品種改良
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品種改良(ひんしゅかいりょう)とは、栽培植物や家畜などにおいて、より人間に有用な品種を作り出すこと。具体的な手法としては、人為的な選択、交雑、突然変異を発生させる手法などを用いる。
公的な農業試験場や畜産試験場などで進められているほか、穀物メジャーなどに代表される民間企業もビジネスとして参入している。
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[編集] 前史
人間が人為的に育成し、利用する動物や植物は多様であり、動物では家畜、植物では穀物や野菜など、多くのものがあるが、たいていは野生のものとは大きく形を異にしている。これは、一般に家畜化といわれる変化である部分もあるが、人間がその育成の過程で、無自覚に品種改良を行なって来たからでもある。家畜にしても栽培植物にしても、その歴史は数千年に渡るといわれるが、おそらくはその間に、より人間に有利な特徴のあるものを選び、それを優先して育てることがあったと思われる。小麦等については、数種の原種の間に生じた雑種であることが確かめられているから、恐らくその間に偶然に生じた雑種を、特に選んで育てた経過があったはずである。
より近年になると、このような過程は意識されるようになり、目的を持って品種改良が行なわれるようになった。そのための基礎知識として遺伝の法則が追及され、メンデルの法則の発見などにも、このような要求がその背景にあった。
[編集] 植物
穀物の場合、多収穫、耐病性、食味の向上などの性質を向上させる目的で品種改良が行われる。イネ、ムギ、トウモロコシ、イモ類などで盛んに改良が進められている。
[編集] 動物
家畜の場合、競走能力の向上、肉質などの性質を向上させる目的で品種改良が行われる。競走馬、肉牛などで盛んに改良が進められている。例えばサラブレッドの場合、原種の一つであるアラブ種と比較し走力が大幅に強化されている。アラブ限定のドバイカハイラクラシック(ダート2000m)の走破タイムは2分15秒ほどであるが、同日同条件で行われるサラブレッド限定のドバイワールドカップは2分前後と速くなっている。さらに、ごく短い距離ならば時速80kmを出すことも馬によっては可能だという(他に体高で約15cm、体重で約25%増加するなど体型にも変化が見られる)。これらの改良は初期にはイギリスで、後には世界各地で合計300年以上をかけ行われ、現在も競馬を通じて改良が続けられている。
ペットの場合、外見や性格などの性質を向上させる目的で品種改良が行われる。イヌ、ネコなどで盛んに改良が進められている。
生物的防除を目的とした生物農薬に用いる昆虫類なども改良の対象となることがある。