反強磁性
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反強磁性(Antiferromagnetism)とは、隣り合うスピンがそれぞれ反対方向を向いて整列し、全体として磁気モーメントを持たない物質の磁性を指す。本質的な原理は強磁性と同じであり、磁性イオン間の交換積分が負である場合、交換相互作用はスピンが互いに逆向きになるように作用し、反強磁性を示すことになる。代表的な物質としては、絶縁体では酸化マンガン(MnO)や酸化ニッケル(NiO)、金属ではクロム(Cr)などが挙げられる。
強磁性体と同様に、反強磁性もその性質を示すのは低温に限られる。ある温度以上になるとスピンはそれぞれ無秩序な方向を向いて整列しなくなり、物質は常磁性を示すようになる。この転移温度を、ネール温度(Néel Temperature)と呼ぶ。
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[編集] 広義の反強磁性
上記の説明は典型的な反強磁性体について述べている。いくつかの物質においては、より複雑なスピン配列が形成されている。全体として磁気モーメントを持たないという点で、これらも広義の反強磁性体と位置づけられている。
- マンガン
- 常温安定相であるα-マンガンは単位胞あたり58個の原子を含む複雑な立方晶であり、原子の位置により4種類の異なるスピンを持っていると考えられている(詳細はいまだ明らかになっていない)。
- クロム
- 体心立方構造の頂点位置と体心位置のスピンが反対方向を向いているだけでなく、スピンの大きさが単位胞ごとに正弦関数的に変化している。
- ランタノイド元素
- ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウムにおいて、隣り合うスピンが0度(平行)と180度(反平行)の中間の角度をとる構造が観察されている。これをらせん磁性と呼ぶ。
また、フェリ磁性は全体として磁気モーメントを持つために強磁性の一種と位置づけられているが、スピン配列からみるとむしろ反強磁性の変形である。
[編集] 用途
- スピンデバイスに於けるスピンバルブのピン層として用い、磁化の方向を固定する
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[編集] 参考文献
『磁気工学の基礎 I』太田敬三・著 共立出版 1973年 ISBN 4-320-00200-8
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