効果意思
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効果意思(こうかいし)とは、民法学の用語であり、法律効果を発生させようという意思をいう。大ざっぱにいえば、世の中に存在する権利や法律関係を変動させる効力(法律効果)を認められた行為(法律行為)をしようとする意思をいう。
伝統的な意思表示理論は、ある動機(例えば「ヨン様のグッズが欲しい」)から効果意思(例えば「ヨン様のブロマイド写真を買おう」)が発生し、表示意思(例えば「目の前にいる雑貨屋さんの店員に『ヨン様のブロマイド写真、このお店にある全種類売って』って言おう」)に基づいて効果意思を外部に表明する(表示行為。例えば「すみませーん、ここのお店のヨン様のブロマイド写真、全種類くださーい」)という段階を踏んで、意思表示が完成するとしてきた。
伝統的な見解は、意思表示による法律効果の発生、平たくいえば契約に拘束されること(法的責任の発生)の根拠を効果意思の存在に置いており、人間は合理的意思に規律されて行為するという近代的人間観を背景とするものといえる。そこで、伝統的見解を徹底すれば、効果意思が欠ければ意思表示は成立しないと考えるのが自然(意思主義)である。
しかし、このような考え方を貫けば、例えば、不心得者が契約に基づく義務を免れようとして「契約書の記載事項をよく読まないで署名した」などと主張したときに、それだけで契約の効力を否定せざるを得ないといった事態が生じ、取引の安全を害することになる。そこで、現在では、当事者双方の表示行為による表現そのものを客観的に観察して、そこに表現されていると見られる意思が合致していれば、内心の意思がどうあれ、契約(意思表示)自体は成立するとする、表示主義の考え方が優勢となっている。