施行
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施行(しこう、せこう)とは、公布された法令の効力を発生させることをいう。また、施行(が予定)される日のことを施行日(施行期日)という。
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[編集] 日本の法令の施行
日本では様々な形式の法令が施行されており、施行に関しての原則を決められている法令は時代によっていくつかにわけられる。
[編集] 現在制定されている法令の施行
日本の法令の施行日は、原則として以下のとおりである。ただし、実際には法律や条例等の附則において施行期日が直接又は間接的に定められる。公布の日から施行することもできる(法の適用に関する通則法第2条ただし書を参照)。
- 法律
- 公布の日から起算して20日を経過した日(法の適用に関する通則法第2条本文)
- 政令、内閣府令、各省の省令、行政委員会(公正取引委員会、国家公安委員会等)の規則
- 施行日に関する一般的規定を定めた法令が存在しないため、各々の附則で定められる。ただし、法律の施行期日を定めるためだけに制定される政令については、その政令自体の施行日に関する規定は付されない(即日施行するものと解されているため)。
- 最高裁判所規則
- 公布の日から起算して20日を経過した日(裁判所公文方式規則第3条)
- 地方公共団体の条例・規則等
- 公布の日から起算して10日を経過した日(地方自治法第16条第3項、第5項)
[編集] 法令の施行方法
法令の施行方法について、いくつかに分類することができる。(以下、各行末の例文には法律を用いる。)
- 施行日に関する事項が法令に明記されている場合。
- 施行日が明確に規定されている場合。
- 公布の日から施行する場合。(例:この法律は、公布の日から施行する。)
- 公布後一定の期間を経過した日から施行する場合。(例:この法律は、公布の日から起算して○○○月を経過した日から施行する。)
- 年月日が記述されている場合。(例:この法律は、平成○○○年○○○月○○○日から施行する。)
- 他の法令の施行日に施行する場合(例:この法律は、○○法の施行の日から施行する。)
- 施行日については他の法令に規定する場合。(例:この法律は、公布の日から起算して○○年を超えない範囲内において政令【まれに法律】で定める日から施行する。)
- 施行日が明確に規定されている場合。
- 施行日に関する事項が法令に明記されていない場合。
上記1.の場合はそれぞれその指定された日に施行され、2.の場合は次々節「施行に関する法令」の中の該当する法令の規定に基づき施行される。明治期の法令には2.の施行方法が使われた例があるが、それ以降はほぼ1.の施行方法であり、2.の方法はほとんど用いられていない。また公式令が廃止された後の政令や省令の場合、1.の方法でなければならない(施行日に関する法令がないため)。
また、他に留意すべき点として次のようなものが挙げられる。
- 条項別に異なる施行期日を設定する場合がある。(例:この法律は、○○○から施行する。ただし、第○○○条の規定は、○○○から施行する。)
- 施行期日を過去(つまり公布日よりも前の日)に設定することは認められていないが、国民その他その法令の対象者にとって不利益にならない規定(金銭を過去にさかのぼって支給する等)に限り、公布日より前の事象にその法令を遡及適用することが認められており、その場合は施行日の規定に付随して明記される。不利益となる場合(公布前の犯罪に改正後の重罰を適用する、税金を過去にさかのぼって増税する等)の遡及適用は認められない。(例:この法律は、平成十八年十月一日から施行し、第○章の規定は、同年四月一日から適用する。)
[編集] 施行前の廃止・改正
ある法令の施行日が公布日と別(つまり即日施行でない)場合、特に公布時から施行されるまでの間に相当程度の期間がある場合は、社会情勢等の変化によりその法令が施行されないまま別の法令により廃止される可能性(実例として海上公安局法)がある。また、「施行前の廃止」には至らないまでも、施行の前に部分改正が行われ、結果として「当初から改正された状態で運用が開始」となる例もある。つまり、実際に施行され運用中の法令が手続を経ていつでも自由に改廃措置ができるのと同様に、公布済・未施行の状態にある法令も手続を経て改廃することが認められており、「法令としての実効性を持つ施行後でなければ改廃に着手できない」ということはない。
[編集] 施行に関する法令
