公訴
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公訴(こうそ)とは、広義には公益を目的とした訴えをいい、狭義では検察官による国家刑罰権の発動を求める訴えをいう。私人が自己の権利を主張しておこす私訴に対する概念である。公訴を提起することを起訴とよぶ。
これに対して、刑事訴訟法262条所定の手続は準起訴手続ないし付審判の請求と呼ばれる。もっとも、付審判の請求に理由があるとして裁判所が事件を審判に付したときには、その事件について公訴があったとみなされる(刑事訴訟法267条)。
なお、2009年施行予定の検察審査会法改正により、検察審査会が2回起訴相当と議決した場合も準起訴手続と同様の仕組みが導入される予定である。
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[編集] 公訴の提起手続
公訴の提起は、起訴状を提出してする(刑事訴訟法256条1項)。起訴状には被告人の氏名、公訴事実、罪名を記載しなければならない(同2項)。公訴事実は訴因を記載せねばならないとされるが、訴因主義を取ることで、審判や被告人の防御範囲を限定できるメリットがある。また、起訴状に証拠書類などを添付することは許されない(起訴状一本主義と呼ばれる。同6項)裁判官に予断を与えるのを防止するためである。
裁判の迅速化のため、検察官は公訴の提起と同時に略式手続や即決裁判手続の請求を行うこともできる。
[編集] 公訴に関する諸原則
[編集] 起訴独占主義
起訴は検察官のみがなしえるという原則(刑事訴訟法247条)。例外として準起訴手続である付審判の請求の制度がある。
[編集] 起訴便宜主義
検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況(示談の成立など)により訴追(ここでは、起訴と同義)を必要としないときは、公訴を提起しないことができるとする原則(刑事訴訟法248条)。一定の場合に起訴を強制する起訴法定主義に対する概念。
[編集] 起訴状一本主義
公訴提起に際しては起訴状のみを提出し、証拠を提出してはならないとする原則(256条6項)。
[編集] 変更主義
第一審の判決があるまで公訴を取り消すことができる(同法257条、変更主義)。