土葬
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土葬(どそう)は、遺体を葬るための処理の一つ。
人が死ぬといろいろな事情から遺骸を見えなくする必要がある。それが「葬る」という行為である。通称「大化薄葬令」(『日本書紀』大化二年(646)三月条)では、「葬は蔵(かく)すなり、人の見ること得ざらんことを欲す」という『礼記』檀弓上に基づく『魏志』「文帝紀」(黄初3年(222年)条)の記述を引用している。人類は石器時代から人の死に際して様々な「葬」をおこなっっているが、その一つに死者をかくすために土に穴を掘って埋める方法がある。これが土葬である。
日本においては明治維新政府は廃仏毀釈を徹底させるため、仏式葬法としての火葬に反対した神道派の主張を受入れ、1873(明治6)年7月18日太政官布告による火葬禁止令を出したが、都市部での土葬スペース不足という現実には逆らえず、1875年5月23日に火葬禁止令解除に追い込まれる。それでも昭和初期のころまで土葬は、火葬場が現在のようにまだ整備されていなかったこともあり、一般的に行われていた埋葬形態だった。 葬儀が終わって棺を閉めると、組内のものが墓場まで担ぎ、墓穴に埋葬した(葬式組)。なお、地方によって方法や風習などがは様々であることに留意すべきである。
棺桶の形態は様々で、文字通り「桶」に入れる地方もあれば、平棺(長方形の棺)に入れる地方もある。また、棺のことを「がん箱」と呼ぶところもある。棺桶の担ぎ手になるものは予め決められているが、地域によっては身内に妊婦がいるものは生まれてくる子に縁起が悪いと言われ、役を免除されることもあった。銭撒きと言われる風習も有り、庭や墓穴にお金を撒くこともあった。
遺体の入れ方も膝を抱えるように入れる普通の埋葬法だけではなく、頭を下にしたり、骨を折って埋めるやり方もあった。これらは死者が生き返らないようにするための呪術的な意味合いを持つ。同様に、墓石にも土葬にした死者が生き返って迷い出てこないようにとの意味が込められていた。埋葬から何年かのちに、墓を掘り起こし、骨を骨壷に入れたりするところもある。
東京都や大阪府など、条例(東京の場合は「墓地等の構造設備及び管理の基準等に関する条例施行規則」)によって土葬を禁じられている市町村があるが、法律上は火葬も土葬も平等に扱われている(感染症の病原体に汚染された/その疑いがある場合を除く→感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第30条)。