士林派
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士林派（しりんは, 韓國語:사림파）は、李氏朝鮮の党派の一つ。世祖の功臣である勲旧派、戚臣（外戚）との対比で使われる事が多い。
元々は、朱子学を修めた新興の科挙官僚で、大地主が中心の旧勲派に比べて、中小の在地両班がその中核を占めた。そのため朝鮮朱子学の発展原理である、朝鮮性理学が政治力学の根本にあった。初期の士林派も朱子学者金宗直とその門徒達が中核を成していた。
1470年、成宗時代の亀城君事件により、王族の政治への関与が禁止されると、勲旧派と戚臣が主要な政職に着いてしまうため、成宗は新興官僚である士林派を積極的に登用することで、勲旧派達を牽制し、政治バランスを取るようにしていった。
しかしながら急進してきた士林派勢力に旧勢力は脅威を感じ、成宗の後に即位した燕山君の時代に入ると巻き返しを図った。それは士禍と言う形で現れる。
1498年、金宗直の書いた世祖の王位纂奪批判の書面が引き金となって、多くの士林派を死刑や流罪にした（戊午士禍）。また、燕山君の異常な性格にからんで、1504年には生母毒殺の件に絡んで士林派と旧勲派数十人を処刑した（甲子士禍）。しかしながら燕山君は、暴虐と贅沢の限りを尽くした末、1506年のクーデターによって王位を剥奪されてしまう。
その後、即位した中宗は朝廷での指導権を握るに至らず、即位に貢献した功臣、旧勲派、戚臣が勢力を抑えてしまう。1510年頃には功臣勢力の勢いも弱まってきたので、中宗は1515年、新士林派勢力の趙光祖を登用し、旧勲派に対抗した。しかしながら趙光祖は、あまりにも過激な改革を行ったために失敗に終わり、旧勲派によって1519年趙光祖などの新士林派勢力の多くは死刑・流刑にされてしまう（己卯士禍）。そして、1521年には、己卯士禍の余波で残った士林派の多くも粛清されてしまい、その後諸派入り乱れた政局混乱状態に陥ってしまう。
中宗が亡くなり仁宗が1544年に即位すると、士林派の名誉回復が行われたが、翌年亡くなったためその志は遂げられぬまま終わった。仁宗が死ぬと明宗が立ったが、11歳で即位したためその後継者の座を争って激しい派閥争いが繰り広げられた。外戚で文定王后(中宗の3番目の妃)の弟である尹元衡が権力を握ると反対勢力の粛清を始め、それに多くの士林派も巻き込まれた（乙巳士禍）。
明宗の時代は外戚による専横が行われたが、1567年明宗が33歳で亡くなると嫡子が居ないため、中宗の孫である宣祖が即位した。宣祖により、外戚勢力は一掃され、士林派が政権を担うことになる。
しかし1575年に士林派は分裂、以後西人と東人に分かれ激しく対立していく朋党政治が繰り広げられる事になる。
1591年には東人が政権を握るが、北人と南人に分裂してしまう。北人も大北と小北に分裂し、1608年光海君擁立で大北が政権を握ったため、南人と西人が協力してこれに対抗した。小北は少数党派として存続する。1623年、西人と仁祖のクーデターにより大北が失脚すると西人が主導権を握り、南人と調和した比較的安定した時代が続く。しかし、1659年で、西人の勢力が増強すると南人を排除し始めたが、1674年の甲寅礼訴で、西人は粛清され、南人が政権を握る。
1680年、南人の専横に歯止めをかけたい粛宗が南人を大量に追放し（庚申換局）、西人は政局に復帰する。しかし、その過程で西人は粛宗の外戚に対し批判的な少論と、妥協的な老論に分裂してしまう。粛宗の時代は、南人と西人の勢力を交互に入れ替える換局政治が行われていた。1694年には、少論が主導権を握り、1701年以降は、老論と少論主導による政治が行われる。この期間は、南人は少数勢力に成ってしまい。西人の少論と老論が交互に政局を担っていた。1729年、英祖は、少論・老論・南人・小北を均等に採用する蕩平政治を行い、党争を押さえ込もうとしたが、英祖の晩年には、1762年の躁鬱の気の有った荘献世子を餓死に追い込んだ壬午事件を巡って、荘献世子の排斥に肯定的な、老論を中心とした僻派と排斥に反対を唱える南人・少論を中心にした時派に大きく分裂、各党派内でも大きな分裂が生じた。更に西洋から伝来したのカトリックの受容を巡って、僻派を中心としたカトリック排斥派の功西派と時派を中心とした受容派の信西派の間で対立が生じた。結果的に排斥派の勝利に終わり1791年には、最初のキリスト教の弾圧が行われ、信西派の多い南人は大きく勢力を落とした。
荘献世子の子正祖が王位に立つと、これらの勢力の対立を縫って、正祖擁立に功績の有った洪国栄による権勢政治が始まり、士林勢力は大きく削がれた。しかし1780年に洪国栄は、王妃暗殺未遂事件により追放され、政権は士林派の手に戻った。
1800年、正祖が亡くなり、純祖が即位するとキリスト教の大弾圧が行われ、信西派の多い、時派の南人・少論は壊滅状態になりわずかに老論僻派のみが残る状態になった。さらに、1804年、生き残った時派勢力の一人でもあった外戚の金祖淳が、老論勢力を追放し、自らの本貫の安東金氏ばかりを登用した権勢政治を始め、以後60数年に渡り、特定の一族が政治を独占する時代が続き、士林勢力は消滅する。
