司法行政権
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司法行政権(しほうぎょうせいけん)とは、司法権を行使する機関の設営・管理の行政作用を行う権限である。司法行政権に基づいて行使される行政作用を、司法行政という。
通常、司法権を行使するのは裁判所であるため、裁判所に係る行政作用の行使権限と同じ意味である。その内容としては、裁判官その他の裁判所職員の任免・配置・監督、庁舎の管理、会計経理など、裁判所運営上の人的物的両側面に及ぶ。
[編集] 日本国憲法下での司法行政権
日本国憲法では、司法の独立を保障するため、司法行政権の多くは裁判所が有する。裁判所が有する司法行政権は、原則として裁判官会議の議により行われる。司法行政の最高監督者は、最高裁判所である(裁判所法80条)。もっとも、司法行政権の行使により、個々の裁判所・裁判官の裁判権行使に影響を与えることはできないとされている。
裁判官会議の議により行われる裁判所運営を補佐するため、最高裁判所には事務総局、下級裁判所には事務局が置かれている。最高裁判所の事務総局や高等裁判所の事務局の要職は裁判官によって占められており、裁判所内の出世コースに乗る裁判官の少なくない者がここで司法行政に携わる経験をもつ機会を与えられる。第11代最高裁判所長官の矢口洪一は任官以来そのキャリアの大半を司法行政部門の役職で積み重ねてきた裁判官で、そのためにミスター司法行政と呼ばれた。
[編集] 大日本帝国憲法下での司法行政権
大日本帝国憲法下においても司法の独立は尊重すべきものとされたが、大審院及び裁判所は司法行政権を有さず、行政官庁である司法省が有していた。このため、戦前には司法行政権(特に裁判官の人事権など)を利用した「行政府による司法介入」が公然・非公然に行われていたともいわれている。
[編集] 参考文献
- 山本祐司『最高裁物語』(講談社(講談社+α文庫)、1997年)