死体解剖保存法
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通称・略称 | |
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法令番号 | 昭和24年6月10日法律第204号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 医事法 |
主な内容 | 死体の解剖・保存 |
関連法令 | |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
死体解剖保存法(したいかいぼうほぞんほう)は、病理解剖、行政解剖、司法解剖を行う医師、歯科医師、法医学の専門家が遵守しなけれならない医療関係の法律である。ヒトの死体を解剖するために必要な資格、遺族の承諾に関する条文、監察医による解剖に関する条文などが定められている。
病理医が病理解剖を行う場合には、医師法または歯科医師法と死体解剖保存法の定める規則に則って執り行わなければならない。病理解剖は臓器の移植を目的として行われることはない.臓器移植を目的として脳死した患者から臓器または臓器の一部を摘出する場合には、臓器の移植に関する法律に従う。
実際に病理解剖を行うことのできる医師、歯科医師は厚生労働大臣から認定を受けた死体解剖資格を有する者だけである。たとえ病死した患者の主治医、担当医であったとしても解剖を行うことは違法である。病理医(病理専門医)の資格を得るためには、死体解剖資格の認定を受けていることが必須要件である。
病理解剖は病院で定められた解剖室において行わなければならない。病室、手術室、病理検査室、患者の居宅などで解剖を行うことは違法である。
妊娠4ヶ月以上を経過した死胎は、死産児として病理解剖の対象となる。妊娠4ヶ月以下の死胎は、一般病理検査の対象として取扱うため死体解剖保存法の規制を受けない。
病理解剖を行うためには遺族の承諾を受けなければならない。これは病理医の役割ではなく、解剖を依頼する患者の主治医、担当医が行わなければならない。遺族から得る病理解剖の承諾書は、インフォームドコンセントに相当するものであって病理解剖の目的や摘出された臓器の保存や帰属についても適切な説明が書かれたものが望ましい。現行では十分な内容の承諾書を使用している医療施設は少ないため、専門医によって幾つかの様式が提案されている。
病理解剖を施行中に犯罪に関係する異状を発見したときは、地域の警察署に24時間以内に届け出なければならない。日本法医学会の異状死のガイドライン([1])では、医療事故や過誤に関係する死も異状死に含めている。病理解剖の途中で重大な医療過誤の証拠があったときは、速やかに警察署に連絡し検視を受けることが法的に望ましい。
死体解剖保存法は死体に対する尊厳を最大限尊重した内容になっている。学術や研究のためと称して、意のままに死体や臓器を扱うことを厳に戒めている。