施氏食獅史
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施氏食獅史(しししょくしし、ピン音:Shī Shì shí shī shǐ)は、言語学者の趙元任(en:Yuen Ren Chao)によって作られた漢文の詩である。
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[編集] 概要
この詩を構成する92文字はアクセントは異なるものの全て"Shi"音で発音される。文章そのものは漢文に通じる者であれば容易に読み下すことが出来るが、これを普通話で朗読したり、あるいはローマ字で表記すると、とたんに意味不明の文となる。
趙元任は複雑化した現代中国語の表音法として国語羅馬字(en:Gwoyeu Romatzyh)を考案したが、現代語と比較して単純な古語の漢文をはじめ、僅か26文字のアルファベットで中国語の発音を表現することは困難であるとして、その難解さの証明としてこの詩を作った。
[編集] 詩の本文
[編集] 漢字による表記
- 《施氏食獅史》
- 石室詩士施氏, 嗜獅, 誓食十獅。
- 氏時時適市視獅。
- 十時, 適十獅適市。
- 是時, 適施氏適市。
- 氏視是十獅, 恃矢勢, 使是十獅逝世。
- 氏拾是十獅屍, 適石室。
- 石室濕, 氏使侍拭石室。
- 石室拭, 氏始試食是十獅。
- 食時, 始識是十獅, 實十石獅屍。
- 試釋是事。
[編集] ピン音による表記
- 《 Shī Shì shí shī shǐ 》
- Shíshì shīshì Shī Shì, shì shī, shì shí shí shī.
- Shì shíshí shì shì shì shī.
- Shí shí, shì shí shī shì shì.
- Shì shí, shì Shī Shì shì shì.
- Shì shì shì shí shī, shì shǐ shì, shǐ shì shí shī shìshì.
- Shì shí shì shí shī shī, shì shíshì.
- Shíshì shī, Shì shǐ shì shì shíshì.
- Shíshì shì, Shì shǐ shì shí shì shí shī.
- Shí shí, shǐ shí shì shí shī, shí shí shí shī shī.
- Shì shì shì shì.
[編集] 日本語訳
- 《 獅子を食らう施氏の話 》
- 石造りの部屋に住む詩人の施氏は、獅子を嗜み、10匹の獅子を食らうと誓いを立てた。
- 氏は時々市場へ獅子を見に行く。
- 10時、ちょうど10匹の獅子が市に出された。
- この時、ちょうど施氏は市場にいた。
- 氏は10匹の獅子を見て、勢い矢で10匹の獅子を撃ち殺した。
- 氏は10匹の獅子の屍を拾いあげ、石の部屋に戻った。
- 石室はじめじめと湿気っていたので、使いの者に石室を拭かせた。
- 石室を拭かせ終えると、氏は10匹の獅子を食べ始めた。
- 食べ始めると、10匹の獅子は実は10匹の石造りの獅子の屍だったことに気がついた。
- これはどういうことか、試しに説明する。