海草
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海草(かいそう)とは、海中に生育する種子植物のこと。藻類である海藻とは漢字を異にする。「かいそう」と読むと藻類の海藻と区別しにくいので「うみくさ」とも呼ばれる。
[編集] 海草と海藻
海草と呼ばれるのは、海産の沈水生種子植物である。すべて単子葉植物である。日本の本州周辺で見られるのは、おもにアマモ類で、普通のアマモと小型のコアマモがよく見られ、いずれも細長い葉をしている。他に丸い葉で小型のウミヒルモなどが知られている。北海道周辺ではスガモが見られる。また、琉球列島ではマツバウミジグサ・リュウキュウスガモ・ボウアマモ・ウミショウブなど、たくさんの種が様々な場所に見られる。
海草は種子植物なので、根、茎、葉の区別がある。茎は地下茎として横に這うものが多く、葉を水中にのばす。根は泥の中に広がる。従って、大部分の種は砂泥底の区域に生育する。
藻類の海藻は、根・茎・葉の区別がなく、一部のものにはそれらしい分化が見られるが、はっきりと異なるのは根の構造である。海藻の根は栄養吸収のための装置ではなく、岩に固着するためのものである。海藻の大部分は岩の上のみに生え、砂泥底には匍匐茎状の形態を発達させて砂泥底に適応している緑藻のイワヅタ類や小型のものをのぞいてほとんど生えていない。
従って、この両者は生育する環境が異なる。総じて、海藻は波あたりの強い岩礁海岸に多く生育し、海草は波の当たらない内湾や干潟のような環境に生育する。ただし、北方系のスガモやエビアマモは波あたりの強い岩礁にも固着して成育することができる。
海草が密生しているところを海草藻場(もば)と呼ぶ。時に、藻場の構成種を厳密に区別せずに総称してアマモ場と呼ぶこともあるので留意する必要がある。
[編集] 主な海草類
- Zosteraceae アマモ科
- Heterozostera
- Phyllospadix スガモ属:スガモ・エビアマモ
- Zostera アマモ属:アマモ・コアマモ・タチアマモ
- Zannichelliaceae イトクズモ科
- Cymodocea ベニアマモ属:ベニアマモ・リュウキュウアマモ
- Halodule ウミジグサ属:ウミジグサ・マツバウミジグサ
- Syringodium シオニラ属:シオニラ(ボウアマモ)
- Hydrocharitaeae トチカガミ科
- Enhalus ウミショウブ属:ウミショウブ
- Thalassia リュウキュウスガモ属:リュウキュウスガモ
- Halophila ウミヒルモ属:ウミヒルモ