対偶
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[編集] 論理における対偶
命題「AならばB」の対偶は「BでないならAでない」である。 論理記号を用いて説明すると、命題「A ⇒ B」の対偶は「¬B⇒ ¬A」。 ただし、¬A は命題 A の否定である。
通常の数学では、命題「AならばB」の真偽とその対偶「BでないならAでない」の真偽は必ず一致する。
数学では、元の命題「AならばB」を証明することが難しくても、その対偶「BでないならAでない」を証明することは比較的易しい場合がある。 「AならばB」と「BでないならAでない」の真偽は一致するので、このようなときには対偶「BでないならAでない」のほうを証明する事で、「AならばB」を証明できる。
[編集] 関連概念
命題「AならばB」に対し、
- 対偶:「BでないならAでない」
- 逆:「BならばA」
- 裏:「AでないならBでない」
対偶の場合とは異なり、元の命題「AならばB」が正しくとも逆や裏は必ずしも正しいとは限らない(逆は必ずしも真ならず)。 しかし、逆命題「BならばA」の対偶は「AならばB」の裏「AでないならBでない」と一致するので、 逆「BならばA」と裏「AでないならBでない」の真偽は必ず一致する。
[編集] 直観主義論理
上の議論では、通常の数学における状況、すなわち全ての命題が「正しい」、「間違っている」のどちらかに分類される状況を仮定していた。 しかし、通常の数学と違い、「正しい」、「間違っている」の他に「どちらともいえない」、「どちらなのか分からない」といった中間的な状況を認めた場合(直観主義論理)には、必ずしも「AならばB」とその対偶の真偽は一致しない。
この場合には「BでないならAでない」から「AならばB」を結論づける事はできないのである。 なお、このような状況であっても「AならばB」から「BでないならAでない」を結論づける事はできる。
[編集] 関連項目
[編集] 機械工学における対偶
機械工学における対偶(たいぐう:pair)はある機械要素を二つ組み合わせのことを言う。対偶には以下のようないくつかの種類がある。
点対偶は機械要素の接触が点となる対偶のことである。球の機械要素が面を伝うようなものは点対偶と言える。線対偶は機械要素の接触が線となる対偶のことである。円柱の機械要素との接触は線対偶になる。面対偶は節の接触が面となる対偶である。平板が平面を移動するとき、面対偶といえる。
軸と軸受のように、回転するものとそれを受けるものの組み合わせを回り対偶、おねじとめねじのように、ねじによる組み合わせをねじ対偶、スライダなどの直線上をすべるようなものの組み合わせをすべり対偶という。
対偶の種類によって自由度がある程度決まっている。例えば点対偶であるならば自由度5、すべり対偶は自由度1である。線対偶は最大自由度4であるが、3になることもある。