仕舞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
仕舞(し-まい)とは能の一部を素で舞うこと。能における略式上演形態の一種。
広義には所謂仕舞と舞囃子を含めたものを指すが、一般的には舞囃子とは異り、囃子を伴わず、舞事・働事などの部分を略した短い素舞を指す。舞囃子が一曲のうちシテの舞がかかわる部分の大半を上演するのに対して、仕舞においては謡のあるシテの舞を抜きだしたもので、場合によっては一曲の能から数番の仕舞が掲出されていることもある。たいていはクセ(舞グセ)およびこれに準ずるもの、キリ、段物などで、型は能のそれを基本とするが、始曲部分や終曲部分は収まりのよいように仕舞独自の型が付され、そのほかの部分でもあて振り的な要素のつよい型はこれを改めて全体的に象徴性をより高くする方向で型付が行われている。
伴奏は地謡のみによって行われ、装束・面は用いず、紋付袴か裃などで演ずる。演者は、本来の指定にかかわらず最初の一句を坐ったまま謡い、次に立ち上って舞い、最後にうち込みと呼ばれる型を行って坐って一曲を終える。謡はほとんどを地謡が取るが、なかには演者との掛け合いになっているものもある。上演にあたっての時間はきわめて短く、平均で十分程度、長くても二十分ほどのものである。主としてシテ方が一人で行うが、なかには「小袖曾我」や「二人静」のように両ジテ的な相舞のもの、「龍虎」「舎利」のようにシテとツレが異なった舞をひとつの舞台で見せるものがあり、このような場合には演者が二人となる(「大蛇」のようにシテとワキの二人で舞う仕舞もある)。また「張良」「羅生門」のようにワキ方の仕舞もあり、狂言方においても小舞として仕舞に似た上演形態がある。