文部省唱歌
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文部省唱歌(もんぶしょうしょうか)とは、明治から昭和にかけて文部省の編纂した尋常小学校、高等小学校および国民学校の唱歌、芸能科音楽の教科書に掲載された楽曲の総称である。文部省が定めた正式名称ではない。2001年の中央省庁再編後も「文部科学省唱歌」とは言わない。
具体的には1910年の『尋常小学読本唱歌』から1944年の『高等科音楽一』までの教科書に掲載された楽曲である。 明治30年代までの翻訳唱歌は含めない。
当時は楽曲の著作権は文部省が所有し、作詞、作曲者は公表されなかった(その代償として報酬は多額だった)。合議制で編纂されたため、個人の著作物とはするのは無理がある。時代の変化にともない、歌詞が変更されることも多かった。戦後、検定教科書の時代になって著作者を明らかにしなければならなくなったが、その作業が学問的に行われたことはない。伝聞等により岡野貞一、高野辰之らの作品が判明したとされるが、一部を除いては不詳の場合が多かったため、便宜的にこの呼称が使用された。
判明したとされる作者についても根拠のはっきりしない点が多い。楽曲の作者とされる人物の出身地では、その人物が作者と確定したわけでないのに自治体などが主体となって歌碑を建立したり、歌のモデルとなったのはここだとして観光宣伝に利用するなどの事例がみられる。また、文部省唱歌とは本来、全国の学校で使用されることを意図して作られたものであり、モデルとなった場所を限定するのは適当でないとする見解もある。
[編集] 教科書
- 『尋常小学読本唱歌』(1910年)
- 『尋常小学唱歌(第一学年用~第六学年用)』(1911年~1914年)
- 『高等小学唱歌』(1930年)
- 『新訂尋常小学唱歌(第一学年用~第六学年用)』(1932年)
- 『新訂高等小学唱歌(男子用・女子用)(第一学年用~第三学年用)』(1935年)
- 『ウタノホン(うたのほん)上、下』(国民学校初等科1、2年生)(1941年)
- 『初等科音楽一~四』(国民学校初等科3~6年生)(1942年から1943年)
- 『高等科音楽一(男子用・女子用)』(1944年)
[編集] 外部リンク
[編集] 関連書
- 鷹野良宏 『唱歌教材で辿る国民教育史』ハナハト世代からサイタサクラ育ちの憶えた歌 日本図書刊行会 近代文芸社 ISBN 4823106903