硬音
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硬音(こうおん)は、音声学において調音器官の筋肉の緊張(テンス)をともなう音のことをいう。これに対する弛緩(ラックス)した音は軟音(なんおん)という。どのような器官であるかは言語によって異なっている。
ロシア語学習においても同様の用語が存在するが意味は全く異なる。
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[編集] 朝鮮語
朝鮮語の破裂音([p,t,k])及び破擦音([tʃ])は帯気の有無と喉頭の緊張の有無によって三系統に、摩擦音([s])は喉頭緊張の有無で二系統に分かれる。弛緩した(喉頭での緊張を伴わない)子音のうち無気音は平音、帯気音は激音、喉頭での緊張を伴う子音(無気音)は濃音または硬音(日本では濃音、韓国では硬音という名称が一般的)と呼ばれている。朝鮮語において濃音は音節の頭にのみ表れ音節末には現れない。なお、朝鮮語の子音に有声音と無声音の対立は見られない。
IPAには濃音の適切な表記法がないため、朝鮮語における濃音の音声表記は研究者によってまちまちである。[k]の濃音(ハングルではㄲ)を例にとると:
- [ʔk] もしくは [ˀk]:[ʔ]は声門閉鎖音を表す。
- [kʼ]:[ʼ]は放出音を表す。
- [kˤ]:[ˤ]は咽頭化(咽頭における二次的調音)を表す。
- [k⁼]:[⁼]は拡張IPAにおいて無気音であることを明示する。
- [k*]:アスタリスクは拡張IPAにおいて適切な記号が無い場合に用いるとされる記号である。
濃音は単一の子音であり、声門閉鎖音と子音の連続音ではない。また、放出音は濃音とは全く異なる音である。濃音は咽頭化を伴うことがあり、また無気音であるが、この二つの特徴は濃音を他の系統の子音(すなわち平音と激音)から区別する本質的な性質ではない。よって、喉頭における緊張を表すIPAが制定されない限り[k*]のような表記が唯一IPAに沿った表記となる。ただし、音声表記は必ずIPAで書かれなければならないわけではないため、他の表記は単にIPAではないというだけで、音声表記として間違っているわけではない。
[編集] 日本語
日本語では促音が硬音に相当する。但し、促音の前にその子音と同じ閉音節子音を伴うため、発音のリズムでは促音そのものにワンテンポ与えられているように聞こえる(1モーラ)。また朝鮮語とは異なり、促音が文節の頭に立つ事はない。開音節を基本としている日本語にもこのように例外的に閉音節が存在している。
[編集] ドイツ語
ドイツ語では破裂音、摩擦音、破擦音に硬音と軟音の区別がある。硬音は主に無声音字で表され、破裂音・破擦音では常に帯気する。軟音は通常有声だが、語末になると無声化する。
[編集] ロシア語
ロシア語では、軟音は口蓋化音、硬音は口蓋化していない音を指す。母音字には硬母音と軟母音で別々の文字が用意されている。