準天頂衛星システム
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準天頂衛星システム(じゅんてんちょうえいせいシステム、英:QZSS Quasi-Zenith Satellite System)は、現在日本が計画中の衛星測位システムである。
衛星測位システムは、測位信号を送信する人工衛星と、測位信号を受信するモニター局や人工衛星の軌道決定等の計算等を行う地上局、人工衛星を管制する追跡管制局から構成されるのが一般的である。準天頂衛星システムでの人工衛星は、特に準天頂衛星と呼ばれている。
衛星測位システムは、21世紀の社会インフラと呼ばれており、米国やロシア、欧州に加えて、中国やインド等でもシステム建設が計画されている。日本がこのシステム建設を進めることは、長期的な視野に立った国家の発展、安全保障の確保の観点から、重要であると認識されている。政治的なリーダーシップが望まれる。
最初の準天頂衛星は、2009年に打ち上げられ、その後2015年には合計3機となる。当面、アメリカ空軍により運用されているGPSや、欧州で開発途上のGalileoと合わせて使用される。
サービス領域は、日本を含むアジア・オセアニア全域であり、その地域ではGPSやGalileoに加えて準天頂衛星からの電波を受信することが出きるので、衛星測位の信頼性が向上することが期待されている。
準天頂衛星からは、L1周波数、L2周波数、E6周波数、L5周波数帯の合計6種類の衛星測位信号の送信が計画されている。
現在の準天頂衛星システムは、通信と放送に測位を複合させたサービスを提供しようとして三菱電機や日立等が出資して2002年11月に設立された新衛星ビジネス株式会社が、当初の推進母体であった。高層ビルが立ち並ぶ都市部や、山間地では空が広く見えないため衛星からの信号を受信するのが難しいが、高仰角を飛行する人工衛星である準天頂衛星で実現し、これにより衛星通信や衛星放送を実現しようと言うのが、基本的なコンセプトであった。
しかし、複数の人工衛星が必要であるというコストの大きさに比べて、通信・放送ビジネスからの収益性の低さを最後まで解決できず、この2006年3月に新衛星ビジネスは通信と放送の事業化断念を宣言した。一方で安全保障の観点から、我が国独自に衛星測位の技術を取得しておく重要性が一部から叫ばれ、準天頂衛星は全額を国費で打ち上げる測位衛星としての位置づけに変わった。