超伝導
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超伝導 (ちょうでんどう、 Superconductivity) は、超低温環境下である種の物質に生じる現象である。その特徴としては、電気抵抗がゼロになることや、物体内部から磁場が排除される(マイスナー効果)ことなどが挙げられる。工学分野では、超電導と書かれることもある。
超伝導現象が生じる物質のことを超伝導体 (Superconductor) という。特に、液体窒素温度 (-196℃,77K) 以上で超伝導現象を起こすものは高温超伝導体と呼ばれる。 また、超伝導体は磁場に対する応答の違いから第一種超伝導体と第二種超伝導体とに分類できる。
第二種超伝導体では、超伝導体中を磁束量子が格子状に貫通することで超伝導状態と磁場が共存可能になり、磁束が超伝導体中の不純物などに固定される(ピン止め効果)ことによりゼロ抵抗を維持している。いわゆる「磁気浮上」現象ではこの磁束のピン止めが重要な役割を果たす。
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[編集] 概要
1911年、当時、純度の高い金属が容易に得られる水銀を液体ヘリウムで冷却していったとき、温度4.2Kで突然電気抵抗がほぼゼロになることがヘイケ・カメルリング・オネス(オランダ)によって初めて報告された。装置の性能の限界のために抵抗は10-5Ω以下であった。超伝導状態への移り変わりは温度4.2Kで急激に生じており、電気抵抗も絶対零度に向けて漸近的にゼロに近づくというような振る舞いとはまったく異なる。水が氷になるように、まったく新しい相への突入(相転移)であることを意味する。このため超伝導相に移り変わる温度を、(超伝導)転移温度という。超伝導に転移する前の相は常伝導という。
超伝導の電気抵抗は直接測定しては、測定器自体が抵抗となってしまい限界がある。そのため、超伝導体で作った閉回路を流れる電流が作る磁場を測定する。磁場を測定できる限り閉回路に永久電流が流れているといえる。
超伝導発見以降、多くの超伝導を示す元素、物質が発見されている。しかし、アルカリ金属、金・銀・銅などの電気伝導性の高い金属は超伝導にならない。単体の元素で最も超伝導転移温度が高いものは、ニオブの9.2 K(常圧下)である。常圧下において超伝導を示す金属は多いが、そうでない金属、あるいは非金属元素でも高圧下で(非金属の場合は金属化と同時に)超伝導を示すものがある。また、重い電子系における超伝導や、高温超伝導、強磁性と超伝導が共存する物質など従来の超伝導体と性格の異なるものも発見されている。
1933年にヴァルター・マイスナーによって超伝導体が外部磁場を退けるマイスナー効果が発見された。これにより、超伝導体は完全導体と違うことが決定付けられた。1935年にロンドン兄弟が発表したロンドン方程式により、マイスナー効果は理論的に説明された。
1957年に発表されたジョン・バーディーン、レオン・クーパー、ロバート・シュリーファーらのBCS理論により、超伝導現象の基本的なメカニズムが解明された。
超伝導現象は超高感度の磁気測定装置(SQUID)、医療用(MRI)を含む各種の磁気共鳴用の超伝導電磁石など既に重要な応用分野を持っているが、現在でも超伝導状態を維持するための冷却剤としては主に製造・供給が高コストである液体ヘリウムが用いられており、広汎かつ大規模な応用への障害になっている。そのため、より高温で超伝導を起こす物質を探索することを中心に、発見から100年近くを経た現在も超伝導についての研究が盛んに行なわれている。
また、1980年代に発見された銅酸化物高温超伝導体や、その後今世紀になって見つかった二ホウ化マグネシウム(MgB2)を実用化する試みが続いている。
[編集] 超伝導の特徴
[編集] 主な5つの特徴
- 完全導電性
- 電気抵抗がゼロのため、一度流し始めた電流が永続する。電圧降下なしに直流電流が流れる。超伝導が初めて発見された性質である。
- マイスナー効果(完全反磁性)
- 超伝導体内部から磁場を排除して内部磁場をゼロにする。超伝導体の上に磁石が浮くのはマイスナー効果のためである。(マイスナー効果を参照のこと。)
- 磁束の量子化
- 超伝導体内部を通る磁束は h/2e の整数倍(h はプランク定数、e は素電荷)のとびとびの値をとる。
- ジョセフソン効果
- 絶縁体を間に挟んだ2つの超伝導体間を、電圧降下なしにトンネル電流が流れる。2つの超伝導体の間に挟まれた絶縁体には超伝導状態を表す波動関数の位相差に比例した電流が流れる。ミクロな波動関数という概念をマクロに観測できるという点で、超伝導現象をもっとも象徴する特徴といえよう。(ジョセフソン効果を参照のこと。)
- ピン止め効果
- 磁束格子状態において、外部磁場の変化に対して磁束格子が追随して変化しない現象をピン止め、あるいはピン止め効果と呼ぶ。強磁場を発生する超伝導マグネットの実用研究において重要な研究対象である。ひずみや不純物などの欠陥を多く含む非理想的な第二種超伝導体を貫く磁束は、これらの欠陥に引っかかり止められて動けない。(ピン止め効果を参照のこと。)
[編集] その他
- 磁束格子状態
- 第二種超伝導体では、その超伝導体に固有の磁場値(下部臨界磁場)以上の磁場を印加した場合、量子化した磁束が超伝導体内部に侵入する。混合状態とも呼ばれる。このとき磁束コア同士は互いに反発するため、多くの場合、最密構造つまり三角格子を形成する。ただしフェルミ面の形状などの寄与によっては四角格子を組む場合もあることが最近の研究から知られている。
- 臨界磁場の存在
- 一般的に磁場を印加することで超伝導状態は消失する。第二種超伝導体には、この意味での臨界磁場(上部臨界磁場Hc2と呼ぶ)と完全反磁性状態から磁束格子状態への転移を意味する下部臨界磁場Hc1が存在する。(臨界磁場を参照のこと。)
- 比熱の異常
- 超伝導への相転移は二次の相転移で、比熱に常伝導状態‐超伝導状態の間で“とび”が存在する。
- エネルギーギャップの存在(→BCS理論)
- 同位体効果
[編集] 超伝導現象を説明する理論
[編集] 応用
- 超伝導電磁石
- 超伝導量子干渉計(SQUID)
- ジョセフソン・コンピューター
- 磁気推進船
- 核融合炉(超高温プラズマを閉じこめる)
- 超伝導トランジスタ
- 超伝導ケーブル
- 磁気シールド装置
- 超伝導同期電動機
- 超伝導カメラフィルム
- 超伝導磁気エネルギー貯蔵装置