燃料投棄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
燃料投棄 (dumping of fuel, discarding of fuel) とは航空機において飛行中に搭載している燃料を機外へ排出すること。
目次 |
[編集] 概要
航空機が何らかの理由により緊急着陸しなくてはならない状況において、その時点での総重量が当該機体の最大着陸重量を上回る場合、搭載している燃料を機外に排出して、総重量を減らし最大着陸重量以下とする。
[編集] 降着装置(ランディングギア)の強度
航空機の降着装置は主として着陸時に想定される荷重を元に設計される。飛行中には死重(デッドウェイト)となる降着装置は、なるべく軽量であることが望ましいため、着陸時の荷重設定の前提として離陸時の機体重量は考慮せず、燃料をある程度消費した後の機体重量がその設計の元となる。すなわち、離陸した直後の燃料満載状態にある航空機は、場合によっては降着装置の強度が不足してそのまま着陸することができない。長距離を運行する(燃料積載量の大きい)航空機では特にその傾向が顕著となる。
一例として、国際線用B747ではその最大離陸重量は400トン近いが、最大着陸重量は300トンに満たない。最大離陸重量で実際に離陸を行うことは稀であるにしても、長距離国際線では日常的に最大着陸重量を超過した総重量での離陸が行われている。
[編集] 投棄
主翼端部や後縁部に投棄口が設けられており、燃料はここから霧状に空中へ放出される。放出流量と時間を計算して必要量を投棄する。燃料は空中で気化するため液体のまま地上に達することは無いが、投棄を行う高度や空域には定めがある(例えば海上など)。
投棄量は通常、最大着陸重量による制限を満たすためのギリギリの量とするが、胴体着陸が予想されるといったケースでは、火災発生および延焼の可能性を低くするため、着陸までに必要な量を除いた全量を投棄することもある。
また軍用機においては、増槽内の燃料を増槽ごと投棄する例が見られる。これは空中戦における機動性確保や被弾時の安全性確保のためである。こちらは地上に到達するため、地上への影響を考慮して行われなるべきである。
[編集] その他
燃料タンク容量の小さい航空機などでは燃料投棄機構を持たないものもある。この場合、上空旋回等によって燃料の消費を待つ。