橋本秀雄
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橋本 秀雄(はしもと ひでお、1961年 - )は、大阪府生まれの半陰陽者アクティビスト。阪南大学商学部卒業。「半陰陽の子ども達とその家族のセルフヘルプグループ」(PESFIS)世話人。
愛称はハッシーで、本人もこれを本名より好んで使用する。戸籍上は男性となっているが、身体的には男性と女性の性腺の両方を持ち合わせた半陰陽(インターセックス)者であり、性自認もはっきりしていない。幼い頃、性器の形状がおかしいということで親に病院に連れて行かれるが、医師が「よくあることですよ」と言ったため、特に身体的な治療を受けることはなかった。
橋本によれば、多くの半陰陽者は出生時、あるいはその後、半陰陽者だと分かった時点で、本人の意思確認をせずに性器の形状を手術によって変えられたり、性ホルモン治療を受けさせられたりしており、結果的に思春期に自我が確立されてくるのに伴い、アイデンティティの混乱や、望まぬ治療を受けさせられたショックから精神疾患にかかってしまうなどの悲惨なケースが跡を絶たない、としている。(特に調査などは行われていないため実情は不明である)。橋本は、このような他の当事者の現状を嘆き、「半陰陽者の性の選択は本人の意思に任せるべきである」と主張して、PESFISを立ち上げた。
性の選択という点では、性同一性障害の問題と似ている部分が多々あるが、橋本自身は性同一性障害者に対しては批判的な立場を取っている。
なお、橋本の主張する「性のグラデーション」「性の自己決定権」については、インターセックスの状態を持つ当事者全ての主張と一致するとは限らない。橋本の考えは、橋本が声を上げ始めた当時の「セクシャルマイノリティ論」「クイア理論」、あるいは女性学における「ジェンダー論」に影響を受けたものであり、橋本が主に引用するISNA(北米インターセックス協会)の主張とも乖離している。
ISNAは、そのホームページ冒頭にて「インターセックスの問題は、ジェンダーの問題ではない」と、いわゆる「ジェンダー理論」とは距離を取っている。これは、インターセックスの状態を持つ人々の大半が、幼少期に割り当てられた性別に違和感を持っていないという事実と、「ジェンダー理論」において、社会的性別を相対化するために、インターセックスの状態をもって、生物学的性別を相対化しようとする、”ためにする”議論に用いられ、それが先にあげたような事実と著しく乖離しているという現状から来ている。「ジェンダー理論」で取り上げられる「インターセックス」は、必ずしも「インターセックスの状態を持つ人」の立場に立ちきったものではないということは、インターセックスの問題を論じるうえで、念頭においておくべきものであると考えられる。
[編集] 主な著作
- 『男でも女でもない性-インターセックス(半陰陽)を生きる』青弓社、1998年
- 『性のグラデーション-半陰陽児を語る』青弓社、2000年
- 『男でも女でもない性・完全版-インターセックス(半陰陽)を生きる』青弓社、2004年