C型肝炎
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C型肝炎(しーがたかんえん, Hepatitis C, HC)とは、C型肝炎ウイルス(以下HCVと略す)に感染することで発症するウイルス性肝炎の一種である。
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[編集] 病原体
フラビウイルス科へパシウイルス属に属するC型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus; HCV)である。
[編集] 感染・経過
HCVは血液が主な感染経路である。かつては輸血による感染が多かったが、先進国では検査体制が確立したためほとんど見られない。現在は針刺し事故や覚醒剤注射の回し打ちなどが主で、臓器移植によるものも見られる。性行為や母子感染はまれ。
HCVは感染しても肝炎を発症しないことがある。これはHCVに感作された細胞障害性Tリンパ球が肝細胞を傷害するためではないかと考えられている。急性肝炎発症後もALTが高値を保ち、HCV RNAも陽性のまま持続して慢性肝炎に移行する例が多い。ALTが正常値を示した場合は通常HCV RNAも陰性となって治癒するが、HCV RNAが陽性で無症候性キャリアとなる場合もある。遷延化して慢性肝炎となる割合は70~80%に及ぶ。なお、初感染で劇症化する例はまれである。
[編集] 症状
- 急性肝炎
- 自覚症状は比較的乏しい。発症初期に発熱や全身倦怠感、その後食欲不振や悪心・嘔吐が出現する。黄疸となる可能性もある。
- 慢性肝炎
- 自覚症状は少なく、全身倦怠感、食欲不振、易疲労感などを認めることがある程度である。
[編集] 診断・検査
- 急性肝炎
- 問診
- 血液検査
- まずIgM型HA抗体、HBs抗原、IgM型HBc抗体、HCV抗体を検査する。A型肝炎やB型肝炎が除外できたらHCV RNAを検査し、HCV抗体が低力値か陰性であればC型急性肝炎と診断する。HCV抗体が陽性であった場合は数ヵ月後に再度測定し、抗体値が上昇すれば急性肝炎、上昇しなければHCVキャリアの急性増悪とする。
- 慢性肝炎
- HCV抗体やHCV RNAの検出が基本である。
[編集] 治療
- 対症療法
- 急性肝炎で消化器症状が強ければ栄養補給を行う。
- 抗ウイルス療法
- インターフェロンを投与する。急性肝炎では発症後6ヶ月以内に投与すれば著効する。慢性肝炎ではインターフェロン単独投与とインターフェロン+リバビリン併用療法が原則的な治療法である。
[編集] 予後
慢性肝炎を発症した場合は20年で約60%が肝硬変へと進展する。肝硬変になった後は年間7~8%が肝細胞癌に進展する。肝硬変に至る前は肝細胞癌への進展率は低い。
慢性肝炎例ではインターフェロン療法で約1/3がウイルスが完全に排除されるが、残りの約2/3は無効か投与をやめると再燃する。
[編集] 予防
- 針刺し事故では速やかに傷口を洗い流す。
- 針刺し事故後に予防的にインターフェロンを投与することもあるが、急性肝炎発症率は1%程度と低いので必ずしもやらなくてよい。
[編集] 歴史
- かつてウイルスが同定されなかった時期は非A非B型肝炎と呼ばれていた疾患の1つである。1989年にChooらが患者の血漿をチンパンジーに接種し、その血漿中からウイルス遺伝子をクローニングすることで初めて同定された。
- ウイルスが同定されないうちは輸血が主な感染経路であり、全体の約70%を占めていた。
- 血液製剤からの感染により、血友病患者の罹患率が高くなっている。
- 血液製剤は、非血友病患者にも投与された。非血友病患者に対する血液製剤(フィブリノゲン製剤、第IX因子製剤)の投与によるC型肝炎感染については、国と製薬会社を相手とする訴訟(薬害肝炎訴訟)が起こされている。
[編集] 日本において
日本ではインターフェロンが効きにくい1b型が70~85%を占める。以降2a型が10~15%、2b型が約5%で残りはまれである。ただし、血友病患者では1b型が多い。