因数分解
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因数分解(いんすうぶんかい)とは、数学において整式をいくつかの整式の積で表す方法の事である。展開の逆演算にあたる。因数分解がなされた時に、それぞれの整式を因数と呼ぶ。
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[編集] 概要
代数学の基本定理にもつながる因数分解は、方程式や関数について考える上で重要な演算の一つである。たとえば次のように左辺を右辺へ変形する事をさす。(右辺を左辺へ変形する事を展開という。)
- 1. x2 − 3x + 2 = (x − 1)(x − 2)
- 2. t3 − t2 − 3t + 3 = (t − 1)(t2 − 3)
- 3. α3 − 1 = (α − 1)(α2 + α + 1)
これらの例では、1. で x − 1 と x − 2 を、2. で t − 1 と t2 − 3 を、3. で α − 1 と α2 + α + 1 を、それぞれ因数と呼ぶ。
数の範囲が異なると因数分解の結果が変わってくる。上の3例はすべて有理数(もしくは整数)の範囲で因数分解を行なったものである。係数と定数項が整数であるという事を指す。数の範囲を実数まで広げると、2. は更に因数分解が行なえる。
- 2-a.
さらに数の範囲を複素数(もしくは虚数)まで広げると、3. は更に因数分解が行なえる。
- 3-a.
どのような1元代数方程式 f(x) = 0 であっても、 f(x) を因数分解が出来ればその解を求める事が出来る。しかし一般に、整式を因数分解することは展開と違って易しくない。ちょうど整数を素数の積に素因数分解する事が易しくない事に対応する。
[編集] 方法
因数分解を行なう方法がいくつかある。日本の中学校・高等学校の数学で学ぶ方法のうち易しいものをいくつか挙げる。
[編集] 共通因数でくくる
- 全ての項に共通している因数でくくり出す。
- たとえば 2x5 − 5x4 = x4(2x − 5) 。
[編集] 解の公式の利用
- たとえば2次方程式の解の公式で、ax2 + bx + c = 0 の解を と求めた場合には、 と因数分解される。
- たとえば x2 − x − 2 を因数分解することを考える。 x2 − x − 2 = 0 の解は である。そこで x2 − x − 2 = (x − 2){x − ( − 1)} = (x − 2)(x + 1) という因数分解の結果を得る。
[編集] 因数定理の利用
- たとえば 2x4 − 5x3 − 8x2 + 17x − 6 を因数分解する事を考える。この式に x = 1 を代入すると となるので、x − 1 が因数の1つであることが分かる。元の式を x − 1 で除算して、2x4 − 5x3 − 8x2 + 17x − 6 = (x − 1)(2x3 − 3x2 − 11x + 6) となる。
- この方法で求めた1次の因数以外の因数(この例では 2x3 − 3x2 − 11x + 6 )は、それなりの方法で更に因数分解できるかもしれない。この例では x = − 2 を代入すると 0 になるので x + 2 も因数だと分かる。
[編集] 2数の和と積
- (x − α)(x − β) = x2 − (α + β)x + αβ という展開を逆向きに使う。x の項の係数と定数項から2数を見つける方法である。(根と係数の関係を参照。)
- たとえば x2 − 5x + 6 を因数分解する事を考える。x の項の係数が − 5 で定数項が 6 なので、和が 5 で積が 6 となる2数を探す。2 と 3 である事が分かるので、x2 − 5x + 6 = (x − 2)(x − 3) という因数分解の結果を得る。
[編集] たすきがけ
- 2次式を因数分解するときに用いられるたすきがけとよばれる方法がある。途中計算に引くバツ印の線をたすきの背中側から見た姿になぞらえた名前である。x2 の項の係数の正の約数と定数項の約数を組み合わせて x の項の係数を作る。
- たとえば 6x2 + x − 2 を因数分解する事を考える。x2 の項の係数 6 の正の約数と定数項 − 2 の約数の組み合わせのうち、次のような組み合わせを選ぶ。
- この計算で得られた 4 と − 3 の和が x の項の係数と等しいので、 の上の行と下の行の数を使って 6x2 + x − 2 = (3x + 2)(2x − 1) という因数分解の結果を得る。
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