路線であり、国道479号(大阪内環状線)、国道163号、国道1号(京阪国道)、今里筋(市道大阪環状線(都市計画道路森小路大和川線))の地下を走り、大阪市東部を南北に縦断して、放射状に延びる地下鉄路線や京阪本線、片町線(学研都市線)などと連絡する。大阪市内完結路線ではなく、太子橋今市駅付近では守口市も通る。沿線は主に住宅地が多い。
建設費は約2,718億円(井高野~今里間)である。今後、今里筋の地下を今里から湯里六丁目まで延伸することが計画されており、この場合の事業費は約1,320億円と見積もられている(詳細は後述)。
建設費を圧縮するために設計が極力共通化されている。ホームのデザインも共通化されている部分が多く、長堀鶴見緑地線が各駅ごとに異なる装飾を施しているのとは対照的である。
今里筋線単独駅の改札、あるいは既存駅で今里筋線に関して新設された改札には、上部に現時刻・発車時刻・列車接近を案内するモニターが備えられている。ホームにも同様のものがあるが、発車時刻は表示されない。
今里筋線開通にともない、関目成育駅~今里駅の地上を走る大阪市営バスが大幅減便されたが、今里筋線の駅間隔が比較的広いことから、地上を走るバスの需要も残っている(1時間に2~3本程度運行されている)。
[編集] 運行形態
ほとんどの列車が井高野~今里の通しで運転され、朝夕時のみ井高野~清水の区間列車が設定されている。本数は、全線通しの列車が平日はラッシュ時が1時間に11~15本、昼間時が1時間に7~8本(概ね8分毎)、土曜・休日は朝夕時が9~10本、昼間時が7~8本(概ね8分毎)。また、井高野~清水の区間列車は平日で午前7本、午後5本、土曜・休日で午前3本、午後2本運転されている。この他にも、平日のみ清水→今里の区間列車が午前2本運転されている。
清水駅と新森古市駅の間より、鶴見緑地(花博記念公園)へも掘削を行い、車両基地(鶴見緑地北車庫)を建設した。およそ1km先に長堀鶴見緑地線の鶴見緑地駅があるため、この間を接続して同線の工場(鶴見検車場)を共用する。専用の車両工場を持たない他の大阪市営地下鉄の路線としては、千日前線の車両を中央線の森之宮検車場に配置している例がある。
[編集] 車両
- 80系(2006年~)
[編集] 歴史
地下鉄今里筋線が通る今里筋には、1957年からトロリーバスが運行され、大阪市電と連携して大阪市内東部と都心部を結ぶ役割を担っていた。しかしモータリゼーションの進展で自動車交通量が増加したためトロリーバスは1969年には廃止に追い込まれ、代わって市バスがその役割を継承したが、渋滞に悩まされない交通機関として、また放射鉄道路線を補完する鉄道路線として、新たな地下鉄の建設が計画された。
1989年の運輸政策審議会第10号答申で、今後整備を検討すべき路線として上新庄~湯里六丁目間が示された。その後、上新庄までの経路となる国道479号(大阪内環状線)と東海道新幹線との交点(大隈1交差点)の地下構造物が支障することが判明したため、起点を1996年に当時東淀川区内でも住宅開発が進み人口が急増していた井高野に変更、1999年に井高野~今里間の軌道事業特許を受けて翌2000年3月に着工され、2006年12月24日に開業した。残る今里~湯里六丁目間は後述する経緯から事実上凍結となっており未着手である。ちなみに、東淀川区の人口は約18万人(2006年現在)で、大阪市の区では平野区、淀川区に次いで3番目に多い。
※上記のキロ数は実キロ
[編集] 延伸区間の工事着工問題
現在営業運転を行っている井高野駅から今里駅までの区間で事業費が2,718億円かかっており、今里駅から湯里六丁目駅までの延伸を行うと、さらに調査費用や工事建設など1,320億円程度の費用がかかってしまうことから、大阪市の財政負担をさらに増やすことになるため、關淳一大阪市長は2005年11月に実施された市長選挙での公約で、この延伸区間の工事着工を見直すことを掲げていた。
