合同会社
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合同会社(ごうどうがいしゃ)とは、日本国の平成18年(2006年)商法改正、それに伴う商法第二編の分離・増補改定において新たに設けられた新法「会社法」(平成17年(2005年)7月26日公布、平成18年(2006年)5月1日施行)を根拠に新たに設けられた会社形態である。
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[編集] 概要
平成18年(2006年)4月30日以前、日本国における会社組織は商法第二編に規定される株式会社・合名会社・合資会社及び有限会社法に規定される有限会社の4種類であった。これらのうち、株式会社・有限会社を物的会社、合名会社・合資会社を人的会社という概念がある。これは株式会社・有限会社の出資者が、会社の債務に対しその責任を出資の範囲にのみ責を負う(物的責任)点と、合名会社の社員(=出資者)及び合資会社の無限責任社員が会社の債務に対し、無制限・無条件に責任を負う(人的責任)というところに着目している。
合同会社の社員はすべて会社債務に対し有限責任とされ、人的会社でありつつ、社員の有限責任が確保されている点が、合名・合資形態とは異なっている。 なお、新会社法においては、旧来の株式会社及び有限会社に相当する会社を株式会社として、合名会社と合資会社と合同会社を持分会社として規定している。 会社運営の自治においては旧来の合名会社等と同等に組合的な幅広い自治が認められている。 これはアメリカ合衆国及びイギリスにおける法人形態であるLLCを参考にしている。 以上のことから会社法施行により新規設立が認められなくなる有限会社に代わり、有限責任の小規模法人として今後多く設立されることが見込まれる会社形態である。ただし、日本の場合はパス・スルー課税が認められなかった。
[編集] 特徴
なお、他の会社形態と比較した合同会社の特徴は以下の通りである。
[編集] 持分会社としての特徴
以下の点は持分会社の特徴である。したがって合名会社・合資会社と共通する。
- 各社員が個性を有する人的会社である。法人ではあっても内部関係は組合的規律に従う。(⇔株式会社、旧有限会社)
- 定款変更は原則として全社員の一致を要する。(637条)(⇔株式会社では非公開会社でも株主総会の特別決議で足りる。旧有限会社とも異なる)
- 社員の入社、持分の譲渡の承認は原則として全社員の一致を要する。(604条第2項、637条、585条第1項)(⇔株式会社では非公開会社でも株主総会の決議で足りる。旧有限会社とも異なる)
- 業務執行権は原則として全社員が有する。(590条第1項)(機関設計が自由であり、利益分配、議決権分配も、出資割合とは切離して自由に認められる。(⇔非公開会社たる株式会社、機関設計は自由だが株主平等原則あり、旧有限会社とも異なる)
[編集] 合同会社として固有の特徴
以下の点は、合名会社・合資会社とは異なる性格である。
- 社員の全部は有限責任社員であり(会社法576条第4項)、また社員は間接有限責任のみを負う。(580条第2項)(=株式会社、旧有限会社)
- 各社員は出資義務を負う。信用や労務の出資は認められない。全額払い込みを要する。(578条)(=株式会社、旧有限会社)
- 退社に際しては、持分の払い戻しは認められない。(632条第1項)(=株式会社、旧有限会社)
以上、「持分会社としての特徴」を鑑みると、合同会社は、基本的には非公開の株式会社よりもさらに閉鎖性を有している。反面「合同会社として固有の特徴」をみると、株式会社の特徴をもふまえた会社形態だと言える。新会社法の趣旨として、一方で旧有限会社のうち閉鎖性の高いものを合同会社(人的会社)とし、他方で、閉鎖性の低いものを株式会社(物的会社)として整理をさせようとしていると思われる。