全反射照明蛍光顕微鏡
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全反射照明蛍光顕微鏡、TIRF(Total Internal Reflection Fluorescence)顕微鏡、エバネッセント場顕微鏡とは、カバーガラスなどの全反射面の裏側にトンネル効果によりしみだすエバネッセント光(場)を励起光源とした顕微鏡である。
拡散しない光源が必要なため、光源にはレーザーが用いられる。全反射照明のため油侵対物レンズによる落射照明となり、対物レンズ顕微鏡側の、中心から外れた場所に励起光を入射させる。この光はエバネッセント光と呼ばれる。
エバネッセント光は境界面から指数関数的に減衰するため、励起光として有効なのはその波長程度の数百ナノメートルの領域となる。このため、背景に光ノイズの少ない非常に暗い状態で、カバーガラス近傍の物質を励起することができる。この特徴から、光学顕微鏡の解像度をはるかに超えた、たとえば蛍光分子一個の挙動を観察することも可能である。
この顕微鏡により情報通信研究機構の研究グループが、ATP合成酵素が分子モーターとして回っている様子の可視化に成功している[1]。