同年11月28日、再選された關市長は今里駅から湯里六丁目駅(東住吉区)の延伸区間について、大阪市の財政面の問題から当初予定していた2006年度中の着工・2016年度の開業の予定を凍結することを決め、少なくとも1年間以上かけて延伸を実施するか否かを判断する予定である。これに伴いこの区間の鉄道事業許可申請も当面延期する。2006年に開通する北半分が採算ベースに乗るような利用状況になれば、南半分の延伸の実施も現実味を帯びて来る可能性があるが、同じく「平成新線」として誕生し市内中心部を通る長堀鶴見緑地線が全通して10年近く経つ2006年時点でも厳しい利用状況となっているため、市内中心部を通らない今里筋線の採算性は極めて低いとされている。さらに、大阪市はそれまでの交通局を公設民営化する方針から急遽転換して『株式上場も視野に入れた完全民営化』する方針を打ち出したため、これが実現した際には延伸はほぼ実現不可能となる公算が極めて高い。
今里筋線は今里駅から南側への延伸のほかに、井高野駅からも阪急京都本線正雀(摂津市・一部吹田市)、JR京都線岸辺(吹田市)、千里丘(摂津市)方面への延伸が考えられている(起点である井高野駅の工事起点がなぜか3.3kmとなっており、井高野駅より北3.3kmの所にちょうど千里丘駅がある)ほか、北大阪急行電鉄江坂、桃山台や万博記念公園(いずれも吹田市)方面への延伸を推す声もある。しかし、南側延伸同様の理由のほかに、大阪市を越境してしまうことから、こちらも延伸は難しいものと見られている。
[編集] 駅一覧
駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
I11 | 井高野駅 | - | 0.0 | 大阪市 | 東淀川区 | |
I12 | 瑞光四丁目駅 (大阪経大前) |
0.9 | 0.9 | |||
I13 | だいどう豊里駅 | 1.0 | 1.9 | |||
I14 | 太子橋今市駅 | 1.7 | 3.6 | 大阪市営地下鉄:■谷町線(T13) | 旭区* | |
I15 | 清水駅 | 1.2 | 4.8 | |||
I16 | 新森古市駅 | 1.0 | 5.8 | |||
I17 | 関目成育駅 | 1.3 | 7.1 | 京阪電気鉄道:京阪本線(関目駅) | 城東区 | |
I18 | 蒲生四丁目駅 | 1.3 | 8.4 | 大阪市営地下鉄:■長堀鶴見緑地線(N23) | ||
I19 | 鴫野駅 | 0.9 | 9.3 | 西日本旅客鉄道:片町線(学研都市線)・大阪外環状線(2012年開業予定) | ||
I20 | 緑橋駅 | 1.3 | 10.6 | 大阪市営地下鉄:■中央線(C20) | 東成区 | |
I21 | 今里駅 | 1.3 | 11.9 | 大阪市営地下鉄:■千日前線(S20) |
- *太子橋今市駅の所在地は大阪市旭区とされているが、駅施設の大部分(今里筋線部分については全体)が隣接する守口市内に設けられている。
- 関目成育駅は国道1号線地下の京阪本線(関目駅付近)と交差する位置にあり、地下埋設物がある関係で、上下線のホームが地下2階と地下4階に分離して配置される。同駅が「関目成育」駅の名称となったのは谷町線に関目高殿駅があり、混同を避けるためである。
[編集] その他
- 2006年11月30日から、既存の大阪市営地下鉄7路線の車両の先頭車の前面に今里筋線の開業を告知するステッカーを貼付していたが2007年2月上旬頃から剥がされ始めた。
- 2007年3月1日、今里筋線の利用率が予想(12万人)の3分の1(3万7000人)であることが判明。
[編集] 関連商品
- 2006年8月26日から80系のBトレインショーティーが発売され、好評のためすぐに完売となったが、12月15日に開業記念商品として再販された。このとき再販された製品には、付属のシールに「井高野」「今里」「清水」が加わっている。