- 公文式(明治19年 - 明治40年1月31日)は、法令全般の施行方法を規定した勅令である。「第二 布告」の章に「官報各府縣廳到達日數ノ後七日」と書かれている。この頃はまだ全国一律に施行されていたわけではなく、官報が府県の諸官庁に到達してから7日後となっている。また北海道や沖縄、日本領の諸島及び天災時による到達の遅れの場合は、到着の翌日に施行されるようになっている。
- 公式令(明治40年2月1日 - 昭和22年5月2日)は、皇室令、勅令、閣令および省令の施行方法を規定した勅令である。第11条に「公布ノ日ヨリ起算シ滿二十日ヲ經テ之ヲ施行ス」とあるとおり、公布の日から起算して満20日を経過した日を施行日としている。(例:公布日が4月1日であれば施行日は4月21日)
- 軍令ニ関スル件(明治40年9月12日 - 昭和21年)は、軍令の施行方法を規定した軍令である。第4条に「軍令ハ別段ノ施行時期ヲ定ムルモノノ外直ニ之ヲ施行ス」とあるとおり、公布の日に施行されるよう規定されている。
- 法例(明治31年7月16日 - 平成17年12月31日)は、法律の施行方法を制定した法律である。第1条に「法律ハ公布ノ日ヨリ起算シ滿二十日ヲ經テ之ヲ施行ス」とあるとおり、公布日から起算して満20日を経過した日を施行日と規定している。(具体例は上の公式令と同じ。)
- 統監府令公文式(明治39年1月19日 - 実効性喪失)は、統監府令の施行方法を規定した統監府令である。第3条に「統監府令ハ其ノ各官廳ニ到達シタル翌日ヨリ起算シ滿七日ヲ經テ之ヲ施行ス但シ其府令中ニ之ト異リタル施行時期ヲ定メタルトキハ此ノ限ニ在ラス」とあるように、第2条で規定された公報で諸官庁に到達した翌日から起算して満7日を経過した日に施行されるよう規定されている。(例:官庁到達日が4月1日であれば施行日は4月9日)
- 朝鮮総督ノ発スル制令ノ公布式(明治43年8月29日 - 実効性喪失)は、制令の施行方法を規定した統監府令である。第3条に「其ノ各官廳ニ到達シタル翌日ヨリ起算シ滿七日ヲ經テ之ヲ施行ス」とあるように、官報が諸官庁に到達した翌日から起算して満7日を経過した日に施行されるよう規定されている。(具体例は統監府令に同じ。)
- 朝鮮総督府令公布式(明治43年10月1日 - 実効性喪失)は、朝鮮総督府令の施行を規定した朝鮮総督府令である。第3条に「其ノ各官廳ニ到達シタル翌日ヨリ起算シ滿七日ヲ經テ之ヲ施行ス」とあるように、制令と同じ方法により施行される。
- 関東都督府公布式(明治39年9月1日 - 実効性喪失)は、関東都督府令の施行を規定した関東都督府令である。第3条に「各官廳ニ到達シタル翌日ヨリ起算シ滿七日ヲ經テ之ヲ施行ス」とあるように、制令と同じ方法により施行される。
- 会計検査院規則の公布に関する規則(昭和22年5月3日 - )は、会計検査院規則の施行を規定した会計検査院規則である。第3条に「公布の日から起算して二十日を経て、これを施行する」とあり、法例第1条本文での原則と同じ方法で施行される。
これらの例(20日、7日など)はあくまで原則であり、各々の法令において施行期日が明記されている場合は、そちらが優先する。
[編集] 時代によって施行に関する法令が変化する法令
- 法律
- 明治21年 - 明治31年7月15日は、公文式による。
- 明治31年7月16日 - 平成17年12月31日は、法例による。
- 平成18年1月1日 - 編集現在は、法の適用に関する通則法による。
- 勅令
- 明治19年 - 明治40年1月30日は、公文式による。
- 明治40年1月31日 - 昭和22年5月2日は、公式令による。
- 閣令
- 明治19年 - 明治40年1月30日は、公文式による。
- 明治40年1月31日 - 昭和22年5月2日は、公式令による。
- 省令
- 明治19年 - 明治40年1月30日は、公文式による。
- 明治40年1月31日 - 昭和22年5月2日は、公式令による。
- 昭和22年5月3日 - 編集現在は、個々の条文による。
[編集] 満州国の法令の施行
満州国では法令の形式や年代によって施行に関する規定が変わってくる。
建国早々の大同元年4月1日から康徳元年になるまで間、教令、院令、局令および省令は、暫行公文程式令(大同元年教令第15号)により、各々の法令において施行期日が明記されている場合を除き、公布の日から起算して満20日を経過した日からとして、軍令については即日施行されるよう定められていた。その後、康徳元年3月1日に改めて公文程式令が制定され旧法は廃止されることとなった。廃止された当以降、法律、勅令、院令、部令、署令、省令、区令および庁令は、旧法から新法に移行するにあたり一部の規定が独立した法律命令ノ施行期日ニ関スル件(康徳元年勅令第3号)により、各々の法令において施行期日が明記されている場合を除き、公布の日から起算して満30日を経過した日から施行されるよう定められていた。