旋尾線虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
旋尾線虫(Spiruria)は線虫類の寄生虫であり、その生活史も未だ不明なところが多い。 ホタルイカの消化器には旋尾線虫(Type X)の幼虫が寄生しており、ヒトがホタルイカを生食する事により幼虫移行症を引き起こす。
[編集] その特徴
旋尾線虫 Type Xはホタルイカの消化管に寄生する1〜2mm程度の幼虫であり、組織侵入性を持つことから幼虫が体内を侵入・移動し組織障害をもたらす幼虫移行症を引き起こす。ホタルイカの約2-6%に寄生していると報告されている。
[編集] ヒトへの感染(旋尾線虫症)
ホタルイカの生食はいわゆる「踊り食い」と言われており、ワイングラスなどにホタルイカを十数匹入れ、暗いところでホタルイカの光を眺めながら飲み込む食べ方である。酒の肴として食べる場合が多いため、感染者は中年男性が最も多く、幼児や女性には少ない。旋尾線虫幼虫移行症は主にホタルイカの生食により発症し、感染部位により腸閉塞型、皮膚跛行疹型、前眼房寄生型に分類される。腸閉塞型が最も多く、皮膚跛行疹型は比較的珍しく、前眼房寄生型は1例のみ報告がある。その内、腸閉塞型は機械的腸閉塞を引き起こす劇症型、麻痺性腸閉塞を引き起こす緩和型が知られている。腹部症状の機序は未だ明らかではないが、消化管壁の好酸球性蜂窩織炎、異物炎、局所アレルギー変化などが複雑に関係し、最終的に腹痛や麻痺性腸閉塞、閉塞性腸閉塞を引き起こすと考えられる。
[編集] 診断と治療
その診断は、1.ホタルイカの生食歴、2.IgEと好酸球の増加、3.旋尾線虫抗体価の測定、などによって行われる。1が最も重要であるが、疾患の認知度が低く細菌性腸炎やアニサキス症と誤診されている例も少なくないと考えられる。3の旋尾線虫抗体価の測定は唯一の血清学的診断方法であるが、実験室レベルの検査であり、結果がでるまで時間がかかるため有効性は低い。
その治療は皮膚跛行疹型では摘出が最も良い治療と考えられる。
腸閉塞型では、基本的には保存的療法のみで1-2週間で治癒するが、劇症型の場合では、閉塞症状が強く、やむを得ず手術により腸管の摘出が行われた報告も少なくない。
カテゴリ: 生物学関連のスタブ項目 | 生物学 | 感染症 | 寄生虫