口蹄疫
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口蹄疫(こうていえき、Foot-and-mouth disease)は、家畜の伝染病のひとつ。偶蹄類(牛、水牛、山羊、羊、鹿、豚、猪など)が感染するウイルス性の急性伝染病。
家畜伝染病予防法によって指定されている家畜伝染病である(牛、羊、山羊、豚が対象)。
[編集] 感染・経過
この病気は、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)アフトウイルス属(Aphtovirus)の口蹄疫ウイルス(foot-and-mouth disease virus, FMDV)によって発生する。ただ単に「アフトウイルス」と言ったら口蹄疫ウイルスを指す。また、ラブドウイルス科(Rhabdovirideae)ベシクロウイルス属(Vesiculovirus)の水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus, VSV)もこれに酷似した症状を示し、ときに口蹄疫として扱われることがある。
一般的には、感染すると発熱、元気消失、多量のよだれなどがみられ、舌や口中、蹄の付け根などの部位に水疱が形成され、それが破れて傷口になる。(但し、水疱が形成されないケースも報告されている。) 患畜がウイルスの感染そのもので死亡する率は低いが、水疱が破れた際の傷の痛み(細菌によるその後の二次感染も含む)で摂食や歩行が阻害され、体力を消耗する。それによって乳収量や産肉量が減少するため、畜産業に対して大きな打撃となる。また、家畜の伝染病の中では最も伝染力の強い疾病でもある。日本でも2000年春、92年ぶりに宮崎県と北海道で発生が見られている。
人には感染しない。また患畜の乳や肉を摂取しても人に影響はない。
[編集] 治療
致命的な病気ではないが、偶蹄類が感染する伝染病の中でも最も伝染力が強く、蔓延すれば畜産業界に経済的な大打撃を与えかねない疾病でもあるため、患畜として確認され次第、家畜伝染病予防法に基づいて全て速やかに屠殺される。本疾病に対して治療が選択されることは基本的に無い。
なお、屠殺については、狂犬病の様な第17条第1項による都道府県知事の権限ではなく、第16条第1項に基づく家畜保健衛生所の家畜防疫員の指示により、患畜と確認され次第直ちに行う。この指示書についても第17条第1項にに基づく『殺処分命令書』ではなく、第16条に基づく『と殺指示書』という形式で発せられる(命令の内容および効力に事実上差は無い)。