感度
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感度(かんど)とは統計的な概念の一つ。分野によって定義が異なっている。
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[編集] 医学における感度
医学における感度とは、臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陽性のものを正しく陽性と判定する確率」として定義される値である。
感度が高い(高感度である)、とは、「陽性のものを正しく陽性と判定する可能性が高い」、あるいは「陽性の者を間違って陰性と判定する可能性が低い」という意味である。
[編集] 感度と特異度
感度と対となる表現に特異度があり、特異度は感度との兼ね合いで決まる。
ある病気Aで血清中の値が上昇する酵素を考えるとする。この検査では正常人では平均100程度の数字であるが、病気Aを持っている者では平均1000程度の数字まで大幅に上昇する、と、統計的に分かっているとしよう。この場合、カットオフ値、つまり正常と異常の境目をどこにするのが妥当であろうか。
たとえば、150以上は異常、150未満では正常、として、この検査を運用するとする。すると、本当は病気Aではないのに「異常」と判定される被験者の数は必然的に増加する(偽陽性が増加する)。このような検査は、病気Aを持っている人を見逃す可能性は低いが、病気Aを持っていない人を正しく判定できる可能性は低い。つまり、高感度、低特異度の検査となる。
全く同じ検査でも、800以上は異常、800未満では正常、として、この検査を運用すると、今度は病気Aであるのに「正常」と判定される被験者の数が増える(偽陰性が増加する)。このような検査は、病気Aを持っていない人を不必要に心配させる可能性は低いが、病気Aを持っている人を正しく判定できない、低感度、高特異度の検査である。
理想の検査とは感度も特異度も完全に100%である検査であるが、実際にはそのような完璧な検査は存在しない。カットオフ値は、感度と特異度、両方の値を出来るだけ高くするよう適切な値に取るのが原則である。が、検査の目的によって調整されるのが実情である。たとえば日本の狂牛病の全数検査では、まず最初に、ELISA法でスクリーニング検査を行うが、これは安価な検査ながら感度を非常に高め、陽性の見逃しの可能性を極力減らし、特異度を犠牲にした検査である(すなわち偽陽性が出やすい)。
[編集] 関連項目
[編集] 写真の感度(ISO感度)
ISO感度(アイエスオーかんど、イソかんど、ISO speed)とはフィルムの国際規格の一つ。ISO100、ISO400、ISO800などの数字で表され、数字が大きいほど暗い場所でも撮影ができるが、画質は荒くなる。デジタルカメラでは「ISO100相当」などとして、同様に用いられることがある。
[編集] 無線における感度
[編集] アンテナの感度
アンテナ(空中線)の性能(利得)を指して言うことがあるが、正しい言い方ではない。
[編集] 受信機の感度
外来ノイズレベルの十分に低い環境では、感度が良いほど弱い電波が受信可能である。標準信号発生器を使って測定する。
- ナローFM受信機
- SINAD(SIgnal to Noise And Distortion)感度
- 雑音抑圧感度
- スケルチ感度
- デジタル受信機
- BER(ビットエラーレート)
- FER(フレームエラーレート)
- PER(パケットエラーレート)
[編集] 無線交信時の慣例的表現
無線交信の開始時、相手局に受信状態を大雑把に報告する際に使われる。
- 感度良好です。
- 感明ともに良好です。(感度・明瞭度ともに良好です、の略)
[編集] 火薬学における感度
感度とは、火薬の外部からの刺激に対する爆発感度性の尺度である。 ある火薬が外部からの刺激に対して容易に爆発する場合には、その火薬はその刺激に対して感度が高いと表現する。 逆に容易に爆発しない場合は感度が悪い、鈍感であると表現する。 刺激には衝撃、摩擦、熱、火炎、火花などがある。 感度は温度、湿度、雰囲気の圧力など外的要因によっても変化する。 また、火薬内部の気泡や不純物などによっても変化する。 火薬類の感度は保安上、重要であるため各種の感度試験を行い厳密に測定される。
- 衝撃感度
- 摩擦感度
- 熱感度
- 殉爆感度