三端子レギュレータ
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三端子レギュレータ(3-Terminal regulator)とは、シリーズレギュレータの中でも端子が三本の物を言う。入力端子(IN)、出力端子(OUT)、共通端子もしくはグラウンド(GND)の三端子から構成される。
通常の用途においては、入力端子と出力端子に発振防止用のセラミックコンデンサ2個を接続するだけ、もしくはさらに電圧設定用の抵抗器などを接続するだけで定電圧回路を構成できる。
有名な物に正電圧レギュレータ7800、負電圧レギュレータ7900シリ-ズが有る。型番の末尾の2桁の数字が出力電圧を表しており、2.6~24V程度の出力電圧の品種がある。単電源回路においては正電圧の7800シリーズが一般的に用いられ、負電圧レギュレータは、オペアンプを用いた回路など一つのトランスで正負二電源を作るときに重用される。
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[編集] 損失
出力する電圧は、必ず入力される電圧よりも低くなる。レギュレータによる電圧降下分があるためであり、通常の回路設計ではこれを考慮して設計する。入出力電圧の差は、7800シリーズで約1.5V以上、LM317,350,338等で3.0V以上が推奨されている。
(入出力電圧の差)×(電流)がそのまま素子からの発熱となるため、大電流、または入出力電圧の差が大きい用途では、放熱器(ヒートシンク)を取り付ける必要がある。 また、三端子レギュレータ自身の消費電力を減らすべく、CMOS化された物が各社で開発中である。
昨今は、Bluetooth、携帯電話、計測用機器など、負荷になる電子機器の低電圧、低消費電力化に併せて、「電源を作り出す三端子レギュレータも、電圧ドロップに伴う損失を減らせるものが欲しい!」という要望が高まり、入出力間の電圧差を1V以下に小さくできる低損失レギュレータ(LDO、ロードロップアウトレギュレータ)の開発が著しい。 これらの用途では、ノイズの影響が無視できない。そのため、殆どスイッチング電源に取って代わられたかと思われがちだが、いまだシリーズレギュレータは健在である。
[編集] 出力電流
出力電流は0.1~5A程度の品種がある。まれに7.5Aもの大電流に対応した物もある。外形はバイポーラトランジスタに類似する。スイッチング電源が安価になったため、以前ほど大電流対応の物は見かけなくなっている。2006年現在では、最大で、1A以下の電流が取り出せる物の開発が盛んである。
[編集] 出力電圧
- 電圧が内部で規定され一定の物(定電圧レギュレータ)
- 可変タイプの物
- LM317(正電圧-最大1.5A)、LM333(負電圧-同3.0A)、LM350(正電圧-同3.0A)、LM338(正電圧-同5.0A)など
- LDOタイプの物
- S-813シリーズ(正電圧)など
- LDOかつ可変電圧の物
- LT1083シリーズ(正電圧)、LM2941(正電圧)、S-1133(正電圧)、LM2991(負電圧)など
ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)や抵抗器による分圧によって、特に可変電圧に対応していない定電圧レギュレータであっても、出力電圧を変更することが可能である。また、定電圧レギュレータを用いて定電流回路を構成することも可能である。
かつては、IN、OUT、GNDの三端子の他、電圧設定用の端子を設けた四端子レギュレータも存在した。しかし、三端子で可変タイプの品種が出現してからは、市場から姿を消している。
特に低消費電力の要求の高いCMOSレギュレータICにおいては三端子のほかに、素子の動作/スタンバイを制御するON/OFF端子が付加されているものが多い。
[編集] 入手
ここにあげたICは大体においてセカンドソースが充実しているので、希望のICが見つからなければ、他社で出している似たような機能のICで代替可能である。
[編集] 歴史
最も古い集積化されたモノリシックレギュレータは、1960年代終りにNational semiconductor社で開発されたLM100である。 このICは当時、同社に在籍していたBob Widlarによって開発された。モノリシックICとしては、オペアンプに次いで古い歴史を持つ。 以降、様々な改良が加えられ、今日に至っている。
[編集] 端子の並び
一般的な7800シリーズ(TO-220型パッケージ)は、左から入力、グラウンド、出力(IGO)の順で並んでいる。しかしTO-92型は左右が逆になっており、7900シリーズでは左からグラウンド、入力、出力(GIO)の順で並んでいる。また、メーカーが独自に開発した品種はこの限りでない場合があるため、使用の際はメーカーの出すデータシートを参照のこと。