埋没費用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
埋没費用(まいぼつひよう)ないしサンク・コスト (sunk cost) とは、事業に投下した資金のうち、事業の撤退・縮小を行ったとしても回収できない費用をいう。
初期投資が大きく、他に転用ができない事業ほど埋没費用は大きくなるため、投資も新規企業の参入も慎重になる。このことにより、埋没費用の多寡が参入障壁の高さを決める要因の1つであることは寡占論の定説となっている。
これに対しウィリアム・ボーモルは1982年に、逆に埋没費用がゼロならば、競争の潜在的可能性が高いために、たとえ独占であっても参入可能性が価格を正常に維持するというコンテスタビリティ理論を提示し、1980年代以後のアメリカの航空輸送産業やトラック輸送産業における規制緩和の流れを作り出した。
[編集] 例
ある映画のチケットが\1200であり、このチケットを紛失してしまったとする。このとき、かりにその映画を見るために\1500払ってもいいと思っているならば、再度チケットを購入するべきである。なぜなら映画を見ない場合には紛失したチケット代\1200を失うだけであるが、映画を見た場合は紛失したチケット代\1200+再度購入したチケット代\1200を失う代わりに映画(\1500)を見ることができるからである。この場合の紛失したチケット代\1200は回収できない費用として埋没費用となる。
[編集] 参考文献
- Sutton, J. Sunk Costs and Market Structure. The MIT Press, Cambridge, Massachusetts, 1991.