前野悦輝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
前野 悦輝(まえの よしてる、1957年2月 - )は、日本の物理学者。京都府京都市出身。京都大学教授。専門は固体物理学。日本の物理学者としてはただ1人、Thomson Scientific Research Front Award 2004を受賞した。
量子凝縮相の物理について、新しい物質の生成とその物性開拓をメインとする実験研究を行っている。特に、ルテニウム酸化物(Sr2RuO4)がスピン三重項状態の超伝導体であることをつきとめたことが、最大の業績である。
従来知られていた高温超伝導体はすべてスピン一重項状態のものであり、BCS理論の拡張で説明可能であるとされていた。これに対し、前野らの発見したスピン三重項の超伝導体はまったく異なる物理を示すもので、液体ヘリウム3の超流動状態に類似しているともされる。これにより、低温物理学、強相関電子系物理学における新しい分野が形成された。
本来の研究以外に、エレメンタッチを考案したという点でも有名である。
[編集] 略歴
- 1979年 - 京都大学理学部物理学科を卒業
- 1980年 - カリフォルニア大学サンディエゴ校物理学専攻の修士課程を修了
- 1984年 - 同大学院の博士課程を修了。Ph.Dを取得。
- 1984年 - 広島大学助手に就任。
- 1989年 - 広島大学助教授に就任。
- 1996年 - 京都大学助教授に就任。
- 2000年 - 久保亮五記念賞を受賞。
- 2001年 - 京都大学教授に就任。
- 2002年 - 「ルテニウム酸化物におけるスピン三重項超伝導の発見とその物性解明」の業績により日本IBM科学賞を受賞。
- 2004年 - 「スピン三重項超伝導の発見と物性解明」の業績によりThomson Scientific Research Front Award 2004を受賞。
- 2004年 - 大和エイドリアン賞を受賞。