帯状疱疹
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帯状疱疹(たいじょうほうしん、Zoster)とは、ウイルス感染症の一種。
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[編集] 原因
一度水痘になると、例え水痘が治癒しても水痘のウイルスが神経節の中に潜伏している状態が続く。ストレスや心労、老齢、抗がん剤治療・日光等の刺激によって、ウイルスが神経細胞を取り囲んでいるサテライト細胞の中で、再度増殖する(再活性化する)ことによって生じるのが帯状疱疹である(余談だが、潜伏状態自体に害はない)。
[編集] 一般的な症状
神経に沿って帯状に赤い発疹と水ぶくれが出現し、疼痛を伴う。前兆としてだいたい1週間くらい前から違和感やぴりぴりした痛みを感じることもある。水ぶくれは左右どちらかの半身にしか出ないことが特徴。
三叉神経に帯状疱疹ができたときは注意が必要である。髄膜炎、脳炎にいたるおそれもある。目の中にできると角膜炎や結膜炎を併発し失明に至ることもある。また、耳の中にできると耳鳴り・眩暈などの後遺症を残すこともある。さらに、顔面神経に帯状疱疹ができることがあり、顔面神経麻痺にいたることがある。腰部や下腹部に生じた場合、排尿障害や排泄障害が生じることもある。
頻度は少ないが、神経痛のみで発疹が出ないという病態がある。
[編集] 検査
Tzanck試験と呼ばれる検査がある。出現した水疱の水疱液を抽出しギムザ染色を行い、細胞診により、ウイルスの感染によって膨化したウイルス性巨細胞を検出する検査である。
[編集] 感染力・疫学
- 1年の中で特に起こりやすいという時期はない。体調を崩しやすい季節の変わり目に多い。基本的には1回であるが、2回なる人もいる(場所は変わる)。ただし、SLEなどの膠原病やエイズ、骨髄疾患などで免疫力が下がっている人は、何回も繰り返すことがある。
- 帯状疱疹としてではなく水痘として感染する。飛沫感染ではなく接触性の感染であり、水疱の中にウイルスがたくさん存在し、それが他人の口に入り気道の中で増殖して水痘となる。水痘にかかったことのない子供には注意が必要である。
- 高齢者の方が神経痛が強く残ることが多い。また、性格も(細やかであるなど)多少影響するようである。
[編集] 治療
- アシクロビルやビダラビンという抗ウイルス薬が特効し、点滴・内服による治療により短期間での回復が期待できる。皮膚症状に対しては前述の抗ウイルス薬の軟膏塗布が効果的である。同時に安静にし体力を回復することも大切である。適切な治療が行われれば、1週間ほどで水ぶくれはかさぶたになり治癒する。
- 神経痛は、治癒した後も後遺症として残ることがある。必要に応じて、神経節ブロック、理学療法、鎮痛剤、抗うつ剤、抗けいれん薬などによって対処することがある。
[編集] 予防
60歳以上に1回接種。岡・メルク株の弱毒生ワクチンである。2006年にアメリカをはじめ多くの国で承認。日本は未承認であるため、個人輸入を取り扱っている医療機関に申し込むことにより接種可能となる。
[編集] その他
この病気に関しては、患部を冷やすのはかえって逆効果である(外傷ではなく神経の病気であるため、冷やすとかえってウイルスの働きを助長してしまう)。
温湿布・カイロ等で温めるのも良い。但し、乾燥肌の人は温めると痒みが現れるため、やめておくこと。
水ぶくれ(腫れ部分)が破れると細菌感染が起こりやすくなる。細菌による化膿を防ぐため、水ぶくれは破らないよう注意する。 また、入浴に関しては医師に判断してもらうのが良い。水ぶくれが破れた状態で入浴すると、患部に細菌が付着し、状態の悪化に繋がる恐れがある。
怪談で有名なお岩さんは帯状疱疹であったのではないかという説がある。
[編集] 方言
帯状疱疹という病気は、身近な病気であり、日本の各地に方言が存在する。
(例)東北地方「つづらご」「はくじゃ」・関東甲信越「ひっつらご」・東海地方「おびくさ」・関西地方「胴まき」「たすき」「おび」・中国四国地方「胴まき」「けさ」「けさがけ」「けさよう」・九州地方「胴巻き」「たづ」「へびたん」
[編集] 関連
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