抗ウイルス療法
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抗ウイルス療法(こうウイルスりょうほう)は、ウイルスが細胞に寄生し、暗黒期を経て新しいウイルス粒子を形成し、宿主細胞を脱出するサイクルの一部プロセスを阻害することで、あるいは人体の抗ウイルス免疫機構に介入することで、ウイルス性疾患の治療を行う療法である。ウイルスは自身の細胞を有しないため、細菌など病原体の細胞を直接破壊する抗生物質療法と、薬理学的性格が大きく異なる。
抗生物質はスペクトラムによるとはいえ、複数菌種に対する抗菌活性を持つことが多い。これは、抗生物質が標的とする細菌は、真核生物である人体の細胞と大きく異なる一定の分子生物学的な共有形質を有し、これを利用して細菌細胞の生理的過程を阻害し、細菌細胞を死に至らしめているからである。
しかしウイルスは進化の系譜が細胞を有する生物とは著しく異なり、個々のウイルスの分子生物学的な形質の多様性は著しく高い。そのため、それぞれの生活環、転写因子が異なっており、それぞれに対する治療薬が必要となることが多い。
B型肝炎はステロイドリバウンド療法、インターフェロン療法、逆転写酵素阻害剤、プロパゲルマニウムなどといった治療法がある。
C型肝炎にはインターフェロン単独療法、リバビリン併用インタフェロン療法といった治療法がある。
肝炎ウイルスに対してグリチルリチンやウルソデスオキシコール酸などは肝庇護薬と呼ばれ、ウイルス排除には関与しない。
ヘルペス属にはチミジンキナーゼ特異的なウイルスDNA伸長阻害剤であるアシクロビル、バラシクロビル、Ara-Aなどがある。
エイズウイルス(HIV)に関しては後天性免疫不全症候群の項を参照。